聖剣の刀鍛冶12 (MF文庫J)

【聖剣の刀鍛冶 12.Sacred Sword】 三浦勇雄/屡那 MF文庫J

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全市民の耳目を集めることとなったセシリーのプロポーズから数日、市民の移住計画と平行して騎士団による封印の再強化計画もまた開始されていた。ブレア火山の洞窟奥深くに広がる“氷の間”に幾本もの聖剣のレプリカが突き立てられる。
その光景は、まるで墓標。――そしてこの計画が、新たな事態を引き起こすことに。
一方、キャンベル家のメイド・フィオはセシリーのためにウエディングドレスを用意していた。かたやルークもまた、セシリーのためにリサとともに“ある刀”を打つ。
やがてくる帝国との最終決戦を前に、一条の光がこぼれ射す、最新巻!!
とうとうサブタイトルに「Sacred Sword」→「聖剣」の文字が。ついに此処まで来たかー。
技術的には既にやれる所までやっているはずなのに完成しない聖剣。しかも、打ち手であるルークは目の機能を殆ど失って鍛冶師としては死に体に。鍛冶師としての全ては弟子であるリサに叩き込んだものの、彼女の未熟は否めず、その成長を待つ時間は残されていない。ヴァルバニルの復活はもう間もなくで、帝国の暗躍は留まる所を知らず。
これだけ絶望的なことだけが列挙されているにも関わらず、なおも希望を失わずに居られたのは、それこそセシリーの活躍(?)に尽きる。彼女が前向きで居てくれればそれだけで、まだ何とかなる、何とかしてみせる、という希望が湧いてくる。諦めなかった事、それこそが希望を現実へと繋げられた最大の要因だったんじゃないだろうか。あの、これまでルークが打ってきた聖剣の出来損ないたちですら決して無駄ではなかった事が明らかになった時にはちと感動してしまった。あのレプリカがなかったら、状況を打開する最後の鍵が向こうから現れてくれることもなかったわけですから。
本当に瀬戸際の瀬戸際を歩んでるよなあ、この人達は。
そして、その最後の希望が現れてなお、障害はいくつも立ちふさがっていて、セシリーやリサたちに選択を、決断を、覚悟を繰り返し繰り返し突きつけてくるのだ。
でも、もう止まらないんだよね。失ってしまうものは既にわかっている。それを受け入れてしまっているセシリーたちにとって、提示された障害はもはや障害ですらなく新たな希望にすぎなかったとすら思えてくる。リサは、その決断を弱さであり諦めた結果だと自嘲していたけれど、とんでもない、そんなことあるものか。諦めなかったからこそ、鍛冶師としてのプレイドを捨ててなお、守るべき鍛冶師としての矜持があったからこその、あれは決断だったはず。弱いものか、あの決意が。
そして、取り戻すと誓った親友を失うかもしれないと言われてなお、親友の意志を尊重しその上で取り戻し、新たに築いてやる、と決断したセシリー。新しい、エインズワース家の一族が立ち向かうべき試練を見出したルーク。まったく、この夫婦はイチャイチャ新婚生活する間もなくかけずり回っているにも関わらず、なんて息のあった夫婦なんでしょう。ウチの嫁さん、と嘯くルークのうれしそうなこと嬉しそうなこと。
アリア復活、と粗筋の速報で掲載されたときはネタバレすぎだろう! と思ったけれど、全然ネタバレじゃありませんでしたね。まさか、こんな形で復活するとは思いもよらなかった。しかしこれ、銘無しと友達になった子たちにとってはやっぱり辛い結果なんだろうし、それ以上にユージンは苦しいだろうなあ。今のところ彼の心境は描かれていないですけれど、アリアがあんな形で復活した上に、ヴァルバニル復活にあわせて結局離れ離れになってしまうことは確実になってしまったわけですしね。でも、諦めないんだろうなあ。
魔剣と人間の間に子供が生まれ得る、という話をあれだけ丹念にやっていたのは、別段シーグフリードの生誕の秘密に関わる話だったからだけじゃないはずです。それに、魔剣と聖剣はまたちょっと違うものみたいだし。
そう言えば、シーグフリードの母の腕から生まれたという魔剣って、誰なんだろう。さらっと流されていたわりに、結構重要なキーワードみたいな扱いをされていたけれど。

表紙の衣装は結婚式の白装束、決戦兵装・ウェディングドレス。これも、ついにここまで来たかー、と感慨深いよなあ。肝心の花嫁さんと来たら、肝心の式と旦那をほっぽり出して何をしに行ったかと思ったら……ほんとにセシリーってばヒロインじゃなくて、ヒーローだ。紛う方無き「ヒーロー」だ。

シリーズ感想