クロス×レガリア  吸血姫の護りかた (角川スニーカー文庫)

【クロス×レガリア 吸血姫の護りかた】 三田誠/ゆーげん 角川スニーカー文庫

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中華街の片隅で2人は出会った。少年の名は戌見馳郎、トラブル解決を1回千円で請け負う学生ボディガード。少女の名はナタ、自称仙人。ナタを護ると決めた馳郎の、平和な日常はわずか一週間あまりで終わりを告げる。人の氣を喰らう吸血鬼、“鬼仙”と呼ばれる者たちの襲撃。彼らの目的は、鬼仙を無力化できる最強最悪の兵器―ナタを狩ることだった。「レンタルマギカ」の三田誠が描く圧倒的スケールの新シリーズ、開幕。

うははは、こりゃあいい。なんて主人公だ。ある意味、三田誠プロデュースの主人公らしい在り方で方向性としては【レンタル・マギカ】のお兄ちゃん社長の側で、目的を遂げるための手段の問わなさについてはイツキと同等なんだけれど、それにしても突き抜けてる!! 正直、主人公が本気になったあとのやり方には心底ぶったまげた。主人公が真の力に覚醒! という一般的パターンから想起された展開からするならば文字通り180度ベクトルが違ったんだから、あっけに取られてぽかーんと口を大開にしてしまったのも仕方がない。思わず馳郎と相対した敵さんとシンクロして度肝を抜かれてしまったと言っていい。
いやはや、ぶっ飛んでるにも程がある。一周回って大笑いして、あまりの痛快さに拍手喝采打ち上げてしまったよ。偉業の存在や異能の者たちに対して、少数を圧する大勢にして地上最大の繁栄を成立させた人類の力を、種としての力、集団としての力として語られるケースはいくつも見てきたけれど、それをこんな形で濫用するパターンは全く以て初めて見た!!
絶体絶命の閉塞を打ち破る展開は、いずれの場合も胸のすくようなカタルシスを感じるものだけれど、ここまで予想外のやり方でぶち破られると、不意を突かれた分通常よりもぶっ飛んだ気持ちにさせられて、いやはやたまらんね!!
しかし、この馳郎の持つ『真の力』は、滅茶苦茶に扱いが難しすぎて、よくまあ作者もこんなのに手を出したもんだと感心させられる。馳郎自身が直面する『力』の制御、取り扱いの困難さのみならず、物語を進行させる上でもこの『力』はいろいろな意味で便利すぎて、ピーキーすぎるんですよね。作者自身としてもこれは「魔手」すぎる力なんですよね。もっとも、この『力』の扱いについては【レンタルマギカ】を手がけた三田さんなら猛毒とせず劇薬として存分に使い倒してくれるに違いないという信頼感には揺るぎないものがございますが。

そう言えば、【レンタルマギカ】と言えば、あっちのあとがきで本作の紹介をしていた時に匂わせていたのでもしかして、と思っていましたが、何気にあちらと世界観、共通している?
本作に登場するのは主に「鬼仙」という仙人の一種なのですけれど、どうやらそれとは別に協会派の魔法使いなる存在も実在しているらしく、これって間違いなく【レンタルマギカ】サイドですよね? 今のところ何の関係もないとはいえ、世界観が共通しているならばいずれ何らかの形でクロスしてくることも可能性として準備できるわけで、なんだかワクワクしてきますよ!?
そんでもって、面白いのは世界観が共通しているにも関わらずあちらが純然とした魔法の世界に対して、此方のお話は中華の仙術道術であり現代科学と近未来技術のSFの混合/ハイブリッドの世界なんですよ。
ナタたち鬼仙たちが使う鬼宝という仙術兵器は、まさに「宝貝」そのもの。西遊記や封神演義で見たことのある仙具が当たり前のように飛び交うさまは、中華ファンタジー愛好者としては胸熱くなるばかり。
そもそも!! ヒロインのナタからして、その名前の由来となったのはあの中壇元帥・哪吒太子その人である。マジで本物の最終兵器じゃないかい!! こんな名前つけるって鬼仙たちがどれだけ本気でリーサルウェポンのつもりで作ったか理解できるというものである。「乾坤圏」とか「火尖槍」などを、小説の、しかも現代ファンタジーで見受ける機会に恵まれるとは、テンションもあがるわ!
その一方で主人公が身に付けている特殊な服の名前が「カエアン」……これ、SF者ならば即座に気がつくんじゃないでしょうか。ちなみに、私はまだこれ未読なんだよなあ。いや、多分ほんとに子供の頃に読んだかもしれないんだが、全然覚えてなかったw
しかし、わざわざこれに「カエアン」とか名前を付けるあたりに、終盤の展開も相まって、本作が中華ファンタジーとSFの並列混在を然としたお話にしてやるぜ、という強烈な意思表示を感じて、これまたテンションあがってしまいました。それが【レンタルマギカ】とつながっているとなると、さらにワクワクしてくるじゃないですか♪
仙人や吸血鬼の在り方が向こうと結構食い違って言うのもまた興味深い。
ってか、これが吸血鬼モノだったんですよね。全然そんなイメージなかったよ。三田さんが吸血鬼モノを書くとこうなるのか。ってか、血は吸わないもんなあ。ほっぺたペロペロ舐めてただけじゃないか。ぺろぺろぺろ。
ナタはかわいいなあ……。ゆーげんさんのイラストはなかなかに凶悪である。ヒロイン衆も揺るぎないメインのナタに加えて、蓮花に妹ちゃんと強力なのが一揃。蓮花あたりは明らかにヒロインとして強キャラなので、まさかアデリシアみたいにメインを食っちゃうことはなかろうけれど、三田さんはデレさせた後が滅茶苦茶可愛く書きなさるので、色々な意味で戦々恐々ですよ。
という訳で、期待の新シリーズは期待通りにスタートでした。

三田誠作品感想