豚は飛んでもただの豚? (MF文庫J)

【豚は飛んでもただの豚?】 涼木行/白身魚 MF文庫J

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元不良でこの春から高校生になる真宮逢人は、バイト先から逃走する食い逃げ犯を追いかけていた。逃げられそうになったところを、ポニーテールの美少女・藤室綾の純白の……――ではなく、ハイキックに助けられる。真宮はその日から、綾のことをなぜか忘れられずにいた。高校の入学式当日、真宮の席の目の前には、見覚えのあるポニーテールが揺れていて、思わぬ再会を果たす。さらに、バイト先には綾の妹・瑞姫までやってきて、新しい日々が始まる予感。そんなある日、真宮は瑞姫から「綾姉のこと気になるんでしょ?」と告げられ――。第7回新人賞〈最優秀賞〉受賞作・元不良の少年と美少女三姉妹が織り成す、青春×初恋×ぽんこつストーリー堂々開幕!!

青春、してますかーーー!!!

中盤からもう初々しいまでの青春っぷりに、ニヤニヤがとまらなくて表情筋が痛い! 今のこのご時世に、わざわざ新人の作品に白身魚さんを引っ張ってきた理由はよく分かった。今このご時世だからこそ、こんなド直球の青春モノにはこのイラストレーターさんを使いたくもなるってなものですわ。いやあ、ここまで清々しいストレートは滅多とないですよ。普通、ここまでド直球だと青臭さが鼻についたり、おじさん直視できませんみたいなこっ恥ずかしさが目に付くものですけれど、意外と人間関係の進展の転がし方がこなれていて、するすると引きこまれていったのも感心どころ。特にあらすじにも書かれている瑞姫が真宮に「綾姉のこと気になるんでしょ?」と告げた場面からの展開は、作中にのめり込むぐらいに一気に引きこまれました。この手の三角関係って、考えてみると別段珍しくもないものなんですけれど、流れが絶妙に自然すぎてびっくりするくらい新鮮で、当人たちも気づかないまま関係性がひっくり返ってしまっていた事に気づいたときには、ありきたりの展開だよなんて口が裂けてもいえないくらいにドキドキワクワクしてしまって、わっどうなるんだろう、これどうなっちゃうの!? と野次馬根性なのか何なのか、ともかく手に汗握って興奮状態。いやあなんかすみませんねえ。
うん、兎に角これバランスが絶妙なんですよね。ターニングポイントからこっち、どうもこれ、読者の感情移入の対象が真宮一人から瑞姫も含めたダブル主人公みたいな形になってるみたいだ。瑞姫が真宮の恋の応援をはじめた瞬間から、読者の注目は俄然と瑞姫の心境の方へとスライドするんですよね。彼女の真宮に対する純粋な好意や心配、ヤキモキとした気持ちがいつコロッと違うものへと変化するのか、そりゃもう気になって仕方なくて、あのぶっきら棒で人付き合い苦手そうで喋りも無骨で無愛想な真宮と瑞姫がどんどん仲良くなって親身になっていく様子にハラハラどきどきワクワクの連続。たまりませんよー。
この三角関係の味噌は、真宮とその初恋の相手である綾の関係がまんざらでもないって所なんでしょう。わりとこのパターンって、相手の女の子清楚でおとなしいタイプだったりするんだけれど、綾は悪友タイプで気遣い無用の姐御タイプ。とっつきにくい真宮とはかなり相性良さげなんですよね。ぶっちゃけ、序盤はもう二人、御似合いすぎて瑞姫たちなんか、入り込む余地ないんじゃないか、と思ってたくらい。最初は瑞姫のこと、完全に噛ませだと思ってたもんなあ。それが、瑞姫が見る見るうちに並んできたもんだから、テンションもあがりますよー。
真宮がふらふらせず、不器用に綾に恋しているというのも良かったかも。八方美人だと魅力も減じてしまいますしね。かと言って一途すぎると他の人が入り込む余地もありませんし。その点、初恋もこれまでしたことがなく、友達らしい友達もいなくて、人付き合いからして一から手取り足取り教えないといけないような初心者で下手くそもの、という主人公は傍で世話してあげないとどうしようもないって感じで介入の余地も大きいですしね。それに、不器用な分、この男、瑞姫に対して全幅の信頼を置いてしまってますし。
今のところ、瑞姫はまだ真宮のこと、三角関係に発展するような異性としての感情を抱いていませんし、純粋に応援してあげたいという気持ちで固まっているようですけれど、姉にあんな質問するあたり、実は意識し始めている、という可能性もナキニシモアラズ。
場合によっては、これから凄まじい修羅場もありそうな予感もありありで、正直ここでマテを食らわされたのは堪らんのですよ。欲求不満ですよ。綾が真宮の気持ちに気づき、瑞姫が恋に目覚めたとき、はたしてどういう関係が現出してしまうのか。ヤバイ、ワクワクが止まらない。すっごい続きが読みたい。
これは<最優秀賞>というのも納得の素晴らしい青春ものでした。もしこの一冊で行くところまで行ってたら文句なしに諸手を上げて大絶賛でしたよ、うん。ええい、焦らしおって焦らしおって(笑