ログ・ホライズン5 アキバの街の日曜日

【ログ・ホライズン 5.アキバの街の日曜日】 橙乃ままれ/ハラカズヒロ エンターブレイン

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乙女たちが切ないため息をつく秋の午後、新たな敵がアキバの街に侵入した!!
次の敵は、モンスターより手ごわい「人間」。
その攻撃目標は、〈円卓会議〉というアキバのシステム。
剣と魔法ではない、情報戦の応酬がはじまる!
腹ぐろ眼鏡シロエは、この危機をどう乗りきるのか!?

累計25万部の大ヒットシリーズ、いよいよ第1部完結!!
もうアカツキがヤバいくらいに可愛い。ヤバイヤバイ、どうしようこれ、破壊力が戦略級なんですが!!
ウェブ版を読んだ時も悶えたものですけれど、ハラカズヒロさんのイラストが付くと付かないとじゃ、桁が違ってきますね。小袖でお洒落したアカツキがもうヤバイ。ヤバイなんてもんじゃないくらいにヤバい!!
うーん、改めて読むと、恋する乙女たちのフワフワとした綿菓子のようで、しかししっかりと方向性が根づいた心理描写がまた卓抜した出来栄えなんですよね。語彙が弾んでるっていうのかな。ここまで華やかで彩色豊かでありながら論理的な明晰さにあふれた内面の表現力は、キレキレにキレまくっている時のあざの耕平さんのそれにタイプが似ていると感じた。あざのさん大好き、な自分としては当然のごとく大喜びなんですよ。
更に言うと、ここでしっかりとアカツキとミノリのシロエに抱いた想いのカタチと、その欲する方向を明快に描いていたからこそ、後々の彼女たちのスタンスの違いが明確に目に見える形で現れてくるんですよね。
シロエに憧れ、彼が立つ頂きに自らも立とうとするミノリと、シロエの傍らに安息を得て現状に満足してしまったアカツキ。アカツキのそれは、実のところ異性に恋する女性としては何も間違っていないと思うんですよ。シロエは間違いなく、アカツキと同じくすぐ傍に居てくれる小さな美少女の存在にやすらぎと居心地の良さを感じ始めていたのですから。ただ、アカツキがこの世界で最初に欲したのは、現実世界でのようにただ愛され慈しまれる事ではなく、容姿など関係なく対等の存在として認められ、受け入れることだったのです。ところが、アカツキはいつの間にか自分がその為の努力を怠り、居心地の良い場所で安穏と過ごしている事に気づいてしまった。常に精進を重ね、努力を積み重ね、意識高くシロエと並び立とうと頑張り続けるミノリを目のあたりにすることで、自分が立ち止まってしまっていた事に気づいてしまった。シロエの傍で、彼と同じ景色を見ているのは自分ではなく、まだ中学生の幼い女の子の方だと知ってしまったのです。
今まで自分が胸を張り、誇っていたものが、自分を形作っていたものが一瞬にして色あせてしまった瞬間。そんな自己崩壊にも似た瞬間を経ながら、やっぱり彼女がすでに成人を迎えた女性だと認識させられたのは、そうした内面の崩壊を全く外に見せず、他人に変化を悟らせなかったところでした。自分は弱っている、困っている、泣いている、そんなアピールをしてみせて同情を引き、関心を求めようとする欲求をねじ伏せようとするそれは、所詮見栄です、意地です、でもそれは大人の矜持というものなのです。
アカツキがこれからどうやって、失ったものを取り戻すのか。これ以降はウェブ版で描かれていない書きおろしの部分になるので、これからの展開が楽しみで仕方がない。ミノリも素敵な女の子なのですけれど、この娘はぶっちゃけ人間力が高すぎてヒロインというよりも主人公としての格の持ち主なんですよね。陰というか、捻れた部分のあるシロエよりも、もしかしたら純粋に高みに至れる資質の持ち主かもしれない。彼女は自分の力をすごく真っ直ぐに使える子なんですよ。多分、まだシロエを追いかけるのに一生懸命で、だからこそ一途に進めるのだろうけれど、でもたとえ前を行く人を追い越しても、この娘は決して振り返らずに背筋を伸ばしてそのまままっすぐに進んでいくはず。だからきっと、誰かの、というよりも多くの人の目指す星になれる子だと思うんですよね、この娘は。だから、ちょっと眩しすぎて、大人だけれど不器用で難しいところのあるアカツキの方をやっぱり応援したくなってしまうのです。
ヘンリエッタさんもイイんですけどねえw

さて、サブタイトルのアキバの街の日曜日。日曜日というと、どうしても休日のような気がしてしまうのですが、社会人、特に商売人や管理職の人間にとって日曜日というのはさり気なく平日より忙しかったりするパターンもあるわけで……個人として動いていた前半はみんな休みの日のお祭りを純粋に楽しんで遊び回っていたのだけれど、お客として祭りを回る側から、出店を出し祭りでモノを売り、イベントを仕切る側に回ると尻に火がついたように大忙しの様子となり、さらに大祭に外部からの悪意、円卓会議の運営処理能力をオーバーフローさせようとする「攻撃」が加えられている事に気づいてからの段になっては、現場から管理運営のステージへと移っての高度な管制撃滅戦に。
剣を振り回し、魔法をぶっ放す物理的な戦闘とは異なる、しかしそれをも上回る勢いで熱いフィールド制圧戦闘。面白いなあ。一応これ、ファンタジーのはずなのに、普通のそれとは全然立っている場所や目線が違うんですよね。こういうのを目の当たりにすると、やっぱりあの【まおゆう魔王勇者】を書いた人なんだなあ、というのがよくわかる。

ついにその姿を表した西の冒険者の街「ミナミ」の総領、濡羽。この人のシーンは気合入ってたなあ。イラストと合わせての黒塗りの見開きページ。背筋がゾワゾワしましたよ。この時シロエが感じていた気持ちの悪さと魅入られるような陶酔感が、ダイレクトに伝わってきて、なんだか悪酔いした気分。
はたして「ミナミ」がどうなってしまっているのか。本格的に交わるのは次回以降なんでしょうけれど……どうなるんだ、これ。

そして、シロエがずっと気にかけている、茶会のリーダーの「彼女」。この女性については濡羽も思う所がある、というよりも強く敵視している? ようだけれど……彼女の話はどうやら一旦飛ばされるのかな。実はウェブ版では彼女が今何をしているか、の話が描かれていたんだけれど……。あっちは番外編だもんなあ、あの形式だと。いずれ、何らかの形でアプローチしてくるとは思うのだけれど。はてさて。

ラブラブな空気はシロエたちだけではなく、色んな人の間でも流れ出しているようで……ソウジロウは別だけどな。あそこはどうやら万年だw というか、あのハーレムはどうなってるんだ!? あれだけ高度に組織化されていながら、実質序列なしの平等って…一種の魔界かなんかか!?
個人的にはマリ姉の初々しさに一票。ああもう、直継のことあんなに意識しちゃって、可愛いなあ!!

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