アイドライジング!〈4〉 (電撃文庫)

【アイドライジング! 4】 広沢サカキ/CUTEG 電撃文庫

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 年末。アイドライジングの短いシーズンオフを利用して、保養地である箱根の温泉宿に羽を伸ばしにやってきたモモとサイ。オリンたちも加わって、ゆったりお風呂やおいしい食事に大満足!!
 だが、そのさなかにモモが新人賞候補として指名され、急遽大晦日の特別試合に出ねばならなくなってしまう。いきなりの試合設定にサイは関係各所との調整やデスクワークに忙殺されてしまい、一人訓練方法に悩むモモ。そんな彼女に手を差し伸べたのは、意外にもアイドライジング最強の“女王”、マツリザキ・エリーだった──!!
 いつもの彼女の気まぐれか、それとも!?
うはははは、これ来たわ。キマシタワー。いや、百合百合の方じゃなくて、確変入る直前一秒前ってな具合?
2巻で化けて3巻で予感させ、この4巻において準備万端整った、ってところでしょうかね。言うなレバ、ホップステップジャンプのステップ。あとはもう、飛躍するだけ、という所にたどり着いた【アイドライジング!】
この4巻までは、こうして振り返ってみると何も知らないままアイドライジングの世界へと飛び込んできたモモが、アイドルとは一体何なのか、というのを身をもって経験し身につけていく過程だったんですよね。才能はあっても素人同然で心構えも矜持も何も持っていなかったモモが、イッパシのアイドルとなるまでが此処までの物語。つまり、助走の期間だったわけです。そして、モモの滑走と並行して、オリンちゃんやエリーをはじめとした他のアイドルたちの掘り下げと立ち位置を確立し、気がつけばモモだけの物語じゃない、幾多のアイドルたちがそれぞれに想いと志を抱いて競いあう「アイドライジング・ワールド」という一つの巨大な舞台がぶわーーっと眼前に広がって完成した事に気付かされる。
エリーを筆頭に、タキさんやキジョウを加えたオペラ・オービットの四人を頂点として群雄割拠するアイドライジングの世界。そこに新たに加わるモモやオリン、そして今回新人賞を争ったミジョウ・レンゲなどの新人有望株。
一人ひとりのアイドルが本当に魅力的で、ともすれば主人公のモモのみならず、読者がそれぞれにファンとして違うアイドルを応援したくなるような、そんな世界観の広がりは、あれを思い出すんですよね。あの伝説を。
【ロイヤル・ヘキサゴン】
フィギュアスケートの世界を描いたスーパーダッシュ文庫の大傑作【銀盤カレイドスコープ】にて、バンクーバー五輪を興奮の坩堝へと巻き込んだ6人のフィギュア・スケーターたちの伝説の舞台を。
はたして、このアイドルたちの物語があの領域にまで達せられるかどうかはわかりませんけれど、新たなシーズンの幕開けを前にして、本格的にはじまるであろうこの魅力的な少女たちの戦いを、今までになくワクワクしながら待ち望んでいるのは確かな話。この作品がはじまった当初は、こんなにも胸を高鳴らせてくれる舞台が生まれるなんて思わなかったもんなあ。特に、主人公のモモの成長は目を見張るものがありました。なんせ、最初の頃の彼女ときたら無邪気さと無知と無自覚が相まってお世辞にも魅力的な主人公とは言えませんでしたから。これなら、オリンちゃんが主人公の方が面白くなるよ! と吠えていたのが今となっては懐かしいくらいです。まったく、素敵な主人公になりましたよ。変態だけどな!!
そんなモモの引き合いに出していたオリンちゃんも、その場に留まるどころかモモのライバルとして、親友として、或いは一人の主人公としてメキメキと頭角を現し、今や人気では一二位を争うんじゃないでしょうか。私はもうオリンちゃんが大好きすぎて死にそうです。今回なんて特に、普段からまとわりついてくるモモを邪見にしてるくせに、何だかんだとモモが大変な事になったら心配して気にかけてくれるわ、素知らぬ振りをしてモモの訓練に付き合ってくれたり、モモのために身を張って戦ってくれたり、ともうイイ子すぎるでしょう! めちゃくちゃイイ子じゃん! 誰だ、プロのカマセとかいうやつわ!!
孤高の女王として手の届かない所に立っていたエリーも、今回のエピソードを通じて、父親を慕い不器用に抗う歳相応の少女としての側面を見せてくれた上に、モモと絡むことで彼女と同じ高さまで降りてきてくれた感じがするんですよね。勿論、彼女は無敵の女王なんですけれど、断絶した別世界の存在なんかじゃなく、モモと同世代の少女であり同じアイドルなんだ、という認識が生まれて、凄く身近な存在になった気がする。ともすれば、気楽に自分はエリーのファンなのだよw なんて宣えるくらいに。
前回、モモをコテンパンに叩きのめしてくれ、アイドルとして大事な事をモモに教えてくれたキジョウさんも、あの堅物の性格はそのままに、妙におちゃめな面を見せてくれましたし、今回新たに登場した新人のミジョウ・レンゲも複雑な背景を現在進行形で抱えているのを垣間見せることで、単なる今回の敵、というだけじゃない先々にも続く存在感を示してくれました。ここにタキさんやもう一人のムラッ気たっぷりのオービットのアイドルも加わってくるわけで、主要なメンバーだけでもこんなにも魅力的な面々が出揃ってしまったのですから、新シーズンが楽しみでワクワクが止まらなくなるのも当然というモノ。そして、此処に来てモモに新バトルスーツで新たな能力が、という話になっては、盛り上がらないのは嘘ですよ、嘘。

年末のオフシーズンのはずなのに、いやだからこそか、モモを中心としながらもエリーをはじめとして各アイドルたちにスポットがあたる贅沢な展開の上に、準備万端整いました、という手応えたっぷりの内容の、実に胸高鳴らせてくれる温泉回でした。
そう、温泉回でもあったんですよね。湯煙漂う温泉郷にて、裸の少女たちのキャッキャウフフ。浴衣の襟元から覗ける肌色に、と視覚的な見所も盛りだくさん……となったら、エロ変態のモモ先輩が黙っているはずもなく。モモちゃん、あんたちょっとケダモノすぎますよ!? この変態め。

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