B.A.D. 7 繭墨は人形の悲しみをかえりみない (ファミ通文庫)

【B.A.D.  7.繭墨は人形の悲しみをかえりみない】綾里けいし/kona ファミ通文庫

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「君は、知らないと繰り返しただけだ。それだけさ」

「どうせ、退屈だ。暇潰しにはなるだろうさ」そう言い繭墨あざかは依頼を受けた。
弟の死の真相を知りたいと依頼人は語った。さらには弟の恋人が、彼の髑髏をもって逃げたのだという。
同じ日、僕は事務所内に隠れていた少女を発見する。
みすぼらしい格好で繭墨のチョコレートを食い散らかした幼い少女は僕に無邪気な笑顔をむけてくる。
その腕に、乾いた髑髏を抱きしめながら――残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー第7弾!
結局……小田桐くんの行動がことごとく裏目に出て、物事が悪い方悪い方、どころじゃなく最悪のルートへと突入してしまう。それは狐の画策があったからというだけではなく、そもそも小田桐くんの運命みたいなものだということが、狐である繭墨あさとが本当に何もしていないにも関わらず、ついに最悪の展開を迎えてしまった今回の件で明らかになってしまった。今回の仕掛け人であるところの「彼女」のやり方というのは、狐のように綿密で細部に至るまで行き届いた芸術的なまでの奈落落としとは程遠いやり方だ。雑で杜撰で運任せ。最初から上手くいかないことを前提として、ピンポイントで標的を狙うのではなく、適当に数をばら撒きそのどれかに引っかかれば御の字、というシロモノだ。
あろうことか、小田桐くんは良かれと思い、考えうる最悪の選択をとり続ける。そして、おそらく仕掛け人の思惑すらも超えたであろう最悪の結果を招き寄せることになってしまった。
本当に、最悪の結果を迎えてしまった。
ほんとになんで、この人はやることなす事こんなに裏目にでるんだ!? はっきり言って今回については小田桐くん、特に悪手を選んではいなかったと思うんですよ。その時点では、どの判断も選択も行動も、後々こんな事になる要因とは思えなかった。ひるがおを雄介に任せた事だって、雄介の刻々と悪化し続ける精神を思えば悪いことじゃなかった。でも結果としてみれば、そのことごとくが最悪の結末へと繋がっているのだから始末に悪い。そのどれもが、起こったあとでなければ悔やむことすら出来ない選択なのだ。まだ、狐の時は彼の思惑や謀を見抜けていれば、と思うことも出来たのに、今回に関してはそれも出来ない。
小田桐くんは誰も救えない。他人を食い潰すしか出来ない人間だ。
それはとうの昔に覚悟した歴然とした事実だったのだけれど、それでも打ちのめされずにはイられない真実だ。そして、その真理は雄介をすらもターゲットから逃さないのか。彼をこんな事にしてしまったのは、小田桐くんが緩やかに破滅していく彼を、助けようとしたからなのか?
だとしたら、あまりにもあまりにも救いがない。救いようがない。
雄介はもうダメだ。もうどうしようもない、どうしようもなくなってしまった。完全に終わってしまった。これまで何とか持ちこたえてきたのに、辛うじて此方側に踏みとどまってきたのに。ここまで来て、ここまで来て、こんな事になってしまうなんて。酷い。酷いよ。ひどすぎる。
ヤバい、泣けてきた。かわいそうだ。雄介が、かわいそうだ。小田桐くんが、まず嘆くでも悲しむでも打ちひしがれるでもなく「よりにもよって!」と憤りにも似た絶望を抱いたのもよくわかる。選りにも選って、選りにも選ってだ。
狐の章は6巻で終わり、ここからはじまるのは雄介の章だという。これが、はじまりだというのだ。この終わりが、始まりだというのである。
途方に、暮れそうだ。
雄介に救いを、と願うことすらもうできそうにない。もう、全部終ってしまったのだから。もう、取り返しはつかないのだから。だから、これからあとはもうきっと、

ただの惨劇だ。


こうなってしまうと、合間に挟まれた『神』にまつわる少喜劇が、何とも滑稽な形になってくる。この短編を見ていると、何気にこの人シリアスやサイコホラー、ダークなオカルトものだけじゃなく、ドタバタのコメディもレベル高いんじゃないかと思えてくる。もし次回作が出て、まるで方向性が違ったとしてもこれなら素直に期待を募らすことが出来る。
ってか、普段から常に超然としている繭さんのキャラ崩壊が見れるのはこの『神』語りだけだからw
なんかもう、物凄い繭さんを見てしまった。二度と見られない繭さんである。挿絵がまたグッドジョブすぎるw

シリーズ感想