わたしと男子と思春期妄想の彼女たち 4 リア充ですが何か? (ファミ通文庫)

【わたしと男子と思春期妄想の彼女たち 4.リア充ですが何か?】 やのゆい/みやびあきの ファミ通文庫

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お別れの時が近づいたみたい――。

ついに中学最終学年! にもかかわらず、人生で初めて高柳君と違うクラスになってしまい意気消沈のあすみ。
利沙や佐島、リサたち妄想少女のおかげで元気を取り戻しつつあったある日、高柳君が落とした手帳から、あのライブ少女の写真が滑り落ちてきた。
衝撃のあまり涙を流してしまうあすみだが、佐島から突然の大告白! 
ますます混乱のあすみの前に、さらに本物のライブ少女まで現れて! 
大親友リサの存在も懸けた恋の行方は!? 恋と涙と前進の最終巻!
ついに、主人公であるあすみの恋がメインとなる最終巻。
……どんな風に感想を書いていいのか、かなり悩みながら読了後の数日間を過ごしていました。真剣なんですよ、あすみをはじめとした登場人物たちみんなが、そして彼らの真剣な恋を描きだす物語もまた、一切の手抜きなく思春期の少年少女の心の中を導きだそうと渾身の力を振り絞っているのが伝わってくる。
そう、ビリビリと肌が粟立つほどの本気を目の当たりにした時の感動に、ちょっと呆然としていたのかもしれない。こうした感動というのは、解体して自分の言葉に変換するのって、何かタイミングみたいなものが必要なんです。タイミングさえあれば、スルスルと紐がほどけていくように形になっていくんだけれど、合わなければ逆にからみ合ってしまって言葉にならない溢れそうな想いの原液として留まってしまう。
素晴らしいと感じれば感じるほどに、焦燥に駆られてしまうのです。
物凄く端的に、そう「傑作!」と一言で言い切れてしまえばどれだけ簡単なのでしょう。でも、それで済むならいちいちこんな感想の記事なんて書く必要はないんですよね。自分がその時感じた想いを書きとどめ、いつでも見返して思い起こすことが出来るように、そしてひとりでも多くの人に作品を手にとって貰えるように、その為にこそ書く文章なのに、モドカシイなあ。
と、いつの間にか愚痴になってしまっていた。そんなことはどうでもいいのだ。書くべきは、あすみたちの事である。
年を経た大人たちからすれば、まだ中学生に過ぎないあすみたちの恋なんてものは、子供のままごと遊びの延長でしか無い幼い恋にしか見えないけれど、当人たちにとってはこれまでの人生とこれからの人生のすべてを賭けた、本当に大変で真剣で本気な想いの闘いなのだということは、前回までの感想でも力説した部分である。
その上で、敢えて言うならば、やっぱり彼らの恋は未だ幼い恋だったのだろう。彼らの抱いていた恋心はコレ以上無く本気で真剣であったとしても、夢の世界の甘いお菓子でしかなかったのだ。それを現実のものとして受け止めようとした時、彼女たちは恋というものが甘く楽しいだけのものなどではなく、苦く醜くみっともなくブサイクで全然楽しくなんて無い、苦しくて辛くて嫌になってしまいそうなものだという事実を知る事になる。
恋は、素敵なだけのものじゃなく、恋する相手の人も、恋をしている自分の心も、綺麗で無垢なままじゃ居られない事を思い知らされる。相手の現実の姿に幻滅し、自分の心の醜さを見せつけられる。それが、恋をするということの現実だという事を思い知るのだ。
そして、その諸々の痛みの先に、果たして本当の想いが見つけられるのか。彼女たちがこの巻で繰り広げる闘いとは、まさにそんな泥にまみれた痛みと懊悩にのたうち回る、地べたに這いつくばるような自分との闘いだった。
でもね、そうやって悩み苦しみ痛みに震えながらも必死に手を伸ばし、どん底から這いずり上がろうとする姿こそが、キラキラと輝いて見えるのだ。目の当たりにした自分の愚かさ、醜さに屈さずに立ち上がり、自分以外の大切な人たちに手を差し伸べ、その手を掴んで離さないように握り締めるその姿の、なんて綺麗なことだろう。
もう、彼らの恋を幼いおままごとの恋だとは口が裂けても言えないだろう。彼らは現実のほろ苦さを味わい、心の脆さというものを実感し、苦しみに喘ぎながら、お互いに支え合い、逃げ出すこと無く、夢の世界の向こう側へと踏み出して、地に足をつけてなお、純粋さを失わなかったのだ。大切な物を、何一つ見失わなかった。
息をするのも苦しそうな、前のも後ろにも進めなくなってしまった行き止まりの感覚が読んでいる此方まで伝わってきそうなほどの苦悩に苛まれながら、友情も、愛情も、何一つ欠けさせずに、おとなになるための階段を昇ったのだ。絶賛に値する。尊崇に値する。
貴方達は、最高だ。眩しいくらいに、素敵で、粋で、かっこ良かった。
素敵でした。

高柳くんの心を占めてしまった謎のライブ少女の正体にはぶったまげ、さらにその予想外過ぎるキャラクターに仰天させられたものですが、あとの展開を思えば彼女の存在はまさに状況をひっくり返す超弩級の爆弾となったわけで、ただの恋のライバル出現、みたいな軽い威力の爆発などで収まらなかった点は、構成としても瞠目に値する。それどころじゃ済まなかったもんなあ。
でも、ライブ少女、京子さんのフリーダムなくらいのアグレッシブさは、べらぼうに魅力的でしたよ。傍迷惑極まりないのも確かでしたけれど、何気に結構あすみと性格似た部分あったよね。男前なところとかw
それ以上に全開で輝いていたのは、恋敵にも関わらず全力であすみを応援してくれた利沙でしょう。あすみが何度も何度も自分が男だったら絶対に交際を申し込む、プロポーズも辞さない! とまでは言ってないか。でも、それに近い告白をしてしまうほどにかっこ良くて、頼もしくて、男前で……彼女が男だったら、高柳くんも相手にならんかったんじゃないだろうか。佐島くんも相当だったけどさ。
でも、何よりも粋でおバカで素敵な魅力にあふれていたキャラクターこそが、主人公のあすみでした。京子さんも感心していましたが、この子の発想というか会話の受け答えのセンスは常人の斜め上を言っていて、キレキレなんですよね。この青春恋愛譚が重たくドロドロになりすぎず、常に一定のコミカルさを保ち、クスクスと笑わせてくれる和やかさを失わなかったのは、あすみの持つ独特の雰囲気が作品全体を底支えしていたからでしょう。
ライトノベルの女主人公って、平均して魅力高いのですけれど、このあすみはその中でも可笑しみを持って心を鷲掴みにしてくれる大人物でありました。

軽妙でセンスたっぷりのコミカルな文章に、微塵も茶化したり誤魔化したりしない真剣で本気な物語。振り返ってみれば、尋常でない読み応えのある作品であり、しかしスルスルと滑るように読むことの出来る読みやすい作品でもありました。何より、面白かった。楽しかった。そして、感動させられました。
読み終えた時の満足感たるや、溜息も出ないほどでした。
つまりは、文句なしに傑作だったということです。
この人の作品は、今後も最優先で読みたいです。是非に、新しいシリーズを出して欲しいところです。できうるならば、また女性の主人公でw

シリーズ感想