双子と幼なじみの四人殺し (GA文庫)

【双子と幼なじみの四人殺し】 森田陽一/saitom GA文庫

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 高校生、菱川迷悟は、双子の少女、新山一縷と朽縷と同居していた。美しい双子に翻弄されながら日常を送っていた迷悟だったが、ある日、三人は学校で飛び降り自殺の現場に遭遇する。
 その自殺に関して一縷は、突き落としたやつが見えたという。

 正義感の強い、いや、正義感が強過ぎる迷悟は、事件を傍観することができなかった。
――学校のアイドル、グッズ販売、そして交際を賭けた決闘……。愛憎が交錯する事件の果てにあるものは!?

 第3回GA文庫大賞《奨励賞》受賞の問題作が登場!

「幸せになる覚悟はある? 人を殺しておいてなお、幸せになりたいと思えるかってこと」
ああ、これは酷い。いっそ無残と言っていいほどの有様だ。この子達、もう一歩も前に進めなくなってる。朽縷がこぼした、自分たちはもうどこにも行けない、とまったままだ。という台詞は見事に彼らの関係を言い表している。その点、朽縷は自分たちの現状をよく承知しているんだろう。迷悟は、この度し難い愚か者はわかっていないようだが。自分が双子から離れた方があの二人は幸せになれるんじゃないか、などとチラリとでも頭の隅に思い浮かべてしまうあたり、こいつは何も理解していない。元凶のくせに、根源のくせに。そんな事をしたら、幸せすらも喪って破滅してしまうのに。自分たちがもう進んでも退いても別れても、もう奈落に落ちる断崖絶壁の上に居ることを全然わかっていない。他に行ける道があるだなんて考える愚か者だ。
哀れなことに、彼らの佇む断崖絶壁はいずれ崩れ去ってしまう場所でもある。脆くて頼りない小さな足場だ。もし上手くやり通せば、その足場は彼らが一生を終える程度まではもしかしたら持つかもしれないけれど、どうやら迷悟はどれだけ双子に指摘され叱られ懇願されても、自分の足元を省みることができない人間のようなので、たとえその場で停まり続けていても、いずれ自ら足場を踏み崩してしまうに違いない。
進んでも退いても別れても、そしてその場にとどまり続けてさえも、彼らは破滅から逃れられないのだ。そんな境遇を、この双子は絶望し呪い憎悪しながら幸福に満たされて諦めている。
この境遇は彼らがどうしようもなく幼く愚かな子供であったことから引き起こされた惨劇であり、今となってはもう彼らは子供のまま現実から逃避し続けるしか居られなくなってしまっている。どう足掻いても大人になることが出来なくなった、哀れで悲惨な、しかし自業自得の子供たちだ。すでに今は、末路である。
それらを踏まえて、もう一度彼らの名前を見返してみると、まさに三人の名前は体を表しているんだろう。その名前こそが、彼らそれぞれの在り方なのだろう。無残な話である。
その上で、敢えて言うなれば、彼ら三人は今、幸福なのだろう。本当の意味で未来への希望を失った状況は、逆手に見るなら今だけ見ていればいい、ということでもある。無論、多少の将来への算段はつけなきゃいけないから、先々のことも幾らか考えなきゃいけないだろうけど、それは作業に過ぎず心や思いを傾けなきゃいけないものでもない。ただただひたすら破滅するまでの今を享受し続けるだけでいい現実。破滅することさえ受け入れれば、既に自分たちが破滅してしまっている事さえ諦めれば、朽ちるまでの一時はきっと幸せに満たされているんだろう。
ちょうど、西尾維新【恋物語】を読み終えたところだったので、こんな言葉を置き添える事もできるけれど。
「……本人が幸せだと思っているから、幸せだということにはならないでしょう」(羽川翼)

知ったこっちゃあ、ないんですけどね。彼らにゃ共感も同情もわかないんだから。ほんとにどうでもいい。そのまま、そうやって溺れていけばいい。
尤も、この子らにとっても、全部知ったこっちゃないのかもしれませんがね。多かれ少なかれ、まわりで起こった破滅や惨劇は自分たちのせいにも関わらず、結局他人事のまま放り投げるんですから。この徹底した自分たちさえ良ければ、気持ちよければそれでよし、という無責任なガキの態度はいっそ清々しいくらいですけれど。清々しいくらい虫唾が走りますけれど。

とまあ、登場人物たちの好感度は底辺を突き抜けて嫌悪感で泥まみれなのですが、むしろ意図的にそういう風に描かれて拗らせている上で、話の筋立ての並べ方、進ませ方なんかを鑑みるなら、なかなか楽しめたんじゃないかと思います。不快だけれど、その不快さこそが面白かった、というようなお話。