人生 (ガガガ文庫)

【人生】  川岸殴魚/ななせめるち ガガガ文庫

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人生ハジマタ\(^o^)/
九文学園第二新聞部に所属する赤松勇樹は、入部早々に部長の二階堂彩香から、人生相談コーナーの担当を命じられる。生徒たちから寄せられた悩みに答えるのは、理系女子の遠藤梨乃、文系女子の九条ふみ、体育会系の鈴木いくみの三人。三者三様の意見はいつもまとまらずに、とりあえず実践してみることになるのだが……。友達、恋愛、勉強、性癖、将来のこと。あなたのありふれた悩みにバッチリお答え! 超☆感性・人生相談開始!! 「邪神大沼」シリーズで多くの読者を爆笑の渦に巻き込んだ驚異の新人! 川岸殴魚の最新作!!

これはもう、タイトルの勝利。昨今、周りで流行っているからというだけで何も考えずに適当に思いつきでつけているようにしか見えない長文タイトルが飛び交う中で、ただ一言

人生

である。
とんでもにゃーインパクトだった。「な、なんじゃこりゃーー!?」と、度肝を抜かれた。何しろ「人生」である。一言にしても、他の言葉だったならここまで衝撃的じゃあなかっただろう。だがしかし「人生」である。ただの二文字。しかし、その二文字には人間の一生涯が意味として込められているのだ。そのなんと遠大で重厚なことだろう。この小説の内容がとぼけたギャグ風味だという事実ですら、妙味と思えてくる。これで本気で人生について哲学的に語る内容だったら、それはそれで「えー」とドン引きしていたに違いない。寡黙で重厚なタイトルの内容がこれだからこそ、より一層「人生」というタイトルに味わいが出ているのだ。
というわけで、発売予定の中にこのタイトルを見かけた瞬間、これは買わなければ!! という強迫観念に近い購入衝動を引き起こされてしまったわけで、これほど見事にタイトルだけで釣り上がられてしまうなど、久しくない経験でした。というか、本当にタイトルだけで買ったるで、と決めてしまった事なんてあったっけか。もうね、「中身が全然つまらなくても全然後悔しないぜ!」とまで思ってしまいましたから、参りました。幸いにも、普通に買ってたら後悔してた、なんて詰まらない作品ではなく、ちゃんと普通に面白ったので助かりましたけど。

さて、肝心の【人生】の内容はというと、粗筋にもあるとおりマイナー部活である第二新聞部が企画した人生相談にまつわるお話。人生相談と言っても、それこそ人生を左右するような重要な案件を真剣に討議して深くその相談者の人生に関わっていくような重厚な物語ではもちろん無く、寄せられた相談のお手紙に、相談員として召集された理系・文系・体育会系の三人の少女たちが好き勝手言い合って、出てきたはちゃめちゃな答えを企画の責任者に任命された主人公が実に無難に取りまとめる、というただそれだけのお話である。
三人の少女たちのスットコドッコイな討論とそこから導き出されるちょっとマテと言いたくなる返答もさることながら、あの三者三様のどうしようもない答えをまったく角の立たない無難で扁平な内容に取りまとめる主人公もそれなりに只者じゃないですよね、これ。まさに官僚的。ある意味将来有望、というよりも将来安泰、な少年です。
企画としてはむしろ三人娘の答えをそのまま掲載した方が大ウケにウケる気もするけれど。第二、と付いているようにどうせマイナーな部活なんだから、名前を売って伝説を残した方がいいんじゃないか、部長の性格からしてもソッチの方が喜びそうだし。

人生相談は、お題とも言うべき相談のお手紙をネタにして三人の少女たちの間で繰り広げられるガールズトーク(???)がメインとなる。それぞれ真面目に答えているのはわかるのだけれど、まあ三人が三人とも人間的に癖がありすぎる、というかマトモの範疇から大幅に逸脱した稀代の人材ばかりなので、話はしょっぱなからあさっての方向へとすっ飛んでいく。この三人、よくよく見ていると一番マトモなのはコミュ力最低で友達いない理系の遠藤梨乃だったりするのが何気に恐ろしい。この娘はまだ対人スキルが経験値不足で根が人見知りで臆病という気質もあって、ついつい得意分野の合理的判断に拘ってしまって一般常識を置き去りにしてしまっている、という変人である理由がわかる。これについては、普通に人との関わり合いを増やし経験値を貯めていけば自然と解消できそうな気配が濃厚に見受けられるんですね。実際、作品も後半に行くと硬直した思考もややほぐれて、主人公相手にカワイイ反応見せてくれたりしていますし。
ただし、他の二人は手遅れだ。
残る二人。ふみといくみに関しては、もうこれは生来からの性格で、矯正不可能のこの人達の根っからの在り方が今のこのキャラクターみたいなので、これはもうどうなっても変わらないな、うん。殆ど気侭な感性と、動物的脊髄反射だけで生きているこの二人が、梨乃みたくボッチじゃない、というのも面白可笑しい世相である。
選りにも選って何故この二人を人生相談員に選んだ!?
まあふたりとも人間としてアレすぎるので、ヒロインポディションは梨乃が一人で独占してしまってるんですけどね。というか、ふみといくみが梨乃を弄って、それを主人公がまあまあととりなす振りをして実は何もしてない、というお話ですよね、これ?