問題児たちが異世界から来るそうですよ?  そう……巨龍召喚 (角川スニーカー文庫)

【問題児たちが異世界から来るそうですよ? そう……巨龍召喚】 竜ノ湖太郎/天之有 角川スニーカー文庫

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幻獣が多く住むという南の“龍角を持つ鷲獅子”連盟から届いた収穫祭への誘い。問題児たち3人は南へ何日行けるかの権利をかけ、ゲームで争うことに!ゲームの結果、南へ向かった黒ウサギ一行は、新種の植物ブラック★ラビットイーターに遭遇した。黒ウサギが触手に襲われる!?なんて遊んでいたら、南を一度滅ぼしかけた魔王の残党である巨人が襲ってきて!そしてノーネームに残った問題児(誰だ!?)の秘密が明かされる。

これは、参った。十六夜のこと、この時点でもとんでもない奴だと感嘆していたつもりだったんだが、まだまだ見縊ってた。
規格外の力を持ちながら、そのパワーに振り回されない理性と知性。ただ暴れたいだけの野卑たる暴君ではなく、相手を立てるような心配りまで出来る処世と甘やかさない優しさを持った隙の見当たらない大気者としての十六夜は、既に二巻までで理解していたつもりだったんですけどね。
彼の凄さは、その才そのものじゃなかったんですね。むしろ、その心栄えにあったことをこの間で目の当たりにしてしまった。
彼の過去語り、箱庭世界に来る前のエピソードで彼が語った言葉は衝撃的ですらあった。十六夜は、彼の存在を受け止めきれなかった世界を拒絶せず、厭わず、忌まず、憎まず、呪わず、倦まず、嫌わずに、愛していたのだ。美しいものとして愛しみ慈しんでいたのだ。それどころか、その途方も無い力を、笑って胸を張って埋もれさすつもりだったのだ。退屈に欠伸を漏らしながら、彼を受け止め切れない世界の中で静かに埋没していくつもりだったのだ。愛する世界を壊さないために。

シリーズ冒頭の、箱庭世界に来る引鉄になった手紙の内容と十六夜の反応から、てっきり十六夜は自分の器に収まらない世界に見切りをつけて、見捨てて、振り返るものもなく嬉々として飛び出してきたと思ってたんですよね。そこには、元いた世界に対する不満、倦怠、嫌悪を抱き、窮屈に自分を押し込めていた事に対する仄かな憎しみすら持っているものだと思っていた。元いた世界には、未練も後ろ髪惹かれるような相手も居らず、そこに残してきた過去は彼にとって膿んだ記憶でしかなかったのだと思っていた。
それなのに、この子は、一生涯を腐って過ごしてイイと言ってのけるほどにこの世界を好きだと言ったのだ。
参った。正直、痺れた。
この少年の心を、ここまでに育て上げた金糸雀という人は、本当にとんでもない人だったんだな。黒ウサギが尊崇し、十六夜が今なお敬愛し続けているのもよくわかる。
そして、この人は結局、十六夜とノーネーム両方に贈り物を与えた事になるのだろう。十六夜には、自分の限界を底の底まで楽しめる次の世界を。そしてノーネームには自分の代わりに新たな希望を。まさにギフト――贈り物であり、祝福だ。
大好きな世界と大切な人たちを残し、箱庭世界へと旅立った十六夜――そう、この少年は元居た世界を捨ててきたわけでも逃げ出してきたわけでもなく、ちゃんと別れを告げて旅立ってきたんだな。だからこそ、彼は強い。置いてきたものは良い思い出ばかりだから、彼の足取りに重石となるものは何も無いのだろう。
無敵だよ、この子は。

そんなある意味、もう金糸雀によって完成されている十六夜と比べて、飛鳥と耀はむしろこの箱庭世界に来てからこそがスタートラインだったのだろう。同じ位置からスタートしたんじゃなくて、きっと最初から差があったんだな。力の差ではなく、きっと心の置き方で。だから、彼女たちの成長はこれからであり、ずっと先をゆく十六夜を悔しさに歯を食いしばり、追いかけていくしかないのだ。負けたくないなら、追いかけるしかない。そして、この娘さんたちは、とっても負けず嫌いなのである。
耀に最後に示された彼女のギフトの可能性。それは多分、単純なパワーアップの要素じゃなくて、彼女の心のあり方が定まったときにこそ、その力の使い方がわかるような、そんな感じの代物のような気がする。
負けるな、女の子たち。

結局、サブタイトルの話は最後の最後に開陳。これって、ある意味前後編ってことじゃないのかしら?
いずれにしても、盛り上がってまいりましたーー!!

1巻 2巻感想