レイセン  File4:サマーウォー (角川スニーカー文庫)

【レイセン File4:サマーウォー】  林トモアキ/上田夢人 角川スニーカー文庫

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お祓い専門の神霊班といえど、まぎれもなく役所の一部、お盆休みは与えられていた。しかし、社交性もなく、ろくな趣味も持たず、いまだひきこもり留年中のヒデオは、いつものごとくアパートで怠惰な時間を過ごすのみ。ところがある日、女性からかかってきた一本の電話が、ヒデオの人生に新たな契機をもたらすのだった―精霊、巫女、警察官、自衛官、ついでにAIの美少女も登場。ヒデオの長くて熱過ぎる、ひと夏のサバイバルが始まる。
お祓いが専門だとむしろお盆は忙しそうなものなのだが、さすがはお役所様である。いいじゃないか、休みは家でゴロゴロしてたって。引きこもりニートの端くれとしては、たとえ主人公だろうと、話がまったく盛り上がらなかろうが食料の買い出し以外家から一歩も出ないのが礼儀だろうに。この礼儀知らずめ。なに、女に誘われてほいほい温泉旅行なぞに旅立ってしまうんだ。見損なったぜ、ヒキニートの風上にも置けない男である。
という訳で、某映画のタイトルみたいなサブタイトルに、あははははと笑ってたら、中身も某映画みたいな展開に突入してAHAHAHAHA、と笑うしかない御座候。まあかの映画が田舎と電脳空間を舞台にしたものだったのに対して、こちらも電脳戦対決と見せかけてウィル子が盛大にやらかしてくれやがって、それでいいのか!? というある意味映画と真逆の有様に。まあ、ウイルスの方が主人公サイドという時点で逆も逆なのですが。しかし、ウィル子は伊達に電神という神様になったわけじゃなかったんだな。なんか、初めて彼女が神様に昇ったのを実感したハチャメチャな展開だった。さすがにあれは、以前のようなウイルスの時では叶わなかったはず。

しかし、今回はじめて神殺し四家の最後の一つ。既に業を失伝してしまったという天白の家が描かれましたけれど、意外なほどアットホームな家で驚きましたね。まあ、花果菜やアカネが何だかんだと温厚で良い人たちだったのを思えば意外ではないのかもしれませんが。でも天白というと、最初に【お・り・が・み】で出てきた木島キョウジが何しろイカレ狂ったテロリストだっただけに、第一印象が悪かったんですよ。
天白に限らず、こうして振り返ってみると神殺し四家は何だかんだと牧歌的……と、貴瀬家や名古屋河家を口が裂けてもそうは言えんかw でもまあ、大きなゴタゴタが無くなった今の四家はみんなわりと家庭も落ち着いていて平穏なんですよねえ。平和っちゃ平和なんだろうなあ。これも鈴蘭が頑張ったおかげなんでしょうが。

ハーレムハーレム言われますが、ヒデオ、実はちゃんと男の友達も事件を経るたびにゲットしているのです。さり気なく交友関係が偉いことになってる気もしますが。鈴蘭とはまた別の方向で着々と人脈築いているよなあ、ヒデオも。
これまでヒデオに対して胡乱な目で見ていた桃条さんも、見る目が変わってきたようですし。まだまだ本気じゃないでしょうが。その点、花果菜はわりと今回の一件を通じてマジになってきた気がするぞ。

そんな夏戦争の後日譚にて、妹来襲……妹!!? え? マジでそんなの居たの!? 実家から見捨てられて勘当同然の扱いだったヒデオでしたが、家族構成で妹居るって情報ありましたっけ?
しかも、普通の妹だー! このシリーズで普通の人を見るのって初めてじゃないのか? そんな普通の妹と、たまたま偶然同じタイミングでヒデオの家に遊びに来た四人の女性たち。
修羅場であるww
ヒデオも折角ニートを脱して、公務員になれたというのに、ちゃんと就職できました、と家族に伝えられないのは辛いよなあ。それが妹たちのために自分で選んだ結果だとしても。個人的には、ここで真実を伝えるかどうか悩むヒデオに、ノアレがきちんと真面目にアドバイスを送っていたのが印象的でした。ノアレって、普段はふざけているし、ヒデオがピンチに陥っても大概傍観者的な立場で事態を楽しんでいるのを広言して憚らないのだけれど、ヒデオが本気で困ったときや真剣に悩んでいるときには茶化さずに助言してくれたり、示唆をくれるのですよね。それを見ると、ノアレって結構ヒデオに親身になってるよなあ、と思うのです。まあこれって、ノアレに限らず彼に接する人は多かれ少なかれ、ヒデオに対して親身になっちゃうようですが。
今回だって、ヒデオのあの放言、絶対あとで全員にシバカれるかと思ってたのに、あっさり酒の席での発言と誰も咎めず水に流しちゃったくらいですし。あれは、みんなが大人だったと言われればそれまでなんですが、好いた惚れたを抜きにして、今回のみんなの対応はヒデオに親身で優しかったなあ、となんだかほんわかしてしまいました。

そう言えば、ついにタイトルの【レイセン】の意味が作中に出てきましたね。って、前にも出てましたっけ? 覚えてないや。ともあれ、レイセンの成立がこのシリーズの一区切りになるんでしょうか。もうしばらく続きそうな気もしますが。

林トモアキ作品感想