ひきこもりの彼女は神なのです。4 (HJ文庫)

【ひきこもりの彼女は神なのです。4】  すえばしけん/みえはる HJ文庫

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友人の細屋に誘われ、初等部の一泊二日の野外教室に付き添うことなった天人。のどかな小旅行のつもりだったが、初日から『人ならざるもの』の仕業と思われる不思議な事件が次々と発生。天人は同行した梨玖やコウタと解明に挑むことに!
一方、紅南寮で留守番をする亜夜花は、天人と梨玖がそろって外泊することに強い危機感を覚えるが……!?

あの人の超勝ち組っぷりに、わたくしテンションが有頂天であります。
毎回ながら、思わぬ所から意表を突いてくるなあ。さすがにあの人が人外だとは気が付かなかった。多分、一人だけだったらもうちょっと疑ってたと思うだけに、カモフラージュは万全だったと言えるのだろう。
しかし、それ以上に度肝を抜かれたのはその正体である。いやいやいやいや。こればっかりは似合わないにも程がある。どんな悪神や邪神よりも、よりにもよってあんたがそれをやっているというのはあかんやろう。ないわー、と爆笑してしまった。ちょっとでも自分の行状を思い出せば、とてもじゃないがそういう立場に立てんだろうに。
まあ世知辛い現代に至って、神代の頃のような振る舞いはできないと反省したのかもしれないが。やったらやったで犯罪どころの話じゃないし、その後が更に恐い。そりゃもう怖いなんてものじゃない。血の雨が降るどころじゃないもんなあ、きっと。あの悋気を、果たしてニュートラルハウスの面々で祓えるかどうか。たとえてとらさんでも無理じゃにゃーか、と思わせるものがあるだけに、ちゃんと大人しくしていて欲しいものである。

さて、本編はと言うと……普通ラブコメって対象の男女を接触させてその化学反応を楽しむもののはずなんだが、亜夜花は一人で放っておいても一人でジタバタと面白い反応したおしてくれるのである。もうすこし落ち着け!! 梨玖が大ウケしているのも納得の、実に恋する乙女がバーストした可愛い反応なのだ。天人に初めて送ったメールの内容にはもう笑った笑った。一生懸命なのはわかるのだけれど、幾ら何でも一杯一杯すぎるだろうに。仮にも黄泉の女王にして北の大神の一人である女神さまが、こんなヤワヤワの初心でいいんだろうか。いくらなんでも天人のこと好きすぎでしょう、これ(苦笑
挙句の行動が、もう苦笑を通り越して頭を抱えてしまいそうなアレな代物で。そのハチャメチャさは、確かに人間の範疇を通り越してます、はい。落ち着け神様。ってか、ここ最近、あなたタイトル無視しすぎです。引きこもりなんじゃなかったのかい!

とまあ、亜夜花が知らないところでジタバタと勝手に七転八倒しているなど知るべくもない天人は、引率者の一人として参加した野外教室活動で、頻繁に見舞われるトラブルに掛かり切り。そのうち、どうやらそれらのトラブルが野外教室に参加したメンバーの誰かが引き起こしている内部犯ではないか、という疑いが浮かび上がってきて……、と軽くミステリーの要素も含んだ真相究明のお話になっていくのだが、これがまた二段重の三段重ねの多段式の急展開が待ち受けていて、物の見事に作者の手のひらの上を転がされてしまった。冒頭の犯人との対峙をまったくもって上手いこと使われた。本当にこのシリーズと来たら、登場人物のキャラクターが綺麗にこちらの予想や想像、イメージを上回ってくる。というか、裏や真を見せる前にきっちり表のイメージが焼き付けられているのだろう。その表のイメージの焼き付け方が丁寧なものだから、それが全部だとどうしても思い込んじゃうんですよね。別の側面、あるいは裏の真相があるなどと思い浮かべもしないものだから、その時が来た時にかなりのインパクトを受けることになってしまう。既にシリーズも四巻目に至っているのだから、身構えておいて然るべきなんだけどなあ……身構えさせてくれない巧さに毎回唸らせられるしかない。

思えば、ここに出てくる神様たちは、今人間の中に混じって人の姿を模して暮らしてはいるものの、本当の意味で人間たちと交わっている神様というのは本当に少数なのだろう。当人たちにその気がないわけではないのだ、きっと。人間を好きだといって憚らない彼らの多くは、積極的に人に近づき、人間を観察し、その様子を伺っている。でも、長年まったく違うステージから人間を見守り続けた彼らは、たとえ同じ地面の上に立ったとしてもその頃のスタンスが抜け落ちないのだ。そして、人間たちもまた、神々がこんなに間近から自分たちを見ていることを知らない。
だから、どれだけ近くに寄り添っても、人と神の価値観は交わらない。交錯しない。相互理解とは、それこそ相互に理解し合おうという意思が無ければ成し得ないものなのだから。
でも、だからこそお互いが理解し合おうとした時は、簡単に交われるはずなのだ。天人が「人間」として、「神」である彼の価値観を理解しようとし、同時に「人間」の価値観を伝えようとしたことが、彼の蒙を啓いたように。
対話とは、かのように人と神をつなげて同じ地平に立ち兆しを芽生えさせるほどに、偉大なものなのだなあ、とちょっと感動してしまった。

しかし、人と神が理解し合える時が来ても、同じくして人と人の間にすら理解し得ない断絶が存在することを突きつけて見せてくるあたりに、この作品の凄みと面白さが焼き付いているんじゃないだろうか。
あの本心には、背筋が泡立ちましたよ。それはもう、狂信の領域だ。いったいこれ、どこに着地点を見つけるつもりなんだ? やばい、これホントに面白いよ!!

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