回る回る運命の輪回る 2―ビター・スイート・ビター (電撃文庫 な)

【回る回る運命の輪回る 2.ビター・スイート・ビター】 波乃歌/pun2 電撃文庫

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「あなた、もうすぐ死ぬわ」
謎の少女の訪れが、運命を告げる──。


 バレンタイン直前。浩平は、自分をチョコ作りに駆り出そうとする女の子たちから逃げ回る日々を送っていた。
 そんな折、ノアを《ソサエティ》にいたころの幼馴染みで《運命読み》候補生のココが訪れる。でも彼女は、浩平に学校で突然死を告げた少女と同じ顔をしていた……。
 謎の少女の訪れとともに、運命の輪は再び回り出す──ハートフル・フェイト・ストーリー、第2弾!
 その物語は、きっと「優しさ」で出来ているのでした。
 一巻に引き続き、心温まるハートフルストーリーで、癒されたなあ。この物語はただ温かいだけじゃないんですよね。コートの襟を立てて身を震わせる寒さの中でとる暖のような、沁み入る温かさなのです。大仰ではない、普通の人が普通に持っている優しさが一つ一つ積み重なって、辛さや寂しさを和ませ、心の痛みや苦しい決断によって傷ついた心身を癒してくれる。その癒しの熱が、ポッと胸に小さな火を灯すようにして、温かさを感じさせてくれるのでしょう。
 定められた運命によって彩られた人生の道行は、決して優しいものではありません。だからこそ、人の優しさが染み入ってくる。また、運命という大きな枠組みを扱いながらも、決して日常のヒトコマ一コマを蔑ろにせず、地に足の着いた日々のシーンを重視しているのもまた大事なところ。その一コマ一コマは、長い人生の中ではほんの一瞬の出来事、大いなる運命の流れの中では舞い散る木の葉のようなものなのでしょう。だけれど、より高い位置から俯瞰しているからこそ、そうした小さな一場面がかけがえなく映るのです。
 例えば、ココの将来を決定づける《運命読み》の宿命に比べて、同時進行として描かれる悠木佐奈の初恋は、言うなれば、ちょっと特殊だけれど誰にでも起こり得る平凡なイベントで、長い人生の中での繰り返される一コマに過ぎません。ですが、佐奈が抱える恋への悩み、苦しみ、足掻いて落ち込んで喜んで突き落とされて、逃げ出して、それでももう一度がんばろうと奮起して……そんな心の向きはいつだって真剣で一途で本気であり、それはココが抱える深刻な苦悩とまったく等価として描かれる。誰かを想うことに、価値の軽重や貴賎などありはしないのだと言わんばかりに。だからこそ、佐奈の真剣さはクライマックスで心折れたココに届くことになるのです。
 そんな風に、日常の中のごくありふれた想いが、大事に大事に描かれているからこそ、最後のココの決断がより尊く感じられるのではないでしょうか。ココが選んだ道というのは、普通に考えれば過酷すぎるものです。今、彼女が持ち得ているものの殆ど全てを投げ捨てるものです。ともすれば、悲劇のヒロインとして主人公に助けだされかねない境遇でした。しかしその運命を、ココは恐れ怯えて一度は逃げ出し絶望すら抱きながらも、最後に良い運命として受け入れます。自分が幸せになれる選択だと、誰かの為じゃなく、世界のためでもなく、自分の幸福の為に選ぶのです。
 彼女は、幸せになったのでしょうか。この作品で大切に描かれている穏やかな日常からすると、彼女が受け入れた運命は、悲劇であり不幸だと言われても仕方のないもののはずです。でも、ココが残していった余韻は寂しさや哀しさを眩しながらも、とても温かく、良かったねという言葉を送りたくなるものでした。それが、とても不思議な感じがして、でも素敵だと想うんです。
 ココの選択も、五十嵐くんのエゴも、日常のありふれた風景も何も否定せず、貴賎の上下をつけずに受け入れて、その過程で生まれこぼれ落ちていく痛みや苦しみを、優しさでくるんで癒していく。それは簡単なようでとても難しいことのはず。でも、その難しさを感じさせない、大きな包容力を感じさせる、ホロホロと淡く温かいお話でした。
 うん、一作目に引き続き二作目でもここまで書いてくれたら、もうどこまでも追いかけますよ。このまま、自分独自の武器を磨いていって欲しい。

 しかし、ノアはもう自分が工作員というのをさっぱり忘れているんじゃないだろうか。完全に妹ポジションのマスコットキャラに落ち着いてしまって……可愛いなあ、もう!

1巻感想