彼女がフラグをおられたら 俺、この転校が終わったら、あの娘と結婚するんだ (講談社ラノベ文庫)

【彼女がフラグをおられたら 俺、この転校が終わったら、あの娘と結婚するんだ】 竹井10日/CUTEG 講談社ラノベ文庫

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僕はもう白旗です

フラグ−−それは、人生において大事な分岐点を示す道しるべ。
主人公・旗立颯太は、ひょんなことから他人のフラグが「目視」できるようになってしまった高校生。転校したての颯太は、右も左もわからない環境の中でとにかく近づいてくるヒロインたちの「恋愛フラグ」をついつい折りまくってしまう。その奇妙な行動に興味をもった美少女たちが、なんと颯太と同じ屋根の下で暮らすことが決定。女子7人との寮生活で折っても折ってもわき上がってくる恋愛フラグにいい加減うんざりしていた颯太だったが、ひとつとんでもないフラグを見つけてしまう。それは……!?
竹井10日が贈るハートフルラブコメディ。
あなたのフラグは何色ですか?
あははははは、竹井10日だ。これは竹井10日そのものだ(笑
それも、かなり初心者に馴染みやすいマイルドな仕様になっているんじゃないだろうか。ゲームの【秋桜の空に】や【お姉ちゃんの3乗】、近年では一迅社文庫の【10歳の保健体育】などを読んだ事のある人はわかると思うのだけれど、この人の作風って時折「お下品」なところがあるんですよね。それが一種のエグ味となって、受付なかったりドン引きしてしまう要素になっている部分があると思うのだけれど、この【フラグ】に関してはそうした『エグ味』が綺麗に取り去られていて、竹井10日という人の奔放で戯けたやたらと楽しい文章のノリだけが抽出されて出来上がっているのだ。
本当に楽しいったらありゃしない。
作者、自重しろ! と言いたくなるような、地の文で繰り広げられる一人ボケツッコミ。これ、ツボにハマるとたまらんのですよ。明らかに、考えてじゃなくて脊髄反射でボケてるもんなあ。いったい誰と会話してるんだw
主人公はある大事故をきっかけに「フラグ」を見る事ができるようになった少年。かなり厭世的で他人と距離を置こうとする根暗な少年なんだけれど、残念ながらヒロインは誰もそういう少年の繊細な心を斟酌してくれるような人たちではないので、颯太のスタイルは徹底的に無視され、彼の言動は可能な限りスルーされ、その抵抗は暖簾に腕押しであっさりと流されていくのです。もはやトータルして「orz」状態。東京皇帝の一斗くんほど精神的に枯死していないだけに、一生懸命ぼっちになろうとしているのに一顧だにされずにキャッキャウフフの嵐の中に引きずり込まれて溺死体みたいになっていく様子には、思わず涙を誘われる。変な意味で可哀想な主人公である。みんな、もうちょっとだけ主人公の少年の主張を聞いてあげようよw
極度のツンデレ(デレはまだ微量)な菜波が、まだちゃんと颯太と意思疎通が出来る分、極めてまともな人間に見える不思議!
一応、彼にはフラグが見えるがゆえに、そのフラグを自在に折ったり出来るという能力を持っているのだけれど、茜に菊乃に恵といったヒロインたちときたら、フラグを折っても折っても即座にフラグが無限復活したり、折ろうとしたらフラグが神回避して触れられなかったり、フラグが万国旗でどう折ったらいいか意味不明だったり、というフラグブレイクが不可能というキワモノばかりで、主人公の能力などさっぱり通用しないのだ。なにこれこわい。
たった一人だけ、颯太の目にフラグが映らない少女 菜波・K・ブレードフィールドが普通に見えてくる不思議!! こんな得体のしれないフラグ持ちたちに比べたら、フラグが見えない程度、不気味でも不思議でもなんでもないよ!?
それでも、この世で唯一、颯太の眼が届かない少女、というのは物語上でも大きな意味を持っていて、何だかんだと一番良識人っぽい菜波さんはツンデレだろうがなんだろうが、一応メインヒロインなのだろうけれど、なぜだろう……何気に颯太と同じレベルで周りの暴走に巻き込まれてる気がするんだが。哀れ、良識人(笑
まあなんだ……ふたりともガンバレ。

どうやら颯太の能力には未来に控えているだろう大きな事件の重要な鍵になっているらしい描写もあり、ストーリーの仕込みも何だかんだと随所に為されているようだ。
ともあれ、竹井10日ファンならば必読のノンストップハイテンション(主人公はローテンション)コメディである。うん、底抜けに楽しかった♪
しかし、竹井さんのダダ甘お姉ちゃんはもはや伝統芸能の域だよな、これ。