シンマと世界と嫁フラグ 〜びっくりするほどハーレムです〜 (HJ文庫)

【シンマと世界と嫁フラグ 〜びっくりするほどハーレムです〜】 空埜一樹/にろ HJ文庫

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男子高校生シンマに突如として芽ばえた《異能》――それは神にも悪魔にもなれる【世界を一変させうる強力無比な力】だった! しかし庶民的なシンマは力にも世界にも興味がなく「よく出来た嫁と幸せな家庭を築く」という夢を抱きながら普通に生きると宣言。すると次の日から、複数の美少女がシンマの前に現れ、彼の嫁の座を狙って争い始め……!?

はいもうこれは、アリスお嬢の一人勝ちですね! ただし、ヒロインとしてではなく芸人としてだけどな!!
というわけで、タカビーお嬢様という仕様にも関わらず自分に自信がなくて即座にピヨる自爆系弱キャラという美味しすぎるキャラな上に、二人の取り巻きの女の子が応援支援する振りをして煽るわ弄るわディスるわ落とすわ止めを刺すわで、お前らお嬢で遊んでるだろう(笑)というフリーダムっぷり。主人公のクールなのか生暖かいのか微妙に判別が難しいツッコミも相まって、アリスが出てくるとそれだけで漫才劇場に早変わりするという、ヒロインとしてそれでいいのか!? とさらにツッコミたくなるような目立ちっぷり。お陰でもう一人の帰ってきた幼馴染ヒロインが完全に放置プレイで場に入れてもらえずぷぎゃーとなる、山崎邦正とか出川とかあっち系の芸人扱いに、って結局こちらも芸人かw オマケに、幼馴染はオワコン! と言わんばかりに自爆する残念仕様。まあ過去しか繋がりがなく現在まで空白がある幼馴染はポディションがメインヒロインでない限り元々かなり苦しい部類なので、むしろそれをネタにした方が芸人としては大成するかもしれません。味噌っかすだけどな。
メインヒロインと思しき紅刃もひたすら天然マイペースなので、ハーレムと言っても色恋の甘酸っぱい雰囲気はあんまりなくって、むしろ大ボケ小ボケがひたすら打掛られるコント時空が繰り広げられる話である。そもそも、主人公のシンマからして少々のことでは小揺るぎも動じもしないマイペースの鬼である。いやもっと慌てなさいよ、という場面ですら飄々と流してしまうのだから、むしろヒロインたちは暴走自爆するくらいで丁度いい塩梅になっている。こいつの場合、クールというんじゃなくて湿気たお煎餅だよなあ。とは言え、彼の安定志向は信念に結果……というよりも達観の末の生き様みたいなものなのである。それは彼なりにたどり着いた人生の結論であり、それをしみったれてるというのはおこがましい。それに、信念や思想は覆せても、生き様というのはなかなか変えられるもんじゃないのよね。

そんなこんなで、神にも悪魔にもなれる力を手に入れた少年は、異能の力に振り回される事も現れた女の子たちに振り回されることもなく、これはこれで彼なりに平穏でのんびりとした日常を過ごしていくお話でした。人間気にしなければ、大概の事は戯言で片付いてしまうのでありますのこと。
ただ、過去にこれらの異能を身につけた人たちは、力に引きずられて人格まで変化していったという話なので、再生と破壊の両方の力を宿してしまった彼にも何らかの影響が出てくるはずで、その辺りをどうこのマイペースな主人公が自然に無視してスルーして流していってしまうかが、今後の展開のポイントになるんだろうなあ……って、異能さんもこれ、侵食するつもりでイイようにこき使われ倒されそうな勢いだな、うん。

刺しデレという殺人鬼ヒロインというインパクト大の作品でデビューした空埜一樹さんの新シリーズ。本格的に掛け合いのボケツッコミで勝負に来たコメディーよりのラブコメということで注目していましたけれど、思いの外ノリにウケてしまった。特にアリスが笑った笑ったw アホ可愛い残念娘だ。

空埜一樹作品感想