棺姫のチャイカIV (富士見ファンタジア文庫)

【棺姫のチャイカ 4】 榊一郎/なまにくATK 富士見ファンタジア文庫

Amazon

「本物―私!偽物―白い方!!」突如あらわれた真紅の少女は、そう言い放った。艶やかな銀髪と円らな紫の瞳を持ち、自分も“チャイカ”だと名乗る少女―チャイカ・ボフダーン。紅の彼女は、亡き『禁断皇帝』の遺体を探す『棺担ぐ姫君』チャイカ・トラバントと乱破師のトールたち一行に、蛇咬剣を振るい襲い掛かってくる。「父様の遺体。完全回収。そして―父様殺した奴等、皆殺し」紅のチャイカは自らの目的を告げ、トールたちの持つ『遺体』を力ずくで奪い取ろうとするのだが…。紅と白の“チャイカ”。宿命の二人がいま、巡り会う―。
こう言っちゃなんだけれど、チャイカ・シリーズを「創った」やつって、相当趣味入ってるよなあ。マテリアル・ライフル風の機杖は普及しているものだからともかくとして、蛇咬剣は絶対に趣味だろう。出なけりゃ、わざわざこんなよっぽど手馴れないと実用性に欠けまくるものを携えさせないでしょうに。これからどれだけ「チャイカ」が出てくるかわかりませんけれど、どうせどいつもこいつも普通の剣や槍は持ってないんだぜ、きっと。
という訳で、もう一人の赤いチャイカが登場したことで、禁断皇帝の娘である皇女「チャイカ」が白のチャイカ・トラバントだけではない、というのが明確になった今回。その誰もが遺体を集めていて、しかもチャイカ同士が敵対するような流れに仕組まれているのを考えると、チャイカを実の娘と考えるのはやっぱり難しそうだ。これ以前にも官憲に捕まって自殺したチャイカが何人か居ることを考えるなら、今も活動している「チャイカ」はそれなりの数にのぼるはず。こりゃ、やはり人造で生み出された存在、と考えるのが易しいな。しかも『遺体』を集めたあとの話もどうやら不穏の影が垣間見えてきた。現状を鑑みるならば、これって「蟲毒」の卦が強すぎる。最終的に生き残ったチャイカが皇帝として復活する、というのがパターンすぎる流れなんだが、これいかに。
とまあ、推察ばかり重ねても、実のところ大した情報が集まってるわけじゃないんですよね。八英雄と呼ばれる皇帝を殺した兵士たちも、彼らが一体どうやって実際に皇帝を殺したのか、その時何が起こったのかについても殆ど不明のままですし。推論を積み上げるための状況だけは増えて行ってますけれど、どれだけ状況証拠だけ重ねていっても今のところ根拠のない想像、にしかならないわけで……もうちょっと話進んでくれないかなあ。今回だって、ぶっちゃけ紅チャイカとの顔合わせだけで、ページの厚さのわりに話はさっぱり進んでないし。もっと整理すればページ数半分くらいで済んだんじゃないのかしら、と思えてくる。

ともあれ、紅チャイカという父帝を殺した連中への復讐を声高にはりあげる相手とめぐり合ったことで、結局トールの望むのは自分の力を活かせる乱世ではなかった、というのが示された話でもあったわけだ。彼の望みが乱世なら、それに一番合致するのは現在の世界秩序へ敵対姿勢を取ろうとしている紅チャイカの方なんですよね。紅チャイカもトールの事を気に入って、積極的にスカウトしてきた訳ですし、それに紅チャイカはちょっと厳しくて生意気で覇気も旺盛だけれど、基本的には白チャイカと同じくイイ子で、付き合うのに悪くはない主人だったはず。それなのに、トールが選んだのは父の遺体を集めて弔いたいというだけの白チャイカ。結局結局、彼は白チャイカを気に入っていて、彼女を守ってあげたいだけなのだ。彼女の想いを遂げさせてあげたいだけなのだ。乱世上等とは嘯いても、決して高望みをしているわけじゃない。どう見ても、トールは今で満足してますもんね。自分の力でチャイカを守ってあげられている、チャイカに求められている、それだけで充分満足している。今のトールはそれほど世の中に燻った想いを抱えているようには思えない。彼は、誰かに必要とされたかっただけなのかもね。……アカリは残念ながら、あれだな、優秀すぎたんだな。優秀すぎた上に、兄を過保護にしすぎたんだな。これで妹が無能で不器用でまともに金も稼げず困り果ててるような子だったら、トールはニートになんかならずちゃんと働いたと思うぞ。お兄ちゃんがいなかったら生きていけない、みたいに必要とされてたら、ね。それが、逆に何もしなくても養ってもらえちゃうくらいに妹が何でもできた上に、嫌味は口にしても何だかんだとダダ甘で追い立ててくる事もなかったら、そりゃあ際限なく腐るわ、ニートに甘んじるわ。私も甘んじたい!!
ダメ男属性の女の子なら垂涎の的だな、トールくんは。

表紙は一貫してチャイカで行くのかと思ったら、チャイカはチャイカでも紅チャイカという裏技で仕掛けてきたよ。これは良い意味でサプライズだった。まあ、紅チャイカは可愛いからな、うん。ああいう、機嫌の悪い気難しい猫みたいなチャイカも、それはそれで可愛いのです。ぽやぽやとしてのんきで天然な白のチャイカもそれはそれは可愛いのですが。結論、チャイカ・シリーズを潰し合わせようとか考えた人は完全に落第。チャイカ・シリーズは全部揃えて愛でましょう! とりあえず、あとはチャイカ・ブラック。チャイカ・ブルー。チャイカ・パープルあたりを所望。イエローとかグリーンは正直ビジュアル的にもキャラ的にも微妙な気がするので遠慮したいな!!

1巻 2巻 3巻感想