千の魔剣と盾の乙女6 (一迅社文庫)

【千の魔剣と盾の乙女 6】 川口士/アシオ 一迅社文庫

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魔王を封じた魔剣クラウソラスにも匹敵するとされる、伝説の魔剣ガラドボルグ。それを手に入れるため大陸へと向かったバルトゥータスは魔剣を守護する精霊と出逢い、ロックの師となる以前、エリシアの師であるニーウと出逢ったときのことを想起していた。一方でロックたちは、新たな槍を手にしてすっかり元気になったナギの何気ないひと言から、エリシアそしてフィルがロックとパーティーを結成するにいたったかつての出来事を思い返す。大人気の魔剣ファンタジー、早くも第6巻が登場。
実質、今回は短編集か。しかし、ようやく表紙がエリシアじゃなく、違うヒロインになったというのに、その表紙を飾ったナギが今回まったく出番が無い、というのはどうなんでしょうw ニーウ先生にしろとは言わないまでも、せめてフィルにすればよかったのに。
という訳で、今回はバル師匠とニーウ先生の初めてを綴った回想と、フィルやエリシアがはじめてロックと組んだ時のお話という過去編集。メインはバル師匠とニーウさんの馴れ初めですね、これは。にしても……ニーウの報われなさオーラは半端ないなあ。バルトゥータスってば、昔から今に至るまで完全にニーウの事眼中にないじゃないか。どう見ても、ああこりゃダメだ、と諦めることを推奨するレベル。誰もニーウに忠言しなかったんだろうか。それとも、恋するオトメは聞き入れなかったんだろうか。このままだと間違いなく行き遅れになってしまいそうな勢いである。まだこれ、バルが女に興味がないようなタイプの男ならば縋りようもありそうなものだけれど、彼にはちゃんと意中の人が居て、その人を救うために人生なげうっているわけで、ニーウ先生ってば叶わぬ恋を追いかけて三十路くらいまで突入した末に、入れ上げた男が意中の人と結ばれてしまうシーンを目の当たりにして放置されてしまう、という惨劇が待ち受けていそうで、非常に居た堪れない!!
ニーウ先生の想いが叶うのって、バルが失恋してしまった場合のみ、というのもなかなかキツいんだよなあ。封印されている想い人が助けた甲斐なく亡くなってしまうとか、助けられたけれどその人の趣味がショタでおっさんには興味ないの、と手酷くフラれてしまうとか、そういう色々な意味で残念な結果に終わってしまったケースのみ、ニーウがアプローチする余地が残されているという時点で、もうなんとも居た堪れないw
まあそれ以前に、バル師匠は死亡フラグをプンプンさせているんで、まずバル師匠が死なないように頑張らないと始まらないんですけどね。ハードルが高すぎるにも程がある。
今の時点からバルがハーレムします、というのはロックのそれと比べるとちょっと無理がありすぎるし。ニーウさんニーウさん、それ無理ゲーです。
その意味では、今回のニーウとバルの馴れ初めの話って、ニーウが人生踏み外してしまった話でもあるんだよなあ。そう考えると、前巻の二人を描いた4コマ漫画の身も蓋もなさも相まって、苦笑いが浮かんできてしまう。
なんだ……ご愁傷さまでした。出会ってしまったのが運の尽き。惚れたが負けの人生ですか。
まあでも、この二人の師匠が出会ってくれなかったら、エリシアとロックは出会っていなかったんですよね。そうなると、ニーウ先生はロック・ハーレムの犠牲になったのだ! と言えなくもない。まあ傍目から見てどれだけ報われなさそうでも、当人が幸せならいいのかもしれませんが。現状にある程度満足してなかったら、十代の小娘から二十代後半に指しかかろうという現在まで現状維持のまま来なかったんだろうし。

フィルとエリシアのロックとの初めては、意外なことにエリシアよりもフィルの方が最初ロック相手に厳しい姿勢だったんだ。エリシアの方がむしろ自然に大した反発や対立もなくスッとパーティー組めたのは驚きでした。ロックってあれで師匠と違って人当たりがいいですからね、最初から隔意のあったフィルとはそれなりに時間が掛かったのは仕方ないとしても、特に隔意も好意もなくフラットな状態でパーティーを組むことになったエリシアともめることもなかったのは別におかしくもなかったか。
ともあれ、彼らの話で面白かったのは人間関係よりも冒険初心者が手探りで必要なものを用意し、おっかなびっくり実践に挑むという、あの初々しくも危なっかしく、それでいて微笑ましいやりとりでしょう。今でこそ歴戦のパーティーとなりましたけれど、最初の頃は何を準備して持っていけばいいかもわからず右往左往する初心者だったんだなあ、というのがわかってほっこり。と言っても、フィルとロックのふたりきりで挑んだ最初の冒険は随分と危ない橋を渡ることになってしまったようですが。そう考えると、ロックって最初の頃から度胸だけは座ってたんだなあ。あの冷静さは大したもんですよ。
って、師匠たちの過保護なのか放任なのか分からない、こちらも初心者師匠としての手探りのやり取りも初々しくて、微苦笑を誘われました。バル師匠もナイアル先生も一匹狼でやってきた人だからなあ、勝手分からないのも無理は無いですが、もうちょっと何とかしろよw 師匠としてはニーウが二人に対して大きな顔をしているのが、なんとも面白かった。っていっても、ニーウはあれで過保護だと思うぞw

川口士作品感想