サイハテの聖衣(シュラウド) (電撃文庫)

【サイハテの聖衣(シュラウド)】 三雲岳斗/朱シオ 電撃文庫

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新感覚・日常系戦場ファンタジー!

 霊獣を封印した破魔の鎧──獣装戦闘服(BUD)。またの名を聖衣(シュラウド)。それをまとう少女たちは獣装巫兵と呼ばれ、謎の妖獣“禍憑妃(マガツヒ)”から日本を守るために、日夜、戦い続けていた。本州最西端にある赤間関市を舞台に、民間軍事会社“極東自衛機構”所属の少女兵士たちの活躍と、コミカルな日々の生活を描いた新感覚・日常系戦場ファンタジー。
『ストライク・ザ・ブラッド』の三雲岳斗が贈る『電撃文庫MAGAZINE』の人気連載作品、待望の文庫化スタート!
うははははっ、面白い面白い!! 三雲さん、元々長年最前線で良作を出し続けたエース格と言っていい作家さんだったけれど、【ストライク・ザ・ブラッド】といいこの【サイハテの聖衣】といい、何か良い意味で安定したというか、面白さにどっしりとした重心が出来たというか、表現が難しいんだけれど作品として多少ヤンチャしてもブレない裾野が広がったというか、兎も角手放しで面白い面白いとはしゃげる安心感が得られるようになってるんですよね。一皮むけたなんて表現は、今更三雲さん程の人に使うのは語弊があるし、ちょい前の【ダンタリアンの書架】や【アスラクライン】から劇的に変わったなんて事も全然ないんだけれど……でも、今年の彼の人はちょっと感触違うぜ、こりゃあ。
というわけで、過酷な戦場に放り込まれた年端も行かない少女たちのシビアな戦争モノ、とおもいきや、あらすじにもある通り、どちらかというとゆるゆるな日常系戦場ファンタジー。
日常系戦場ファンタジーて(笑
てっきり別にシリアスな本編があって、これは番外編の短篇集か、と思うような緊張感のないドタバタコメディなのである。これがまた、抜群に面白い。あれ、そう言えば作者が此処まで一貫してコメディ描いたのって、あんまり覚えがないような。作中の日常回に息抜き感覚で掛け合いメインのコメディを挟むことは珍しくはなかったと思うのだけれど、一作品を全部そのスタイルで構築したのって……あれ? マジでないんじゃないか!? ランブルフィッシュやコールドゲヘナの短篇集がそんなノリだったけれど。そう言えば、あれらの短編、べらぼうに面白かったんだよなあ。あれらを思い出すと、三雲さんがギャグコメ書いて面白くないはずがないのかもしれない。
最前線の落ちこぼれ部隊、というと一癖も二癖もある問題児だけれど実力者揃い、なんてのが定番である。勿論、本作もその流れを踏襲しているといえば踏襲しているのだが……それにしても、四人とも経歴がキワモノすぎるだろう、これ!!
ちょうど四本掲載されているお話は、それぞれメインとなる四人の少女たち、天乃羽々姫、桜狩紗々羅、蓼宮鳴々葉、小揺木音々(全員名前に「々」が付いてるな)の紹介話になっているのだけれど、最初の羽々姫の、所属事務所の破産に巻き込まれて多額の借金を背負わされ、日々借金返済の為に戰う元アイドルという経歴だけでも大概なのに、その後の鳴々葉と音々の経歴がまたひどいのなんの。キワモノのキワミじゃないか、それw
紗々羅の元救国の英雄という来歴がまるで大人しく思えてくるくらいである。
何気にみんな実力者揃いなのはよく分かったが、これは確かに最前線の小さな基地の一角に隔離しておかないと色々な意味で危険過ぎるw

それにしても、この作品の設定の肝は間違いなくこれですよね。聖衣の運用経費の一部が自己負担!! しかも、封印を解除して高出力で稼働すればするほど、支払う毎秒の基本使用料の単価が跳ね上がっていくという。一応、敵である禍憑妃には多額の賞金が賭けられていて、それを倒すことで収入は得られるんだけれど、下手な戦い方をすると儲けるどころか赤字に転落して借金が増えていくという。
軍隊ものにありがちな展開として、上層部の命令を無視して主人公たちが正義感まかせに独断専行で飛び出していってしまう、というものがよく見受けられますが……果たして、そういうシチュで経費が自己負担だった場合、感情任せに突っ走れるのか、なんて想像をめぐらしてしまうと、この設定は面白いなあと思えるわけで。
誰かのために命を賭ける覚悟は出来ても、さて誰かの為に赤字になって借金を背負う覚悟は出来ますか?(笑
いや、今のところこの作品でもそんなお話の流れは全然ないんですけどね、ちょっと想像してみたら面白かったので。
それに、お金に関して汲々としているのは、借金大王の羽々姫だけで、他の三人はそのへん切羽詰まってるどころか何だかんだと儲けてるっぽいので、余裕を通り越してあんまり考えてないみたいですし。……羽々姫は、儲けるどころかどの話でも何故か赤字にしかなってないような気がするぞ、大丈夫かおい。お金に対して切実で必死なわりに、吝いわけじゃないんですよね、羽々姫って。思い切りがいいというか、掛金には糸目を付けないタイプというか。何気に封印解放や大技を放つ事に躊躇しないもんなあ。この思い切りの良さは、さすがはアイドル業界で前張ってきただけあるのか。それが決して良い目に出てないあたりは不憫極まりないですが。貧乏設定が色々と可哀想すぎる。雑誌も金が足りなくて買えないとかw 当人、チャラリャラしたところが全くなく、むしろ真面目で折り目正しいタイプだけに、落ちぶれたアイドル観がパねえwww まあこれでめげないし口も悪いし度胸もあって肝も座っている、とその逞しさが悲惨さを補って余りあるんですが。
でも、幸薄いタイプだよね。一応、見た目的には鳴々葉の方が薄幸そうと表現されているんですが、明らかに羽々姫の方が毎回ひどい目にあってるしw 極めつけは第四話。未だかつて、ギャグキャラでもないのに、特に強大な敵が襲ってきて特攻しなければならない絶体絶命の状況というわけでもないのに、人間爆弾にさせられた主人公はお目にかかった事ないよ!?
もう笑った笑った。
四話のしっちゃかめっちゃかさは極まってるよ、これ。とりあえず、作者は名探偵コ◯ンばっかりネタにしないで(面白かったけど)、ちゃんと自分がノベライズ書いた絶チルの方を弄りましょうよ(笑

非常に楽しかったので、次回以降も実に楽しみ。【ストライク・ザ・ブラッド】ともども楽しみなシリーズが出来たものです、うはうは。