R.I.P. 天使は鏡と弾丸を抱く (このライトノベルがすごい!文庫)

【R.I.P. 天使は鏡と弾丸を抱く】 深沢 仁/前田浩孝 このライトノベルがすごい!文庫

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弾丸飛び交う中
少女とダークヒーローの救出劇が今、始まる

自らに向けられた敵意を、相手に反射させる能力を持つフィリップ・リーダスは、ふとしたことから家族思いの少女アンジェリーナと出会う。行きがかり上、仕方なく襲撃者から彼女を助けるフィリップだが、それはより大きな災難への序章でしかなかった!次々と襲い掛かる刺客からアンジェリーナを守り切れるか?タフでクールな新たなるダークヒーローの戦いの幕がいま開ける!
第2回『このライトノベルがすごい!』大賞・優秀賞受賞作!
あの不朽の名作【レオン】を彷彿とさせる王道とも言うべきロードムービー。この手の命を狙われる少女と行動を共にする事となった闇社会の男、という構図だとどうやっても【レオン】を思い浮かべてしまうあたり、あの映画がどれほどの金字塔を打ち立てたのか改めて実感する。
さて、本作はどうかというと、うん、普通によくできていると思う。卒なくハードボイルドらしい乾いた雰囲気に、ヒロインであるアンジェリーナもキャンキャンと五月蝿いわりに濃厚な幸薄さの気配を醸し出していて、この渇いた雰囲気によく馴染んでいる。
ただ、よく出来てはいるんだけれど、これだという強い印象を与えてくれるものがあまり見受けられないんですよね。本来なら中心となるべき得体のしれない男と少女との交流も、なし崩しにフィリップがアンジェリーナの強い主張に根負けして流されていくだけで、これといったエピソード、ないんだよなあ。なぜ他人に無関心なフィリップがアンジェリーナを守ろうと思うようになったのか。最初の成り行きから、なぜ終盤にアンジェリーナの優先度があれだけあがっているのか、その過程がいまいち見えなかった。自然と惹かれていった、という話なんだろうけどね。状況から見たらそう考えるしかないんだけれど、あくまで状況を見てそう推察できるだけで具体的に何かあったってわけじゃないしなあ。
ほんとはね、具体的なエピソードがなくったって、人と人との絆の深まりというのは描けると思うんですよ。でも、自然と「あっ、このふたリはいつの間にかお互いのこと大切に思えるようになってたんだな」と読んでいるこっちに納得させるだけの説得力ある表現力、描写力、伝達力がなければ、やはり唐突感は否めないし話の都合という印象は拭えない。無ければ、やっぱり一つ一つエピソードを積み立てて行くしかないし、もしくは作中でじっくり時間をかけて長い時間一緒に過ごしたから二人の関係は深まった、という前提を満たさないと、ゼロからはじまる信頼関係というのは、案外描き出すのは難しいものなんだと思う。
その点で、まだ大いに不満はあったかな。アンジェリーナ側からはともかく、フィリップ側からのアンジェリーナへの想いの深度が特に。

とは言え、こういう乾いたハードボイルドっぽい雰囲気を作れるというのは大したものだと思うし、もし今回のロードムービー風の雰囲気だけじゃなく、作品によってそれぞれにあった世界観の空気を描き出せるというのなら、それは大きな武器となるはず。書けば描くほど上手くなるタイプの作家さんだと感じたので、今後には期待したいところ。