狼と香辛料 7 (電撃コミックス)

【狼と香辛料 7】 小梅けいと/原作:支倉凍砂 電撃コミックス

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原作は第四巻のエピソード。異教の神々の伝承を知るという修道士を訪ねて訪れた村テレオで起こった事件に巻き込まれる事になるロレンスとホロ。ということで、あの村の教会の助祭であるエルサとの出会いである。
この漫画版では大胆にエルサ視点で物語を進行させることで、いわゆる余所者であり途中から状況に巻き込まれる事になったロレンスの視点ではなかなかわかりにくかった村の実情や、エルサたちの内面の移ろいを克明に映しだす事に成功している。
だからだろうか。
何故、本編のラスト近くでこのエルサが再び登場し、ホロとロレンスの関係と将来を決定づける役割を担う事になったのか、なぜ彼女でなくてはならなかったのかが、すごく理解できた気がする。
14巻にて、エルサはこれまで誰も明確に指摘せず、ホロとロレンス当人たちすらも、いや当人たちだからこそか、言葉にせず曖昧にしてきた二人の関係を快刀乱麻を断つようにあからさまにして、何をグダグダやってるんだ、という意味のことをバッサリと言ってくれる事になるのです。その時は、よくぞ言ってくれた、と喝采をあげたものでした。事実、彼女の指摘から二人の関係は明らかに変化、というよりも裏表なくはっきりしたものとなり、二人の未来は共通のものとなって歩を揃えていくことになる、いわば物語の結末を決定づけてくれた最大の功労者にエルサはなったのでした。
でも、なんで彼女だったのか、当時は結構不思議だったんですよね。それまでホロとロレンスは様々な人と出会って知己を広げていきましたし、なぜ選りにも選って四巻以降10巻近く音沙汰がなかった彼女をわざわざ再登場させ、あんな大事な役割を与えたのか。
でも、この話を見て、誰よりもエルサこそがあの言葉を二人に告げるのは相応しかったのだろう、と納得デキました。
彼女がつねづね抱いてきた自分の神と信仰への疑問。ひいては義父フランツ司祭の在り方、信仰への向き合い方への疑問へとつながり、義父への愛情と尊敬との鬩ぎ合いの中で、彼女がずっと抱えてきた漠然とした不安と不満を吹き払ってくれたものこそ、ホロとロレンスの関係でした。この二人の姿を通して、フランツがエルサに語っていた信仰への向き合い方とはいったい何だったのかが理解でき、彼女はこれからも神の使徒として生きていける信仰への確信が得られ、自分が愛するエヴァンと共に生きていく事が間違いではなく素晴らしいものだと信じる事ができたわけです。
エルサが見たあの瞬間のホロとロレンスこそ、まさに愛の形そのものだった。

それなのに、久々に会った二人がグダグダと自分たちで自分たちの真実を否定し目を逸らしているのを目の当たりにしたら、良い意味で空気を読まず、正しいことを正しいと間違っている事を間違ってると言わずには居られない性格のエルサが、一喝せずには居られなかったのでしょう。逆に言えば、ホロとロレンスの間に往還する愛の正しさを誰よりも確信し、認め、崇めていた者ことエルサその人であり、他の誰でもない彼女こそがそれを当人たちに訴えるに相応しい人物だったに違いないのです。

まだテレオの村での事件の解決編はこれからですけれど、この漫画版の展開はこの時点で充分素晴らしいものでしたよ。エルサの物語、ヨイツを襲った顛末を知ったホロの動揺とそれを見守るロレンスのカップルの話としても単体で絶賛に値すると思います。その上で、本編における先々に起こる展開にまで関連付けて思いを馳せる事ができる素晴らしい演出と心情描写。

凄いなあ。

シリーズ感想