神曲奏界ポリフォニカ ネバーエンディング・ホワイト (GA文庫)

【神曲奏界ポリフォニカ ネバーエンディング・ホワイト】 高殿円/凪かすみ GA文庫

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 グローリアーナ軍によって、国や街が次々と占拠されるなか、レスロス内部に進入したジョッシュやデイジーたちは行方が知れなかったプリムローズに再会した。彼女はしかし、なぜかエリュトロンを従えており、スノウを異界へ飛ばしたのは自身の意志であったことを語ったのである。

 一方、異界へ迎えに来たブランカと再会できたスノウは、彼の口から今回の事件のあらましを聞いた。その事実に衝撃を受けるスノウだったが、もう一つ、彼女が異界へと戻された、その本当の理由をも知ることとなるのだった――。

 運命の渦に交差する想いの行き着く先は――!? 感動の最終巻!
ポリ白こと、神曲奏界ポリフォニカ・ホワイトシリーズもこれにてついに完結。
さすがは【銃姫】にて圧倒的な終末を描いた高殿さんだけあって、世界の根幹を支える精霊島の墜落に伴う世界の終りを前にした人々の混乱と祈りの切実さには迫真のものがあった。世界のあり方が一変する出来事だったんだもんなあ。被害が少なく済んだとはいえ、一国が消滅してしまったほどの出来事であったわけだし。
この大破局の一端を担うことになってしまったプリムローズ。炎帝の生まれ変わりという出自もあり、中盤の危うい描写から終盤にかけてのラスボス化には、何者かに心を乗っ取られたか、精神に悪い影響を受けて汚染されてしまったのか、と考えていたのだけれど、まさか最初から一貫して変わらずスノーのお嬢様であるプリムローズ自身そのままだったとまでは思っていなかった。たとえ、何かに憑かれていなくても、エリュトロンやダンテあたりに騙されたり、誘導されたりした部分があると思っていただけに。
だけれど、その行動原理がひとえにスノーのため、というのなら彼女の暴走も納得できる。一貫してプリムローズは何も変わっていなかった、というのも腑に落ちる。すなわち、スノーのためならば女神を敵に回し、世界を滅ぼす事も厭わないほどの愛情を、思えば最初からプリムローズは持っていたと言われても、そうだったよね、と思えるわけで。
でも、そんなスノーしか眼中にないはずのプリムローズが、ちゃんとデイジーの事友達として好きで居てくれたのは嬉しかったな。スノーを除けば、デイジーはプリムローズにとっての特別だったのかもしれない……にしては、若干扱いが酷かった気もしないでもないけれど、お嬢様基本的にSだもんな。

スノーがエターナリアの生まれ変わりであり、新しい白の女神だった、というのは既に前回までに明らかになってたんでしたっけ? 非公式にそれらしい、という話は随分前から持ち上がってはいましたけど。他のシリーズにもチラッと登場してましたしね。
しかしまー、女神化したら女神化したでここまで破天荒な女神らしくない女神になるとは。何も変わらずスノーだった、と言ってしまえばそれまでなのですけれど、メイド女神とは新しいな! って、スノーはメイドとしては失格なキャラなんだが。ともあれ、女神らしい常識から外れまくっているのは間違いなく、少なくともこのポリ白の時点では明らかに人間としての特性の方が強いよなあ。元・人間であり、神曲楽士だったという特性があったからこそ、女神となり神曲を得る立場になっても、ブランカへの神曲が弾けたりもしたんだろうが……そうなると、神曲というものがそもそも何なのかについても考えどころなのかもしれない。
刀をぶん回すのは、メイドとしても女神としても大いに前代未聞かとも思いますがw

スノーとプリムローズの結末については意外な展開でもあり、これ以外にはないと思える終わり方でもあり。お嬢様としては、もうこれ以上ないほどの幸福な人生だったのかなあ。ある意味、最後まで一番幸福な時代で止まってしまったままだったような人生だったわけですし。複雑ですし、寂しいですけれど、これもまた一つのハッピーエンドだったんでしょうかねえ。なんとなく物思いに耽ってしまいます。

今回の話で一番可哀想だったのは、スノーの両親でしょう。あれは辛いよ。折角戻ってきたと思った娘が、また同じように消えてしまったわけですから。果たして残された両親はあの別れに耐えられたんだろうか。せめて、もうちょっとちゃんとスノーにはお別れをしてあげて欲しかった。

そしてもう一人可哀想だったのがサラサですよ。もうなんちゅうか、いい面の皮じゃないですか(苦笑
ゲンナリと投げやりになって諦めてしまったサラサが可哀想になるやらなんやらで。もっとパワフルに押して押して、傷心のジョッシュの心の中に土足で踏み込むぐらいの厚かましさがあれば、リシュリュー相手でもがぷり四ツに組めだんでしょうけどねえ。そう考えると、優しさにかまけて押しが足りなかったというべきか。やっぱり既成事実は大事ですよ(結論

一方で、デイジーは一番お幸せに状態で……。はいはいごちそうさまごちそうさま。ただ、トレバス神曲学院の前身となる施設を立ち上げたのが、他でもないこのデイジーだったというのはなかなかのサプライズだった。
まさか初代がこの娘だったとはなあ。

当初からブランカの身勝手っぷりにイライラさせられたりもしたシリーズでしたけれど、終わってみるとこのお馬鹿聖獣もずいぶんと精神的に成長したなあと感慨に耽りました。いやあもう、本当に思い込みと独善でスノー振り回して、いい加減見捨てられても仕方ないだろうと思うこと度々だったのが、きっちり分別と気遣いとを取り揃えた大人になりましたからね。ある意味これ、ブランカの成長物語だったのか、と思いたくなるくらい。
振り返ってみると、女神も聖獣も、世界でもっとも高位な存在というわりには精神的に幼かったり、短絡的で思慮に欠ける者が多く、様々な問題や世界の危機って大本を辿るとだいたいこの人達の不始末が原因だったりするので、厄介だよなあ(苦笑

これで、今のところ続いているシリーズはクリムゾンだけになってしまったのか。あのシリーズもそろそろクライマックス入ってますし、新しいシリーズはもう出ないんでしょうかねえ。そうなると、いささか寂しいのですが。