フルメタル・パニック! アナザー2 (富士見ファンタジア文庫)

【フルメタル・パニック! アナザー 2】 大黒尚人/四季童子 富士見ファンタジア文庫

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家の借金返済のため、民間軍事会社D.O.M.S.へ所属することになった陣代高校3年生の市之瀬達哉。厳しい訓練を終え、日本へと戻り、いつもの高校生活が始まるはず、だったのだが―『仕事だ、タツヤ』ざわめく級友たちを尻目に教室へ乗り込んできたのは、金髪美少女で優秀なASオペレータでもあるアデリーナと、10歳の天才スナイパー・クララだった!またしても変質する達哉の日常。彼女たちが持ち込んできた新たな仕事とは、“蒼いASを運ぶこと”だけのはずが、輸送中のヘリにミサイルが撃ち込まれ―!?疾風怒涛のSFミリタリーアクション、垂直離陸。
原作者の賀東さんから、新人の大黒さんに執筆が移ってのフルメタ・アナザー第二弾。二作目もこの出来栄えなら偶然でもフロックでもない、こりゃあ本物だ。
面白い!!
こうしてみると、新シリーズと前作との違いの肝は、プロであるかそうでないかの立ち位置の違いなんでしょうな。プロの兵士か、インストラクターか。すなわち、人の血で自分の手を濡らしているか、否か。
物心ついた頃から兵士として戦場で生きることを余儀なくされてきた前作の主人公の宗介と違って、タツヤは帰る家もあるただの一般人。まだ後戻りできる余地のある場所に立っていて、そも人を殺す覚悟を持っているわけでもない。それでも、民間軍事会社という場所は戦場に片足を突っ込んでいるような職場でもあり、今のタツヤは境界線上に佇んでいると言ってもいい。本来、アグレッサーを務めるのが主だった任務であるD.O.M.S.では、一応その境界線上から外れる事無く努められる職場なはずであり、リーナやマオはだからこそタツヤをスカウトするのに躊躇いを抱かなかったのだし、マオが娘のクララがD.O.M.S.に出入りするのを黙認していたのであるが、どうもきな臭い陰謀がD.O.M.S.に絡んできた事でそうヌルいことも言っていられなくなってきた。
何だかんだ言っても民間軍事会社というのは戦場を商売のネタにしている仕事だ。建前はともかく、いざとなれば銃を手に取り人を殺すことを是とする兵士としての機能を求められる場面はどうしても出てくる。
タツヤの才能は、まさにそんな場面でこそ活かされるものだ。中東の王子との模擬戦を見ても、むしろインストラクターとしての業務よりも、実戦の方が向いている泥臭い才能なのだろう。だからこそ、もし敵兵を殺さなければ生き残れない場面に遭遇した時、タツヤは選択する暇も覚悟を決める余裕もなく、その才能を発揮して必要な犠牲を強る事になる。
二度、いや中東での模擬戦も含めれば三度か。タツヤの才能を目の当たりにして、リーナが今更のように抱いた恐れは、つまりかつて宗介がかなめに抱いたそれと同質のものだったりするんだろうなあ。違うのは、かなめはウィスパードとしての生まれから必然的に砲火の下をくぐらなければならない境遇だったのに対して、タツヤの場合は本来武器を取る必要など何処にもなかったのに、マオやリーナが引き込んでしまったところだろう。宗介はかなめを守るという使命感を持って、その任務とともに恐れを昇華出来たけれど、はたしてリーナはどうなのか。まだ決定的な場面に行きあっていないが故に、まだ迷走する余裕はあるけれども、それでも今回のような命のやり取りをする場面に遭遇している以上は、選択を迫る時がまだ早いわけでもない。さて、リーナの意思はどこに向かう? 厄介なのは、タツヤが自分の置かれている状況について、まるで無頓着で危機感がない所ではあるが。これはクララも同様のようだし、むしろ当事者たちの方が何も知らない無知な分、危機感を持ち認識を改めろ、と言う方が難しいのかもしれない。
それでも、タツヤは無意識なりに自分の立ち位置が平穏な日常から外れつつあることを認識しているようだけれど。夏休み明けて、普段通りの、しかしどこか関係に変化が見受けられる幼馴染みと親友の様子に動揺し、見慣れたはずの日常風景や学校での生活に現実感を欠いてしまう描写など、前作のフルメタの対比として捉えても面白いし、単体の心情描写としてみても丁寧に積み上げられていく物語においての大事な部分としてかなり強く意識して描かれていて、いいですねえ。

さて、メイン(?)とも言うべき、新世代のASたちの活躍。熱いなあ、これは熱い。特にサベージの後継機とか、胸熱じゃないですか。何気に前作でもサベージ、わりと厚遇されてましたもんね。あの武骨だけれど使い勝手のよい旧型量産機というのがまたいいんだわ。頑丈で壊れにくく平易で動かしやすい。スペック云々を抜きにして、ある意味兵器としての一つの到達点みたいなもんだもんなあ。
それはそれで良いものとしておいて、新型機いいなあ!! 燃えるなあ! 特に、日本独自の開発による新型機。それも、様々な思惑が転がった結果主人公の搭乗機となる最新鋭機。これまでのASとは明らかに開発コンセプトからひっくり返している特殊機能とか、なるほどこれ面白ぇ。しかも、サベージ系列とは真逆の、日本らしい異様な凝り性の国民性が出てますよ、うん。これは売れない(笑
しかしまあ、こんなASはなるほどイメージしたことなかったなあ。ただ、ゲームのロボットものだとむしろこっちのタイプの方がよく見かける気もするし、発想の死角をついた設計とも言えるのか。でもこれ、宗介とか嫌いそうだ。アーバレストでも文句言いまくってたし。

余談だが、クララの日本への馴染みっぷりには吹いた。魂の故郷呼ばわりしながらある意味エセっぽかった親父さんよりも、よほど下町江戸っ子として馴染んでた気がするぞ(笑

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