逢魔ヶ時あやいと倶楽部―召喚少女の守護人形 (メディアワークス文庫)

【逢魔ヶ時あやいと倶楽部 召喚少女の守護人形】 黒狐尾花 メディアワークス文庫

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 雪のように白い肌。黒檀のように黒い髪。血のように赤い唇。その美少女の名は、柴榊銘といった。
 少女は、感情が高ぶると、無意識に妖怪を“召喚”してしまう体質の持ち主だった。
 制御できない妖怪に狙われる銘。彼女を守るため、『弁慶』と名乗る少年が付き従う。彼の正体は、“社人形”――少年の姿をした対妖怪用呪術戦闘機だった。
 銘の日常は、彼女の通う学園の奇妙な生徒達、そして妖怪を巡る弁慶との出会いよって、『非日常』に変わり、そしてそれが『日常』となるのだった。これは、不思議な学園異能忌憚。
個人的にはメディアワークス文庫に移ったからこそ、ここは平安モノで押し通して欲しかったなあ。あの時代をしっかりと描ける人は貴重なだけになおさらに。まあ資料やら時代考証やら大変でしょうから、現代物の方がやりやすくはあるんでしょうけれど。
しかし、デビュー作でもそうだったけれど、作者はあれですか。自分の秘めたる尋常ならざる力を持て余し苦悩する可憐で儚くか弱げな美少女を、寄ってたかって可愛がり可愛がりして溺愛するのがパーソナルスタイルですか。いいぞ、もっとやれw
今回もシスコンが高じてエラいことになってる弟に、ツンデレな爺ちゃんに、イケメンのくせに完全にワンコと化してる戦闘人形に、と少女を猫可愛がりする人は枚挙に暇がない。男のみならず、クラスメイトの女子すら直ぐ様魅了してしまうあたり、少女の掻き立てる庇護欲はとんでもない威力を発しているのだろう。それこそ、人ならざる異形のものたちや、敵である病み歪んだ相手ですらみんなしてちょっかい掛けてくるくらいなのだから。
少女当人としては、わりとドン引きである……。
いやいやいや、まあそういう付き纏われて困っちゃったわー、な話ではなく、意図せず読んでしまう妖怪の被害で孤立し恐れられ、両親も失踪してしまい、孤独と罪悪感に傷つき苦しむ少女が、否定していた自分を肯定出来るようになり、皆の祝福に見合うだけの前向きな希望を打ち立て、他者の絶望や歪みすらも掬い上げるだけの頑張る意思を手に入れるお話なんですけどね。
確かに銘は庇護欲を掻き立てる少女であり、最初は自身が呼ぶ災厄に怖気付きずいぶんと卑屈になっているのですけれど、それでもただ可愛がられることに甘んじているような弱い子じゃないんですよね。儚い中に健気な強さがちゃんと垣間見える。ただ守られる存在ではなく、ちゃんと自分で立てる柱を持っている。弁慶のように自分を全肯定してくれるもの、弟のように弱い部分を支えてくれるモノ、新しくできた友人のように自分を認めてくれる人。爺さんのように蒙を啓いてくれる人。色んな人がたすけてくれたからこそ前向きになれたのでしょうけれど、ちゃんと溺愛されるだけの芯がなければ、ただの甘やかしに終わり惰弱に溺れてしまったでしょう。そうならず、ちゃんと希望を開けたのはこの娘の正しい資質と頑張りがあったからこそ。健やかで清々しいよい主人公ですよ。
相変わらず雰囲気作りにも長けていて、前作の平安モノ独特の妖しの空気とはまた異なる、山あいの長閑な、しかし裏に秘密を抱えた集落の歴史に裏打ちされた重みのある空気が出ていて、なかなか堪能できました。
わざわざメディアワークス文庫から出すということは、このまま続くとしてもあまり派手なバトルものにはならないという事なのかしら。それはそれでしっとりとした人心の闇や自然、歴史との対立など地味ながらも食べごたえのある話が出来そうなので、それはそれで楽しみである。

とりあえず、一番の萌えキャラはムッツリなじいさまでOK?(笑