プリンセスハーツ 大いなる愛をきみに贈ろうの巻 (ルルル文庫)

【プリンセスハーツ 大いなる愛をきみに贈ろうの巻】  高殿円/明咲トウル ルルル文庫

Amazon

『ルシードはアジェンセン大公の血を引いていない』その秘密を知ってなお、支持すると言ったはずのリドリスの裏切りに、意気消沈するルシード。一方ジルは、ジョングー=ガーグと共にテジムに捕らえられてしまっていた…。王座奪取へ邁進するルシードに贈られる、リドリスの、メリルローズの、…そしてジルの贈り物。全ての謎が明かされる中、ふたりの運命は!?王宮ロマン、グランド・フィナーレ。
前巻の感想で、血縁関係が入り組みすぎてもうわけがわからない、助けてーー、と悲鳴をあげたら、ちゃんと最後の巻で家系図をつけてくれました。ありがとうございます。
って、改めてこうして整理された血縁関係見ると……見ても訳わからん!! ちょっとこれ、入り組みすぎだろう!! しかもこれは血縁だけなので、さらに個々の人間関係まで絡めると、本気で網目状の関係図になってくる。高殿さんは、よくまあこれ把握して書いてるよなあ。自分の作品とは言え、前後不覚に陥らないのだろうか。高殿さんは、このプリンセスハーツだけにとどまらず、銃姫世界の前史からバルビザンデの宝冠に至るパルメニア全史を掌握していらっしゃるのですから、プリハの1シリーズくらいどうって事ないのかもしれませんけどね。でも、この家系図見ると絶対吹くよ。もうこれ、どうしてこうなった、という凄まじい代物だもんなあ。その「どうしてこうなった」というすべての事情が、この最終巻で殆どすべて種明かしされているので、この幾多の偶然と思惑と必然が解けないほどに入り組んだ真相を御覧じろ。ほんと、頭痛くなるから。誰か個人の、或いはひとつの組織の思惑が強く作用しているならば、それを黒幕として固定し、その思惑に対して抵抗することで悲劇と立ち向かうことが可能なのだけれど、このお話のように無数の想いが複雑に絡み合ったが故に生まれてしまった時代の流れというものには、明確な悪意や目的のない分、逆に抗いがたいものなのだ。それも、功利や損得の計算に基づいた流れではなく、個々の思いが深く刻み込まれた感情主体の流れともなればなおさらに。
だからこそ、過去から押し寄せてくる因果の嵐に負けることなく、自分たち自身の想いを失わずに貫き通して幸せを掴んだ人たちの強さには、敬意を抱く。その幸せは奇跡なのだろう。でも、奇跡とは待っているだけでは飛び込んでくるものじゃないのですから……ハクラン王は待ってたら飛び込んできたような気もするけど!!
そんな中で一番無茶苦茶やってたのって、ナンセ公爵夫妻だよなあ。てっきりこの二人は、自分たちの想い人との関係をちゃんとして別れるのだと思ってたのに、まさか結婚したまま子供作るとは。特にケイカ。こっちはもっと揉めると思ってたのに、オース王子とそんな事になってしまうなんて。もうねー、夫妻両方が子供産むって何サ(笑
でも、ふたりとも幸せそうで良かったよ。

そんな風に現世での幸せをてに入れた人たちがいるのと同時に、幸せの形を別のところに求めた人たちも。リドリスは死ぬしかなかったにしても、一人で境遇を満喫しすぎだ。あれじゃあルシードが可哀想だよ。生きたとしても、ルシードやジルがどれほど庇ってくれたとしても、正当なアジェンセン唯一の後継者が生き残っていたら、どうしても権力闘争の焦点になって、兄のパルメニア統治のウィークポイントとなってしまう。最良は、やはりリドリスが思っていたように、幽閉されたまま消えるように死ぬことだったのだろう。リドリスが牢から出され、兄弟が和解して子供時代を取り戻すように仲良く過ごしてしまったからこそ、リドリスの裏切りと死はルシードをさらに傷つける事になってしまったのだから。でも、この交流がなければリドリスの愛情は伝わらなかったわけだから、ルシードはどれだけ辛くても悲しくても、リドリスと一時でも一緒に過ごせた事を尊ぶのだろう。本当なら、やっぱり生きて欲しかったんだろうけどなあ。辛いよなあ。
そして、もう一人の愛に殉じた人、メリルローズ。一時はすべての陰謀の黒幕か、ヤンデレか、と疑ったこの人でしたが、この人はこの人で純粋にルシードを一途に愛しただけだったんだなあ。ルシードの記憶にあった、一心に彼を愛してくれた少女の姿が、嘘でも偽りでもない本当の姿だったことに、悲恋とは言えホッとした。
その最期もまた、ルシードの腕の中で逝けたのなら幸せだったのだろう。ただその時を待ち望んで、現世にしがみついていたようなものなのですから。願いが叶ったのなら、幸せだったのだろう。

様々な因果の荒波を乗り越えて、ついに本当の夫婦になれたルシードとジル。感動のシーンだったはずなのに、一夜明けたあとのドタバタに……脱力。マシアスよりもあの場面はリュリュカだよ。そりゃ、これまでずっとルシードとジルのどうしようもない夫婦関係に一番胸を痛め、心労をためていたのはリュリュカさんですけど……あの雄叫びは年頃の女性としてはどうなんでしょう。オッサンか、あんた(爆笑
ジルに課せられた運命と、ルシードとの別れ。二人の愛の行方もまた悲恋に終わるのか、と息を飲んで見守ったエピローグの、想像以上の幸せな結末に、そしてこの大河ロマンスの完結に心震わせ感動に万感の吐息をこぼしながら、あとがきに目を通そうとページを開いた。そして目に飛び込んできたあとがきの最初の一文……

うおい!!!

あまりにも身も蓋もないシリーズ全体の要約に、もう息が出来なくなるほど爆笑。さっきまでの感動を返せーー!! なんか納得しちゃったじゃないか! ああ、そういう話だったんだ、って刻み込まれてしまったじゃないか。
それでも、感動の結末でした。感慨深いです。感無量です。終わったなー。終わっちゃったなあ。
大満足です、ご馳走様。

高殿円作品感想