戦国妖狐 8 (BLADE COMICS)

【戦国妖狐 8】  水上悟志 ブレイドコミックス

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実のところこの漫画、舞台は戦国期日本風の異世界だと思ってた。何しろ、元の日本を想起させるモノがこれっぽっちも出て来なかったんだもん。まさか、タイトル通りに本当に日本の戦国時代だったとは!

黒龍に月湖が攫われようとした時に真介と現れたのは、第一期のヒロインだったたま!! たまさん、久しぶり! と思ってしまうのは、7巻からの主人公交代と新ヒロイン月湖のインパクトがそれだけ大きかったからなのだろう。
しかし、たまさんはたまさんでつかの間見ない間に成長してしまわれて……色っぽい!? 真介と酒かっ食らってる際の御姿なんぞ、ずいぶんと艶がにじみ出ていて、なんかドキドキしてしまったぞな。そんな真介とたまの再会で、ようやく千夜がキオクを失った際の詳しい出来事が明らかに。
灼岩を目覚めさせてあげるよ、なんてあの山神様はまた軽々しく言ってくれるじゃないか。そりゃ、良い事なんですけどね。喜ばしい事なんですけどね。そんな提案をしてきたことを、燃え尽き症候群に陥っていた真介に対する発破と取るべきか、将又無神経と受け取るべきか。何しろ神様だからなあ。

そして月湖は天使である!!

誰にも否定はさせない。この子、マジで天使だよ。天使さまだよ!! 身も心も綺麗すぎて、地べたに平服してしまいそうだ。故意ではなく、村を守るための戦いだったとはいえ、自分と狂い神との戦いに月湖の父親を巻き込んで殺してしまった事を悔やみ続けている千夜に対して、心の底からほほ笑みを浮かべ、千夜の手を握って感謝の言葉を捧げ、その上で千夜は何も悪くないと許してくれる少女を、千夜をいい子だと全肯定してくれるような子を、天使と言わずしてなんという。
おれなんかずっと何かを憎んで生きてきたっつーのに、こいつらときたら年端もいかねえくせに他者を全く責めねえ
という真介の想いには共感を抱かざるをえない。こんな小さな子供たちが、自身を苛む過酷な境遇と真っ向から向き合って一生懸命生きている姿は、ただただ眩しいばかりだ。
それでも、試練は続く。
この力のために起きる戦いなのに、戦わないためにこの力が要る。
この矛盾!!

自身の力に振り回され、また呼び水となって災いを招く事に苦しむ千夜。
あたしが守るって、戦いたくない千夜も守るって、い、言ったのに。
あたしじゃ、よ、弱い、から。
力が、ないから。
力が……欲しい…。
そんな千夜を守ってあげたいと願いながら、何も出来ない月湖。彼らが背負う運命はあまりにも重たく、ともすれば二人共がもう一歩も前に進めなくなってしまうほどのものだ。そんな重荷を少しでも軽くし、二人の少年少女に未来を指し示すちゃんとした大人が周りにいるのは、きっと幸いなことなのだろう。真介は、よくやってるよ。あんたが居なかったら、そもそも千夜は潰されてただろうし、既に記憶を喪う前に死んでしまっていたはず。そして月湖もまた自分の内に宿った想いを燻らせたまま、擦り切れてしまっていたに違いない。真介は二人の保護者として、庇護者として十分なほど千夜と月湖を守ってる。
それでも、一人では限界があったところに、新しい出会いとして現れたもう一人の大人が、千夜と月湖に自分を肯定するための勇気と道を与えてくれるのだ。
その人こそ、初代暴れん坊将軍! 足利幕府第十三代征夷大将軍。人呼んで【剣豪将軍】足利義輝!!
大樹公……義輝様? あ、あれ? おおおお?
な、なんぞこれ。
て、テルさんがーーーー、変な人だーーーーぁ!!
すごく、変な人だーーーぁ!!

しかし、凄い。物凄い人だ。やっべえ、この将軍さま超ありだよ。かっけえよ。鳥の人だヨ!?
闇の世界にも深く通じたこの人、どうやら只人にはあらざる様子。自らの死すら予定調和のように語るテルさん、色々な意味でとてもじゃないが死にそうにないんだが、此れ如何に?

戦わないことで人間になりたいと願う千夜。そんな千夜を化物のような力を持ったただの人間だ、と諭してくれた将軍様。それは、千夜の苦悩を晴らす一筋の光となっても、戦いが彼に付き纏う現状は何一つ変わらない。
徐々に記憶を取り戻しつつある千夜、その記憶は血塗られた殺戮の記憶でもあり、自身が正真正銘の化物として生きてきた記憶でもある。それで、記憶に向き合わなければ、自分のうちの千魔と向き合わなければ、戦わなければ、一番大切な人・月湖を守れない。月湖のためにも人間になりたい、戦いたくないと思いながら、月湖を守るためには戦いは避けられない、自分がバケモノだと肯定しなければならないという矛盾を前に、千夜の決断は……。
なんかもう、二部に入ってから常に千夜に疑問と選択がつきつけられ続けているので、ある意味ずっと盛り上がりっぱなしなんですよね。面白くて仕方がない。此処に来て本当に水上悟志本領発揮って感じです。燃える。


水上悟志作品感想