魔術士オーフェンはぐれ旅 原大陸開戦【特製小冊子付き初回限定版】

【魔術士オーフェンはぐれ旅 原大陸開戦【特製小冊子付き初回限定版】 秋田禎信/草河遊也 TOブックス

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アイルマンカー結界が消失し、キエサルヒマ大陸は世界を滅ぼそうとする女神の前に無力となっていた。代わりにオーフェンが手にしたのは女神に対抗するための「魔王」の力。
世界の均衡を崩した罪を背負ったオーフェンはキエサルヒマを追われ、新たな土地である原大陸へと旅立つ。しかし、そこは女神の手で怪物=ヴァンパイアと化した人間たちと魔術士とが戦い続ける厳しい土地だった。

それから23年。オーフェンの旧友の息子であるマヨールは、三年ぶりに原大陸を訪れていた。
今回の同行者は、妹のベイジットではなく、婚約者のイシリーンと教師のイザベラ。三人はキエサルヒマから原大陸へとヴァンパイア化を目指して渡航した人々を追うため、魔王の統治する魔術学校に出向く。そこにヴァンパイアたちが強襲をかけ、マヨールは否が応にも大陸を二分する戦争に巻き込まれていく。
うおおお!? なにこれ、20年前と魔術戦闘のレベルが激烈と言っていいくらいに変わってないですか!? 具体的に言うと「ドラゴンボール」と「ドラゴンボールZ」くらい。【約束の地】で読んだ時も、マジクの強キャラっぷりには度肝を抜かれたものですが、イメージとしてはまだ個々がさらに強くなった、というレベルのものだったんですよね。うん、確かにオーフェンやマジクが魔王術によって昔よりも著しく強くなっているのはそれはそれで間違いないのですが、問題はヴァンパイアとの闘争にそれが常時必要だって事なんですよね。つまり、原大陸ではこの規模、この強度の戦闘が日常茶飯事であり、逆に言うならこのレベルで戦えないと話にならない、必須の戦闘能力であるということ。求められる力が、20年前とは段違い、別次元になっている。
過酷どころじゃないですよ、これ。たとえ、カーロッテとの暗黙の盟約があったとしても、実際にヴァンパイアとの闘争は続いていたわけで、最前線では紙一重の死線が繰り広げ続けられてきたわけだ。
二十年以上も!!
これを20年以上も続けてきたのか!? 歴戦どころじゃないですよ。信じられん。そりゃ、これキエサルヒマ大陸の魔術士では比較にならんわ。そもそも、最前線と後方では価値観から摺り合わせができないだろうに。

それでも、オーフェンは20年経っても、ここまで戦い続けていたにも関わらず、変わっていなかった事になんだかほっとした。【約束の地】を読んだ時は結構変わった印象だったんですけどね、あれはどちらかというと外部からのイメージが強く反映されていて【魔王】であり原大陸の守護神であり魔術学校の長、という英雄として、政治的存在としての在り方や立場が表に出ていたが為に変わって見えたのであって、今回は内面描写も多くあった分、ただのオーフェンとしての姿も描かれたお陰で根本的なところはあんまり変わってなかったんだなあ、というのが確認できて安心した。それでも、だいぶ大人になって分別がつき、年輪を踏んだ分の汚さや割り切りも得ているんですけどね。でも、それは不安定で迷ってばかりだった昔の彼と違って、ドッシリとした安定感、信頼感の礎になっていて、うん、頼もしくなったよ、オーフェンは。
私人として、実質的には甥であるマヨールにどこか叔父さんぽく接していたのも、安心の一材料だったんだろうなあ。昔の家族に対しても、物理的にも人間関係的にも距離ができてしまったけれど、家族として話をしてくれましたし。

マヨールの方も、【約束の地】からはずいぶんと印象変わりましたね。前はもっと余裕がなくて良くも悪くも父親のフォルテに似た生真面目で角張った子に見えたんだけれど、三年経って大人になったどころか、良い意味で無茶が出来るようになった感じ。意地や見栄の結果ではなく、熟慮と研鑽の結果、想定のさらに向こう側にえいやっと飛び込めるようになった、というか。
読み終わった後に振り返ってみて気づいたんだけれど、図らずも今のマヨールってかつて牙の塔を飛び出した時のキリランシェロとシチュエーション、重なってるんですね。ただの考えなしの暴挙に過ぎなかったキリランシェロの脱走と違って、マヨールの場合はもっと覚悟と計算がある上に、切羽詰まった上でオーフェンの後押しがあったわけで、人間的な成熟度を見ても、かつてのキリランシェロと比べるのは間違ってるんでしょうが。
何れにしても、これなら主人公として十分の熱さだわ。正直、彼がオーフェンとともに新シリーズの主人公を担うと聞いた時にはちょっと不安であり不満でもあったんだけれど、これは良い予想外だった。
わりと努力家で研究熱心でもあるんですよね、彼。あんまり実践派じゃなかったフォルテやティッシと比べても、かなり現場に合ってるんじゃないだろうか、意外だけれど。

さて、本格的に登場と相なったオーフェンの三人娘。あの三女、ヤバイだろう。どこが普通の娘だよ。一番キレキレで危うかった頃のクリーオウでも、ここまで不気味じゃなかったぞw
三人の中では真ん中のエッジがやっぱり一番常識人か。常識人といっても程度問題な気もするけれど、プルートー師の言うとおり、確かにこの子はキリランシェロ似だったかもしれない。まともという意味でも、神経質という意味でも、ハリネズミという意味においても。慣れると一番扱いやすい、というのを見抜いたのか、マヨールは一番に彼女に協力を求めていたわけですし。
ラッツはもうどうしようもないよなあ。あれ、どうしたらいいんだろう。もう、マジクに全部任せておくしかないんじゃないかというくらいにどうしようもない。他の人も手を付けられないみたいだし。あのコルゴン=エドですら持て余してるみたいだしなあ。
まあ、一番持て余しているのはどう見てもマジクおじさんなんですが。

マジク、まともじゃないですか。どうも彼について語るのがラッツやエッジというマジクを色眼鏡で見まくっている子たちばっかりだったので、もうどうしようもない情けない中年に成り果てているのかと憐れみを抱きながら遠くから生暖かく見守ってたんだが、どうやらあの三姉妹以外はマジクの評価は全然違うようで。実際、戦ってるシーンなどを見ると、お前本当にマジクかよ!? と絶句してしまうくらいに凄まじい人になっちゃってるようなんだが、番外編の扱いは悲惨の一言。というか、ラッツと一緒にいると常に悲惨というべきか。と言うことは、人生概ね悲惨なのか。どうやら今後も生涯悲惨の予定みたいだし。

一番嬉しかったのは、やっぱりクリーオウ夫人でした。家庭に入っちゃって、あの暴れ馬もいいお母さんになちゃったのかな、などと思ってたら、やっぱり案の定無茶苦茶でしたし。クリーオウはそうでないと、そうでないと。
あとは、オーフェンとの夫婦生活がどんななのか、ですよね気になるのは。結局、この二人がラブラブだったシチュエーションはついに見られないままでしたし。まあ、これはこの二人に限らず、どのカップルにも該当する話ですけれど。ラブラブとかこのシリーズでは見たことないし!!

おそらくは、その旅の最初から手遅れだったキリランシェロのそれとは違い、マヨールのそれはまだ間に合うもののはず。アザリーとのそれをあんな形で終えるしかなかったオーフェンの二の舞になることなく、マヨールは自分の答えを見つけることが出来るのか。
女神の進軍というアイルマンカー結界崩壊を上回る破滅的絶望的な状況も相まって、始まったばかりなのに切羽詰まった雰囲気が尋常でない第四期。既に来年2月に続編が発売予定と言うことで、今から続きが楽しみで仕方ありません。
本書が届き、手に取った時のワクワク感、期待をまったく損なわなかった「まだ見ぬオーフェン」の世界。堪能させていただきました。ああ、オーフェンだ。

秋田禎信作品感想


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