ギフテッド (電撃文庫)

【ギフテッド】 二丸修一/りょう@涼 電撃文庫

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ギフテッド──神から与えられた頭脳を持ちながら、苦しみから逃れられない悲劇の存在。

 世界最高峰の企業天子峰──その幹部候補生が閉鎖都市に集められた。ただし、人権のないZランクの市民という扱いで。
 候補生のひとりである俺、加納弥助は、数々の天才たちと共に幹部を目指すことになる。勘で必ず正解を言い当てる小学生、エル。才色兼備の同級生、光明寺綾芽。暴走族風の謎めいた男、伊勢七彦。
 幹部になることができれば、途方もない金と地位が手に入る。栄誉を求め、天才たちが命を賭けるゲームが始まった。
何人モノ天才が集まって相争う、というゲーム形式のスタイルから、天才という名の人格破綻者たちが、荒唐無稽で破天荒すぎる個性をぶつけ合い、魔女の大釜をひっくり返したような阿鼻叫喚の凄惨な惨劇が繰り広げられる、という妄想を読む前には勝手にイメージしていたんだが、打算ありきとはいえ最終的に信頼に寄って結びつく和合によって、与えられた試練を乗り越えていく、というスタイルになっていったのには意表を突かれた。実のところ、登場人物の誰も、あんまり天才という感じはしないんですよね。むしろ生来の特異性を有した天才というよりも、特殊な環境によって精錬された強烈なまでの不屈の意志力を有した叩き上げの逸材たち、と言った風情である。上から見下ろし俯瞰して物事を転がしていくのではなく、地面を這いずり泥に塗れながらその才をぶつけていく、という感じですしね。その貪欲さやしたたかさ、クレバーで計算高くありながら、いざとなるととことんまで熱くなり闘志を滾らせる野性味といい、天才という言葉から連想するひ弱さ、脆さからは距離を置く人たちですしね、皆が皆。
その意味では、理解出来ない人種を遠くから見物するのではなく、読んでいても思わず感情移入してしまうような連中なので、好感度はよっぽど高いんですけどね。
まあ、天才というにはややも穴の多すぎる計画しか思い浮かばなかったり、と名がタイを表していないというのもあるんでしょうけれど。試験のスタイルも合格条件が分からない、という冒頭における未知数の広がりにワクワクしたものの、終わってみると何ともショボいような模範解答で、それだと最初の屋上から飛び降りる、のがよっぽどインパクトの強い試験だったよなあ、と思わないでもない。あの試験に合格した面々なら相当にイカレた連中ばかりなのかと思ったら、主軸以外の連中は普通にモブキャラみたいなもんだったしなあ。
それでも、どこか欠落を抱えた登場人物たちが、似たような不幸の境遇を持つ同僚たちと本気でぶつかり合うことで相互理解、何より自分への理解を深めていき、信頼を結び合い、ひとつのチームとして団結していくさまは、先が見通せないモヤモヤとした霧の中を進みながら、段々と勢いをつけて霧を吹き飛ばしていくようなワクワク感があって、楽しかったです。まあ、だからこそもっと劇的な決着方法だったらな、と思っちゃうんでしょうけれど。
まだまだ荒削りな部分が目立つだけに、よりメキメキ話が上手く面白くなりそうな余韻もあり、続きが出るなら勇んで手に入れるつもりです。