生徒会探偵キリカ1 (講談社ラノベ文庫)

【生徒会探偵キリカ 1】 杉井光/ぽんかん(8) 講談社ラノベ文庫

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前払いなら千五百円、後払いなら千八百円
金取るのかよ……

僕が入学してしまった高校は、生徒数8000人の超巨大学園。
その生徒会を牛耳るのは、たった三人の女の子だった。女のくせに女好きの暴君会長、全校のマドンナである副会長、そして総額八億円もの生徒会予算を握る不登校児・聖橋キリカ。
生徒会長によってむりやり生徒会に引きずり込まれた僕は、キリカの「もうひとつの役職」を手伝うことになり……生徒会室に次々やってくるトラブルや変人たちと戦う日々が始まるのだった!
愛と欲望と札束とセクハラが飛び交うハイテンション学園ラブコメ・ミステリ、堂々開幕!
なんちゅーか、清々しいほどの恒例の杉井小説だなこれ。主人公のキャラクターなんぞ、木村拓哉がどのドラマでも木村拓哉なのと同じくらいに、どの作品でもまるで変わらないあたりはいっそ徹底していると言ってすらいいのかもしれない。本気で単に名前が違うだけで、性格から何から殆ど変わらないし。
しかし面白い。
【神様のメモ帳】の方が、学校には殆ど寄り付かずに裏社会のフィクサーになってしまったので、今度はちゃんと学園ものにしたかった、と後書きに書いてらっしゃいましたけれど、明らかにやってることは学生の領分じゃないですよね?(笑 
そもそも、舞台となる学園が8000もの学生が通う巨大な一つの社会でなければならなかった、という時点で普通の小じんまりとした学校単位では狭すぎて、主人公たちの活動のスケールが収まらない、というのが如実に伝わってくるわけで。生徒会長の野望も無茶苦茶だもんなあ。あれ、本気で言ってるんだろうか。本気なんだろうなあ。【ピアノソナタ】のあの革命家に比べたら、その目的というか野心の方向性も分かりやすくて即物的な気もするけれど、言ってる内容が内容だけに解釈を間違えているかもしれない。
まああんまり難しく考える必要はないかもしれませんけどね。この作品に限らず、この度創刊された講談社ラノベ文庫の作品を読んでいると、全体的にどうも「易しい」作りになってる気がするんですよね。軽いと言ったら語弊があるんだが、言うなればライトノベル初心者向けにマイルドに作ってあるというふうな印象を読んでいて感じた次第。この作品だって【神様のメモ帳】とコンセプトは非常に似通っていると思うんだけれど、アレに比べて変に拗らせずに、殊更キャラの抱える事情にしても思惑にしても行動原理にしても、実際の話の流れや問題の解決方法など、分かりやすい要素を積み重ねて構成している感触なんですよね。それで食い足りない、という訳ではないのは流石だと思うけれど、でも【ピアノソナタ】や【神様のメモ帳】みたいな濃縮さにはやっぱり欠けるので、あのレベルを求めるならちょっと違うんだろうなあ。
というかこれは、神様のメモ帳タイプの舞台装置に【さくらファミリア!】や【ばけらの!】スタイルのキャラや掛け合いで組み上げた作品だと考えれば、しっくりくる。ともあれ、主人公の腕章は冗談でなく「詐欺師」でいいんじゃないかしら。そのうち冗談じゃなく「ジゴロ」という腕章をつけろという話になりそうな気もするが。
何だかんだと気軽に楽しく読めるというのは、作者の作品としては意外と珍しいのかな?