0能者ミナト〈3〉 (メディアワークス文庫)

【0能者ミナト 3】 葉山透/kyo メディアワークス文庫

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 死なない死刑囚を殺して欲しい。まるで、矛盾しているかのような奇妙な依頼。
 九条湊が対面を果たした死刑囚は物静かで端整な面立ちの青年だった。だが、その本質を知れば慄然とする。不死者ゆえか、死を愛する殺戮者。しかも、あらゆる方法をもってしても蘇るというのだ。
 自分の死が楽しめないから殺すのだとうそぶく青年。いかなる怪異が不死をもたらしたのか、本当に殺すことはできないのか?
 異端者、湊の知性がその謎に挑む!

湊の悪口雑言って、どうも軽いというか悪意や下品さを無理やり込めようとして失敗しているみたいな感じがして、苦笑しか浮かんでこないんだよなあ。たまに垣間見せる誠実さや真摯さ、優しさのこもった言葉に比べると、借り物の言葉にしか聞こえないのだ。つまるところ、あんまり上手じゃない偽悪趣味の露悪主義者、と言う事なのだろう。尤も、その借り物の言葉をマシンガンのように吐き出すことに全く臆面も無いので、初対面などの慣れない人はやっぱり忌避感や嫌悪感をいだいてしまうのだろうけれど。実際生活態度はろくでなし以外の何者でもないですし。でも、逆に慣れさえすれば簡単に無視して流せる、とも言える。沙耶もユウキも、もういちいち反応しなくなってきてますもの。
そんな三人が挑むのは、不死者の死刑囚を殺して欲しい、という依頼。ぶっちゃけ、殺人依頼である。それを承知した途端に、策を弄してとっとと二人の子供たちを依頼から遠ざけようとするあたりに、湊の人品というのが自然と滲み出てしまうんですよね。だから、どうしてもこの人の態度には微苦笑が浮かんでしまうのである。まあ、逆転して真面目で清廉な態度をとられても、それはそれで困ってしまうのでしょうけど。沙耶もあれで、湊が真人間になったら最初は喜んでも、そのうち居心地悪くなって混乱しだしそうだ。彼女、微妙にダメ人間属性っぽいし。
さて、肝心の死刑囚の不死の原因は、これはまったく予想外の内容で。いや、このシリーズ、怪異の原因についてはいつもちゃんとオカルト側に寄っているので、完全に予想外というわけじゃなかったんだが、ここまでスケールの大きい話だとは思わなかった。そんでもって、このシリーズの面白さは、原因が完全にオカルトだったとしても、その解決、退治方法は科学的な方法に徹しているところなんですよね。不死に纏わるルールを科学的に解釈解体した結果の医学的処置には、もうビックリ感嘆である。そんな発想で覆せるのか!!

二話での夢魔の話も、解決法から夢魔の正体の解体まで、その発想はなかった! のオンパレード。これは、人が夢を見るという現象に対する研究が事細かに進んでいる現代ならではの、しかし科学信奉者にもオカルト従事者にも決して辿りつけない発想であり、技術の利用法である。うーん、めちゃくちゃ面白い!
しかし、沙耶にとって理沙子という叔母はそういう対象だったのか。人間、純粋に尊敬しているように見えても腹の中、或いは無意識の領域では色々と思うことはあるんだなあ。まあ、沙耶の性格からして、理沙子みたいなタイプは確かに理想像からちょっとどころじゃなく外れてるのは確かだ。それに理沙子がまったく気づいていなかったというのは笑い話でありますけど。ご愁傷様というべきか、それなりに自業自得というべきか。いやでも、沙耶ってやっぱりダメ人間とかアクが強すぎるタイプの人の方が相性良さそうなんで、沙耶の理想像は置いておいて、今の理沙子が一番沙耶と良い関係で居られそうなので、結局今のままが一番なんでしょう。さすがに理沙子、キャラ変えるには薹が立ってしまってますしw

チラッと、湊と理沙子、孝元たちの間に過去に大きなナニカがあった、という件についに触れたこともあり、そろそろ過去の事件にスポットが当たるのかしら、と期待してみたり。まあ、理沙子と湊がいい関係だった、というのは今回の話を見るかぎり、全然無さそうでしたけど。いやあ、まったく似合わないし、この二人w

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