俺はまだ恋に落ちていない (GA文庫)

【俺はまだ恋に落ちていない】 高木幸一/庭 GA文庫

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「……ふん。さっすが男に縁のない女子校ちゃんは、がっつき具合がはんぱないわ」
「……かく言うあなたは、たった二回しか会ったことのない殿方に、なにかご用でも?」
「今で三回目よ。つまりあんたより多いわけ。分かる?」

 高校生・赤井公は友人の田所からふたりの妹・恵衣美と詠羅を紹介される。
 活動的なロングヘアの高校生・恵衣美。
 占いが好きなショートカットの中学生・詠羅。
 会うたびに、ふたりと仲が良くなっていく赤井だが、ふたりの仲は最悪の関係!?

 GA文庫大賞《期待賞》を受賞のトライアングル・ラブコメディ!
 キミは運命の出会いを信じるかい?
なにこの超絶性格イケメン!? いやいやいや、この主人公の赤井公という人物、一見では友達とバカやって騒ぎ、アホっぽいギャグをかまして女の子を笑わせて喜ぶような、そのへんの年頃の男の子そのものなんですが、ちょっと近頃の鈍感主人公はみんな見習え、と思ってしまうくらい他人に敏感なんですよね。何というか、他人が意識的にも無意識的にも彼に求めてきているものを察して受け止めるのが抜群に優れている。ただのお節介と違うのは、自分の正義を押し付けるのではなく、あくまで相手の願いを汲んでいるところだ。言葉を変えるなら、やたらと空気を読むのが上手いというべきなのだろう。だからと言って、空気に流されるのではなく、ちゃんとその時の状況の最善を読んでるんですよね。そんでもって、とても簡単なことのようにヒョイッと行動に移してしまう。そこには優柔不断の陰など欠片も見当たらない。果断のヒトコトだ。
本人の性格は非常に軽くて親しみやすく、そばにいるとケラケラとお腹を抱えて笑う事がデフォルトになってしまうので、変に気を使うこともないしその言動に重さを感じて疲れることもない。一緒にいてすごく楽しいし気楽だ。それなのに、困っていたり何かこうして欲しいなというサインを出した時、自分の気持をそっと閃かせてみたりしたら、即座に反応してくれる。期待以上の結果をひょいと持ってきてくれる。ささくれだった心を癒してくれる。荒ぶった感情を宥めてくれる。これほど一緒にいて安心できてリラックスできて、ニコニコ笑っていられる男はいないですよ。
そりゃ、ヒロインの姉妹ものぼせ上がるわー。
私はどうも、わずかに何回かしか顔を合わせていないのにやたらと親密になってしまうパターンってあんまり好きじゃないんですよ。まだ相手の事などなんにも知らないんだから、もっと時間を掛けて相手の事を知らないと、絶対後々に齟齬が出てきてしまうんじゃないか、と思ってしまう。
でも、このケースに関しては納得ですわ。恵衣美も詠羅も、こいつになら、たとえまだ三回しかちゃんと会っていないにしても勝負に出て正解だと思う。ただ、彼女らがこれだけ性急に後戻りできない決断に打って出たのは、お互いの存在があったからなんでしょうね。もし、姉が、妹が彼に粉かけてなかったらさすがにこれだけ慌てなかっただろうなあ。普通に告白してもっと仲良くなってから、審判に挑んだはず。いくらのぼせ上がっていたとしても、もうちょっと冷静な判断が働いただろうし、もしくは冷静になろうという考えも湧いただろう。一生を賭けるには、いくら何でも見極めの時間が足りなさすぎる。殆ど直感でしたしね。
その意味では、お祖母様はこの姉妹同時に同じ人をすきになってしまう、というパターンは想定外だったんじゃないかな。お祖母様としては、孫には旦那となる男はちゃんとじっくり入念に見極めて選べ、という思慮を要求したつもりだったんでしょうし。それが、姉妹が張り合ったお陰で男を見る目の直感勝負になってしまったわけですし。……いや、彼女たちの性格からして、相手がちょっかい掛けてきて無くても、勢い任せに行っちゃってたかもなあ。恋する少女は損得勘定なしのブレーキ知らず、ですから。

いや、何にせよ期待以上に面白かった。話としては友達を通じて引き合わされた友人の妹と二人で会って、遊んで、仲良くなっていくだけのシンプルな話なんですけどね、これが素晴らしく面白かった。二人の妹たちのキャラクターが実に可愛らしくて魅力的であり、それと相対する主人公の性格もまた面白おかしく、それでいて読んでてストレスがたまらない性格イケメンというのが大きかったのでしょう。二人の妹たちが主人公に興味を抱き、話して遊んで一緒にいる内にどんどん好きという気持ちが膨らみはちきれんばかりになっていく様子が、読んでいてもニヤニヤさせられっぱなしでした。
一つ注視しておくべきは、主人公はまだ恋に落ちてイない、という所でしょうか。普通に、女の子とイチャイチャするのは好きですし、妹ちゃんたちのことはカワイイなあ、とデレデレしているにも関わらず、未だ根本の所で受身であり、自分からは踏み込んでいない。このあたり、続編が用意されていて、そこで変化を迎える予定なんですかね?
まあ、続編はあったら読みたいなあ。