フルメタル・パニック! アナザー3 (富士見ファンタジア文庫)

【フルメタル・パニック! アナザー 3】 大黒尚人/四季童子 富士見ファンタジア文庫

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蒼い第三世代型AS“ブレイズ・レイヴン”を操り、素人同然にもかかわらず、テロリストを撃退した市之瀬達哉。そんな彼のASオペレータとしての才能を目の当たりにし、アデリーナは様々な思いが交錯する。それは全てを失い、ASオペレータに人生を賭けてきた彼女の根幹を揺るがすほどのものであった。そんな不穏な空気の二人を余所に、以前仕事で達哉に一泡吹かされたアラブの王子様・ユースフがまさかの襲来。決闘を申し込んできた。さらに、AS‐1“ブレイズ・レイヴン”のパイロットを巡り、試験をすることになるのだが、果たして―!?電光石火のSFミリタリーアクション、全力加速。
ユースフ王子、レギュラー化かよ!! しかも、三巻の表紙をクララから強奪しやがった。これ、ちびっ子怒るぞw
このアナザー、特にフルメタ本編みたいな大事件が起こるわけでもなく、どちらかというと短編の時みたいなノリなので、そっちの軽い路線なのかと思ったら、アデリーナが根深く煩悶していたようにわりと話の焦点自体はシリアス路線なんですよね。意外と派手な展開がなく、大人しい話なんだよなあ。地味とも言う。
ともあれ、面白いのがこのアナザーって「あちら側」と「こちら側」、つまり敵を殺してなんぼの戦場と平和な日常という断絶した世界の、ちょうど狭間に立っている人たちの話なんですよね。これがかつてのフルメタ本編だと、宗介とかなめはあちらとこちらを完全に入り込んでの行ったり来たりを繰り返していた。ところが、こちらのアナザーは達哉にしてもアデリーナにしても、どっちつかずの両側が混ざり合った緩衝地帯に身を置いて、そのどちらにも入りきらないまま片足を突っ込んでいるわけです。これはクララにしても、ユースフにしても、そしてテロリストである菊乃にしてもおんなじで、ヘルシング風に言うならば中途半端な黄昏時をおっかなびっくり歩いているのが現状です。
それで、この物語が彼ら登場人物たちがあちらかこちらか、どちらかの世界に属することをいずれ選ばなければならない事を迫られるお話なのか、というと読んでてそんな感じはしないんですよね。
マオは面白い居場所を作ったよなあ、としみじみ思う。この巻で彼女は何故こんな民間軍事会社を作ったのかという理由を語ってくれるのだけれど、彼女の意図がそうならば、この物語はかつての宗介やかなめのようにどちらかの世界を捨て去る事を迫られるような状況を否定し、戦場の近くに身を置きながらも日常に属することが許される居場所を見出すためのお話なのかなあ、と思ったり。
これが、本当の軍隊のお話なら、多分アデリーナは感情的にも達哉の事は受け入れられなかったと思うんですよね。でも、今のアデリーナはもうかつてのような兵士ではなく、軍事に関わるとはいえ民間人であり、あくまでASのインストラクターであり、敵を殺す必要のない立場であり、カタギの人間なんですよね。勿論、戦争を知らない達哉の友達みたいな普通の日本人からしたら、完全にあちら側の人に見えるし、達哉も漠然とそんな意識を抱いている。アデリーナ自身もそういう意識あったんでしょうね。だからこそ、達哉に対して複雑で否定的な念を抱いてしまっていた。それが解消できたのは、マオ社長や達哉の率直な告白のお陰で自分の立ち位置をちゃんと把握できたからなんじゃないかなあ、と思うのです。自分が今いる場所が、半分一般人のままの達哉をそのままに受け入られる所なのだ、という認識が得られたからこそ、兵士ではなく一人の女の子として達哉の存在を見るはめになってしまった結果が、あのいい雰囲気だったんじゃないかと。
……となると、次は達哉の話になるのかなあ。彼はまだ、アデリーナが悩むほどには自分が片足を突っ込む戦場の世界についてちゃんと認識していませんし。怖い、という意識は既に芽生えているにしろ。いや、ちょっと違うか。むしろ逆なのか。自分が今いる場所が、あちら側に片足を突っ込んでいる場所にせよ、決して敵を殺し人を殺し破壊を撒き散らす必要が迫られる兵士の立場にあるんじゃない、と理解する展開が待っていると予想すべきか。
しかし、この流れだと本当の殺し合いを含めた大規模な戦闘シーンはこのアナザーじゃなさそうなんだよなあ。別にそれは悪くはないと思うんだけれど、やっぱり不殺展開となるとどうしても見栄えの派手な展開は難しくなっていくと思われるわけで、そこからどう面白くしていくかはダイレクトに筆者の力量が反映されそうで、色々と問われる事になりそうです。ガンバガンバ。応援してますよー。

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