機巧少女は傷つかない 7 (MF文庫J)

【機巧少女は傷つかない 7.Facing "Genuin Legends"】 海冬レイジ/るろお MF文庫J

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機巧魔術――それは魔術回路を内蔵する自動人形と、人形使いにより用いられる魔術。「誤解を恐れずに言えば、この夏、夜々と雷真は一線を超えました」「嘘……よね?」そんなわけで夏が終わり、〈迷宮の〉魔王グリゼルダのもとでの修行で実力を上げた雷真は、ロキやフレイとともに順当に夜会を勝ち進んでいた。だが、シャルが何者かの呪いを受け、人形サイズに小さくなってしまうという事件が起きる。一方で、学生総代にして、〈十三人〉の第三位、オルガ・サラディーンに迫られる雷真。そして、雷真とオルガの婚約が発表され――!? シンフォニック学園バトルアクション第7弾!
<赤羽雷真は「参謀」を手に入れた!!>
という訳で、まさかのアリス仲間入りである。ほぼ準黒幕と言っていいほどの立ち位置で、性格も歪みまくっている謀略家、という登場時には到底味方になるような、少なくともヒロインの一角に名乗りをあげるようなキャラだとは思いもよらなかったのが、バタバタとドミノが倒れるように状況が転がっていき、あれよあれよという間になんかヒロインらしい立ち位置に。一応、一度生死不明になった時に学長との微妙な関係や彼女自身瀬戸際に立たされているからこそ、享楽的退廃的な性格に歪むに任せている、みたいな描写がありましたから、その辺を色付けして補強すると、確かに一気にヒロインらしい境遇に。
しかし、アリスほどの陰謀家が味方になると頼もしいなあ。何気に雷真サイドって頭脳担当が一人も今まで居なかったんですよねー。夜々は論外中の論外として最初から除外するにしても、シャルもあれ、直情的で考え無しだし、フレイは天然であんまり考えないし、グリゼルダの御大は完全に脳筋だしw いろりには結構期待していた向きもあったのだけれど、彼女も従者タイプで忠言なんかはしてくれるにしても策を練るというタイプじゃありませんでしたしね、最近ボケてるしw 強いていうならキンバリー先生なんだが、あの人は立場上表向きは中立を維持しておかないと色々と困ったことになる人ですから、多くは期待できませんし。
実際、今まで状況の打開策や敵の陰謀を打ち破る為の策をひねり出してきたのは、雷真やロキたち自身だったりするのである。これは彼らの対応能力の優秀さを物語ってはいるのだけれど、あくまで対応力である以上どうしても受身で居続けなければならない、という不利はやはり無視できない。もはや物語も佳境に入ってきたところで、このアドバンテージの無さは厳しいものがあったんですよね。そう考えると、ここでアリスが味方になるというのは、タイミング的にもかなり大きなターニングポイントになるのかもしれません。
作中でも語られているように、雷真たちの協力関係は人数も増え、それぞれ個々の実力が急上昇してきたこともあって、一つの大きな勢力と見做されるようになってきたわけですし。それも、「夜会」に関するものというよりも、学園に絡む様々な国家や組織の中において、どの集団からも独立した一つの勢力として。面子を見渡しても、みんな元々居た集団の中から故あって離れてしまったハグレ者ばっかり、というのも面白いなあ。国も出自も立場もみんな違うのに、雷真に引き寄せられるように寄り集まり、一つのグループを形成しだしている。彼らが面白いのは、決して明確な枠組みを作って、雷真中心のチームを組んだわけじゃない所だったりする。別に仲間同士だと誓い合ったわけでもないし、機さえ整えばいつか戦いあう間柄だとも承知している。ものすごく曖昧で、形も何もなく、何となくでしか繋がっていない関係なのである。
それなのに、いざとなったときには、誰もが自然と集まってくる。助けて欲しいと願った時に、ちゃんと助けに来てくれる。事前に根回しをしたわけでも、協力を求めていたわけでもないのに、それどころか離間の策すら仕掛けられ、それぞれ襲撃を受けていたにも関わらず、いざ決戦という時にみんなが当たり前のように結集し、雷真がごく当然のように集まってきたみんなを背景に、アリスに手を差し伸べたシーンは、痺れました。あの、言葉を交わさずとも信頼で繋がっている、という自負が垣間見える雷真の佇まい、かっこ良かったですよ、うん。
あれは、性格曲がったアリスでも、自分もこの中に入りたい、と思わざるを得なかったのじゃないでしょうか。ただ一人忠実な従者だけを伴って孤独な戦いを続けていた彼女にとって、馴れ合いとは一線を画した、だけれど揺るぎない信頼で結ばれた彼らの姿は、憧憬を得るには十分だったでしょう。勿論、雷真の侠気に惚れてしまった、というのもあるでしょうけれど、アリスが此方側に転がってくれたのは雷真たちの関係に惹かれた、というのも結構大きかったんじゃないのかなあ。

此処に来て、そんな雷真たちが無視できない大きな勢力として確立したのは、こうして見るとやはり理由としてグリゼルダの存在が大きい。滅茶苦茶大きい。さすがは<迷宮>の魔王、というべきか。所詮は各世代の第一人者に過ぎない、などと彼女自身はのたまっていたけれど、実際戦っている姿を見ると桁違いに強い。もはやデタラメといっていいくらいにべらぼうに強い。そんな彼女が、絶対の味方として雷真の側に立ってくれているのだから、そりゃあ無視なんかできないよなあ。学園長とですら、ガチンコで相対できるんだもんなあ。

そんなグリゼルダの活躍と、思わぬアリスのヒロイン参入によって、何気にシャルが煽りを食った感があるぞ(苦笑 あのちっちゃくなるイベントは、メインヒロインとしてはめちゃくちゃ美味しいイベントだったはずなのに、イベントの強力さのわりにはあんまりインパクトを与えられないまま終わってしまったあたりに、シャルの苦境が伺える。ヒロインとしてキャラちゃんと立ってるし、いいツンデレさんだと思うんだけどなあ、どうも間が悪い。タイミングが悪い。アピール下手w 解呪の方法なんて、美味しいどころの話じゃなかったのになあ。
ちょうど、シャルの対抗馬、というかライバルになりそうなキャラも出てきましたし、レベルアップイベントも含めて、次の巻ではもっと目立って欲しいところである。下手すると、またぞろグリゼルダ先生とアリスが大暴れしそうだし。目立つ、という点に関しては夜々とかグリゼルダみたいな自家暴走キャラクターはやっぱ強いんだよなあw

海冬レイジ作品感想