ガンパレード・マーチ2K(にせん) 新大陸編〈1〉 (電撃文庫)

【ガンパレード・マーチ2K  新大陸編 1】 榊涼介/きむらじゅんこ 電撃ゲーム文庫

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北海道の動乱から二カ月。幻獣との死闘に次ぐ死闘をくぐり抜け、5121小隊の隊員たちは久しぶりに平和な時を過ごしていた。そんな折、人型戦車に強い興味を示すアメリカは、日本政府に5121小隊を軍事顧問としてアメリカ本土へ派遣することを要請する。アメリカから莫大な経済援助を受けている日本政府は要請を断ることができず、小隊をアメリカへ送り出した。そんな彼らを追うように、幻獣がカナダ国境に近い都市・レイクサイドヒルに近づいていた。異国での5121小隊の苦闘の日々を綴る新シリーズ「新大陸編」開幕。
5121小隊、ついに日本を離れて海外進出!! という華々しいお話だったらよかったのだけれど、実際にはアメリカの要求に屈して技術協力の名のもとに生贄同然に差し出され、米国内の基地にて実験動物同然の扱いを受けるという、救国の英雄に対するにはあんまりにもあんまりな仕打ち。前巻のラスト近辺のアメリカ本土への幻獣上陸という展開から、アメリカへの派兵は既定路線だと認識はしていたものの、まさかこれほどあからさまにひどい扱いになるとは。幸いだったのは5121小隊への扱いがアメリカ国内の総意ではなく、人でなしのクズも沢山いるかわりに、健全なモラルの持ち主もまた沢山いてくれて、5121小隊や護衛として同行した自衛軍の身柄を擁護する形で動いてくれたこと。そして何より、大原首相が5121小隊の子供たちへのアメリカのやりように純粋に激怒して、かの同盟国と敵対しても彼らを守ると宣言し有限実行してくれたことだろうか。勿論、大原首相も政治家らしくちゃんとアメリカと敵対しても大丈夫な目算を立てていたからこその決断だったんだろうけれど、それでもリスクは多大にあったわけだし政治家としての立場も危うくなることは間違いなく、それでもなお子供たちを守ろうとしてくれた事実は、5121小隊の子たちが国から捨てられたのではないという安心感を与えてくれて、本当によかった。利を踏まえているとは言え、ちゃんと情を以て庇護してくれる人が上に居るという事ほど恵まれている事はないものね。過酷過ぎる戦争を続けてきた5121小隊だけれど、大原首相と懇意になれたことは幸い以外の何ものでもなかったんでしょうね。

とまあ、前半は5121小隊への人間の尊厳を踏みにじるような扱いにストレスがたまる一方でしたが(例の有名な看守と囚人の実験で明らかになった心理反応が多大に作用したようだけれど)、5121小隊が大人しく柵の中で震えているような子羊などではなく、日本でも有数の獰猛な牙をたぎらせる猛獣そのものであり、小さな子供と侮った連中が痛い目を見てくれたので、スッキリしました。すっきりすっきり。

肝心の幻獣の侵攻は、巨大な戦力を持つアメリカと言えどそれ以上に膨大な物量をもって押し寄せてくる幻獣との戦闘経験の乏しさから苦戦続き。実際のアメリカと違って(言うほど違わないのかもしれませんけれど、情報のせき止め方を見るかぎり自由主義国家というよりも管理国家っぽいからなあ、このアメリカ)、詳しい戦況は都合の悪い情報が削除されてしまっていることもあって、実際のそれとの食い違いから正確な情報が回らずに大混乱。まあ酷いです。
コレに関しては、やはり半世紀近く実際に幻獣と戦い続けた上で、九州から東北での戦いを通じてドクトリンを完成させた日本の経験値が大きくアドバンテージを得ているようで。
というか、アメリカは人型戦車の秘密など技術面ばかりの奪取を目論んでて、実際の戦場での戦い方、戦闘詳報の研究などは実戦部隊に広げていなかったんだろうか。仮にも同盟国なんだから、多少の割引はあってもそれなりに詳しい戦闘詳報は送られているはずだろうに。5121小隊が同行することになった、精鋭と謳われ、実際に優秀で考え方も柔軟な指揮官が率いる部隊が、対幻獣戦においてこれだけ不明を見せる事になってしまったというのは、どう考えても上層部の責任でしょう、これ。

しかし、これから5121小隊はどう動くことになるのか。一応首相からは西海岸に脱出しろ、と言われているし、西側の自治区もクローズアップされてることから、やっぱり現状孤立している街を救出したあとは西進するんだろうか。此処に来て、あの人と合流フラグも立ってるみたいだし。幸か不幸か、学兵の戦車部隊はアメリカまで同行してないんだけれど。

シリーズ感想