勇者には勝てない (電撃文庫)

【勇者には勝てない】 来田志郎/refeia 電撃文庫

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生まれ変わって反省してます! 勇者さま、本当にごめんなさい!!

 魔王に次ぐ力を持ち、異世界で人々を恐怖のどん底に突き落としていた三人の魔将たち。だが、勇者にあっさりと破れ去り、今は人間として生まれ変わって平凡な高校生活を送っていた。
 そんな彼らの前に、勇者の証“光の波動”を放つ転校生が現れる。自分たちを始末しにここまで追ってきたのか!と怯える三人組。これは土下座して許してもらうしかないと覚悟するが……。
 しかし、彼らは知らなかった。その後に勇者より恐ろしい魔王様の“闇の波動”が迫っていることを! 勝てない宿命を背負う、中ボスたちのファンタジック学園コメディ。
魔王さまの現世での現況が、完全に予想の埒外で、思わず笑ってしまいました。これはうまく騙されたなあ。あらすじやカラー口絵で抜粋されて描かれたワンシーンにミスリードされてしまったということでしょう。
にしても、仮にも魔王軍の三魔将と謳われたほどの大幹部が、転生した先でここまで見事な三下属性を獲得してしまっているとは、情けないを通り越して笑えてくる。いやマジで、平和な日本人の生活に馴染んでしまって心改めたのは良いとしても、一応魔王軍という世界を征服する勢いだった一大組織のエライ人だったのですから、人生経験も豊富なわけじゃないですか。一般人として学生生活を歩むにしても、それなりに経験を生かして一廉の人物として身を立てる事は決して出来ないことではなかったはずなのに、魔族から人間に転生したことで中身も一緒にスケールダウンしてしまったのか、繰り返しになるがホントに見事な三下っぷりである。これで根性まで腐ってたら目も当てられないところだったのだけれど、かつてのような超常の力を失い、無力な人間になり果てたからこそ、譲れない一線で無い力を振り絞って踏ん張る根性を見せてくれたのが気持よかったなあ。
自分たちがどれだけ前世で非道で残虐な真似をしてきたか、普通の人間の価値観を手に入れたからこそ理解できるのであり、贖罪というわけではないものの罪悪感みたいなものはこびり着いて離れない。最初は自分たちの身の可愛さゆえに、こそこそと立ち回っていた彼ら三馬鹿が、いつの間にか一人の少女を守るために、奪われようとしている子を助けるために、自分たちの身の危険も顧みずに頑張る姿は、三下なのにかっこ良かったですw
魔王さまも、何だかんだと昔よりも今の三人を頼りにしてるっぽかったのが微笑ましいのか苦笑するべきなのか。頼りというよりも、信頼しているというべきか。でないと、自分があれほど大切にしているものを、彼らに一時的にだろうと任せようとはしないでしょうしね。当人にも、あいつらに頼れ、と言っているくらいですし。
まあおかげで、これからも三馬鹿はろくでもない目に合い続けること決定みたいで、ご愁傷さまですw

主人公となる巨人族の生まれ変わりである鉄次郎は、恋愛という概念の無かった前世から人間に生まれ変わって、初めて異性相手にときめいて恋愛感情というものを知る、という初々しい展開がひっそりと仕込まれているのだけれど、勇者が常時放っている光の波動が近づくだけで元魔族の三馬鹿たちにダメージを与えるもので、触れ合うとそれがさらにダメージ悪化して最悪死にかねない、という状態になってしまっているおかげで……これ恋愛、発展しようがないんじゃないか。か、可哀想過ぎる。結構いい雰囲気なのに。
方法は無くはないんだけれど、それは別の意味で死にかねない、殺されかねないからなあ。姉妹丼とかナイわーw
ちなみに、三馬鹿の僅かに残った異能って、何の役にも立たないと卑下するほど悪いもんじゃないと思うんだけどなあ。特に鉄次郎の能力って、普通にプロ野球選手のピッチャーあたりで大成できるんじゃないですか? 体力なくて運動音痴というところがネックですけれど、そんなハンデもろともしない能力ですし。勿体ない。まあ当人は勉強の方が好きなようですし、余計なお世話でしょうけれど。