明日から俺らがやってきた (電撃文庫)

【明日から俺らがやってきた】 高樹凛/ぎん 電撃文庫

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“俺”がいっぱいって……誰得だよっ! 大人の“俺ら”とおくる未来的・青春ラブコメ登場!

 推薦入学して女の子にモテようか、それとも良い職に就くために上を目指して大学受験しようか──。青春もなく進路に悩む俺、高校3年生・桜井真人の前に未来から“俺”が時間を超えてやってきた! しかも二人も!! チャラ男とガリ勉の桜井真人……って本当に俺かよ!? 同じく進路に悩む『氷の女王』こと高瀬涼と仲良くなった俺はこれからある決断をすることになるが……。
 ちょっと大人になった“俺ら”とおくる未来系・青春ラブコメ!(……なのか!?)
ちょっ、大学受験という人生の分岐点を経ているとは言え、たった6年で同じ人間がキャラ変わりすぎじゃね!? というくらい、まったく別人になっている6年後の自分。それだけ自分のあり方に幅があるということは、可能性の広さを物語っているのだけれど、結局どの選択をした所で最終的に人生行き詰ってしまう、という事実を未来の自分から教えられるのって、思春期の精神が不安定でさらに受験戦争で弱っている時なのに、普通心折れるよね。どうせ、何をやってもダメだって言うんだから。
そこですぐに考えることを投げ出さずにまだ悩み続けるあたりに、この主人公の非凡さが伺える。あきらめない、というのはそれだけで得難い才能とも言えるのだ。もっとも、それ以外の才能にあんまり長けていないからこそ、何やってもなかなか上手く行かないんだろうけれど。
でも、無能ではないんですよね。才能がないからこそ、人一倍の努力でそれを補うことがこの子には出来る。不断の努力を積み重ねることで、小さな可能性を幾らでも大きくしていける。それこそが、彼の持つ最大の可能性なわけだ。
でもそれって、なかなか自分では実感できない事なんですよね。この子の場合は特に、努力で目標を叶えた結果の先に常に次の壁であり躓きが待っているから、自分が報われている実感を得られない。達成感が届かない。果たして自分の先に可能性が広がっているのか、未来があるのか、希望が残っているのか、それを信じることはなかなかもって難しい。
結局、未来から来た自分たちは、自分の可能性を信じることができなくなってしまった奴らでもあるわけだ。でも、過去に戻って見たものは、最後まであきらめず頑張り抜く自分。どれだけの困難を前にしても、倒れるまで自らを追い込んで足掻こうとする自分。そう、過去とはいえ、それは他人ではなく紛れも無く自分自身の姿なわけです。自分はここまでやれる人間だったんだ、ということを他でもない、昔の自分自身が示してくれているわけです。
これほど、勇気づけられることはないでしょう。自分の可能性を、ここまで客観的かつ実感を持って見れることなんてありませんからね。
全く以て青臭く、愚直で若々しい、こっ恥ずかしい青春しているお話でしたけれど、実に心擽られる良い物語でした。そう、24歳なんて、まだまだ人生これからですよ。
と、感想書いてたら高校生の主人公よりも、むしろ未来から来た連中の側に立って文章を書いている自分に気づいて、やや苦笑気味。若いっていいねえ。