おとーさんといっしょ!3 キミの帰る場所 (GA文庫)

【おとーさんといっしょ!3.キミの帰る場所】 中谷栄太/シコルスキー GA文庫

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 青い空。白い雲。輝く太陽と焼けた砂浜。そして――水着の女の子!
「海だぁ―――――――――っ!」
「元気だな……」
 クロエの持つリゾート地にやってきたリュウたち。はしゃぎ回るルーとノノだったが、リュウには別の目的があった。
 珪素生物を導く存在として生まれたメルディやルー。そんな彼女たちに替わる『三人目』らしき反応が、この地にある稀珪石の鉱脈で確認されたのだ。
 調査をはじめたリュウたちだったが、彼らの前に白髪の少女が現れる。
 彼女の名はライラ。ルーが立派な「王」になれるようサポートするために作られた存在だと言うのだが――?
これはぶっちゃけ、タイトルが失敗だったと思うんだ。そもそも何の話か分からないし、間違ってもちょっと読んでみようかな、と興味を引くものでもないし。
残念ながらやっぱり人気はなかったようで、この三巻で完結と相成ってしまったわけですが、個人的にはこの作者、相当に伸び代があると思うんですよね。少なくとも、キャラ同士の丁々発止の掛け合いに関しては、テンポといいギャグの呼吸の間合いといい、台詞の言い回しや言葉の置き方のタイミングなど、絶妙と言っていいくらいに上手いし面白いんですよ。このへんは巻を重ねるにつれて切れ味が上昇してきた部分でもあり、特にこの三巻など円卓政府のお偉方がいいキャラに育ち過ぎてて、吹いた吹いた。メルディロリ婆ちゃんが完全にアグレッシブ弄られ役に定着してしまって、あんた一応創成期の大英雄じゃなかったんかい(笑
初登場の双子ですら、出っ端から大暴れだし、何というか一巻の頃から比べるとキャラクターの動かし方というのを体得した感すら伺える縦横無尽の動かしっぷりには惚れ惚れとしてしまった。
なので、この人、次回作で本格的にコメディ中心の話をやりはじめたら、作品がブレイクする可能性も十分あると期待している。
とはいえこの人、どうやら明るく陽気な話だけではなく、無慈悲な現実や人間の逃れられない業、世の中の悪意や悲惨さというものを真っ向から描きたいという欲求もあるらしく、基本のノリがコメディにも関わらず、各巻の物語の根底に横たわっている真実は結構ダークな展開ばかりだったりしたのだけれど、残念ながらどうにもどっちつかずの中途半端なものになってしまった感があるなあ。
ただ、最後のこの三巻については愛情に飢えたが故の狂気を上手く包んで家族の愛の素晴らしさというシリーズのテーマに共通する部分に着地させた点はよくまとめきったと思う。こうして見ると、話の構成の組み立て方も最初から見るとちゃんと洗練されてきてるんですよね。
本来なら中途半端にせずにどっちかに集中して書くべきだと考えるべきなのかもしれないけれど、私としてはこのままドタバタコメディとハードなスタイルを両立して高めて行ってくれても面白いと思うんですよね。いずれ、中途半端じゃなく両者が上手くブレンドされた良作を書けると期待してもいい作家さんだと感じました。
というか、軽い方軽い方にばかり行ってしまうとイイところがなくなっちゃいそうな気がするんですよね。コメディで全体を整えながら、芯の部分には歯応えのある人間模様をしっかりと描く、そんなスタイルならばこそ、この作者さんは伸びそうな気がするな。
ともあれ、次回作には大きく期待したいと思わせてくれるだけの、先を感じさせてくれるデビュー作でした。