ゴールデンタイム〈4〉裏腹なるdon’t look back (電撃文庫)

【ゴールデンタイム 4.裏腹なるdon’t look back】 竹宮ゆゆこ/駒都えーじ 電撃文庫

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多田万里よ何処へゆく。
竹宮ゆゆこ&駒都えーじが贈る青春ラブコメ、第4弾!


 とある深夜、束の間だけかつての記憶が戻り、当時抱えていた想いそのままにリンダのもとへ駆けつけようとして見事にこけた多田万里。
 翌朝。目を覚ました万里を待っていたのは唇を腫らし超絶ぶさいくになった己の面だった。その上、発熱までして香子をはじめみんなの看病を受けることになるが、なぜかその流れで香子と夏に海に行く話が持ち上がり!?
 先立つものは金! とバイトをしようとする万里だが、香子からは一緒にいる時間が減ると大反対され──。
 かつての自分が好きだったリンダといまの自分が好きな香子。二人の狭間で揺れる、万里の心の旅路はまだ半ば?
もはや全然ラブコメじゃないですよ、これ。むしろ、ここまで重たい話になってしまうと、コメディが浮いてきてしまうんじゃないだろうか、と思ってしまうのは竹宮さんのギャグセンスに私がまったくウケないから、という可能性もあるので強く主張はデキないんだけれど。
それでも、これだけ精神ザクザクと切り刻むようなヘヴィーな話になるとなあ……。
何がキツいって、万里も香子もリンダも誰も悪くないんですよね、この状況において。強いていうなら万里が原因になってるのはなってるんだけれど、彼が事故にあって記憶喪失になってしまった事は全然彼の責任じゃないものなあ。それを言うなら、リンダがもっとしっかり捕まえて置かなかったのが悪い、そもそも自分と彼との関係を黙っていたのが悪い、というこじつけもデキなくはないんだが、それだってリンダにも色々と理由とか想いとかがあった上で、敢えてそれが最良だと踏んでつらい決断をしたわけで、そりゃあ自業自得なんだろうけどさ、でも責めるにゃ可哀想でしょう、幾ら何でも、これは。
未練、未練、未練、だ。万里との間に一線を引き、万里と付き合う事になった香子には必死に気を遣って、それでもリンダには未練があるのだろう。未練が、身も心も引き裂いていくのだろう。度々、リンダは自分で引いたはずの一線を跨ぎ超えてしまってくる。そして、その度にフッと我に帰り、後悔に唇を噛み締めるようにして後退りしていくのだ。その姿の痛々しいことこの上ない。なまじ、万里という青年の呼吸を誰よりも心得てしまっているから、人付き合いが極めて不器用な香子と違って、リンダはスルリと万里の懐に飛び込んでしまう。きっと、リンダ当人が意図しないくらい簡単に。無意識の期待の通りに。そして、今の自分にとってそこは居場所ではないと思い知らされるのだ。
至近にリンダの熱を感じる万里は過去と今に心引き裂かれ、二人の姿を目の当たりにする香子はその余りにもしっくりと収まる様子に、墨がにじむように不安を募らせていく。
誰もが痛みにうずくまり、呻きながら喘いでいる。そんな苦しみに終止符を打つために、香子のために、ついに万里は自分の過去とリンダとに決別を告げる事になるのだけれど……はたしてこれが決着へと繋がるのか。
残念ながら、万里の選択が彼ら三人の痛苦の関係を終わらせる決定打になるかというと、とてもそうは思えないんですよね。普通のラブストーリーなら、ここまで明確な意思表示を示してぶつけりゃ、それで終わりになってもおかしくないんですけどねえ。この話の場合、万里の揺らぎは当人の優柔不断が原因ではなく、過去と現在の人格の分離が原因の主だった所にあるので、そこを統合しない限りは幾ら現在の万里がリンダと決別したとしても過去の万里がそれを許さないだろうしなあ。
いっそ、万里が香子と肉体関係結んじゃえば、相応の進展は望めたのかもしれないけれど、変な所で香子の事を大事にしちゃったからなあ。その扱いは、彼女にとっては不安材料にしかならないだろうに。

そろそろ物語の当事者のみならず、読んでるこっちまであまりの重さに息絶え絶えになってきた。かといって、ここから明るい展開へと打開されていくのもなんか違う気がする。いっそ、もっともっとドツボにハマって行き着く所まで行ってしまえ、という気分になっているのが正直なところだ。

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