やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。4 イラスト集付き限定特装版 (ガガガ文庫)

【やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。4 イラスト集付き限定特装版】 渡航/ぽんかん(8) ガガガ文庫

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夏休み。誰とも会わず、遊ばず、働かず。一人悠々自適な生活を送る八幡だが、平塚先生から招集がかかり、奉仕部として雪乃や結衣たちとともにキャンプ場でのボランティアを強制される。しかし、なぜかそこにいたのは葉山、三浦などの「リア充」組。強制的に発動された青春っぽいイベントに、八幡たちはどう立ち向かう?水着に花火に肝試し、キャンプの夜の会話、そして風呂…?「みんな仲良く」なんてできるわけがない!?夏は、ぼっちにとって忌避すべき危険がいっぱい。相変わらずひねくれ、間違い続ける青春、第四弾。
葉山がこんなにも重要な立ち位置にハマるとはなあ。内面も外面もイケメンで瑕疵のない完璧超人の彼は、単に八幡のキャラクターを皮肉るための役どころとして用意されたキャラクターだと何となく思っていたんだけれど、皮肉るどころか対比というかアンチテーゼというか、イケメンだからこそクズである八幡と相対させてくるとは。いや、それ以上に葉山というキャラクターを背景を彩るモブではなく、ちゃんと苦悩を抱え複雑な感情を有してそれを主人公たちにぶつけてくる悩める若人の一人として立脚してきたことに驚きを覚える。
この作者、中身と歴史のないキャラクターは絶対に書きたくない、というか描いたキャラ全員に自立した人格を与えないと気が済まない人なのか。「リア充」組にもあれだけ個性を与えて見せてくるとなるとね。
その中でも葉山は、雪乃が今みたいな性格になった原因を担い、彼自身もそれを引きずっていると同時に現在もなお雪乃を強く意識している、という話の本筋に絡むキャラクターとして舞台の中央に進みだしてきたのだ。そうして初めて、自分と全く異なる価値観を雪乃と共有している「敵」の存在に気づくことになる。
面白いなあ。葉山にとって、八幡とは過去に自分が盛大に失敗し、成長した今もなお手も足もでなかった問題を、下衆のやり口とはいえ突破口を開き、解決と言わずとも問題を問題と言えない状況に叩き潰す、という自分に出来なかった事をやってのけた相手として、自分の前に現れたわけだ。彼が、自分の価値観、正義感とは決してそぐわない彼の作戦に敢えて乗り、汚れ役を引き受けた心境はどれほどのものだったんだろう。葉山は本当に良い奴だから、問題がうやむやになってあの少女が救われた事を喜ばざるを得ないにしても、八幡のやり方で叶ってしまったというのは忸怩たるものがあったんじゃないだろうか。
いやそれ以上に、かつて自分が雪乃を助けられないどころかどん底に突き落としてしまったのと同じケースを、雪乃がかつての自分を映し見て少女を苦しみから掬い上げたいと声を上げて、あの雪乃が声を上げて願った問題を、あのクズが何とかしてしまったという事実こそが、どれほど葉山に強いショックを与えたのか。
実に興味深い。自他ともに認めるイイ奴である葉山が、果たしてこれから八幡に対してどう接していくのか。

それと同時に、雪乃の心境も興味深いんですよね。彼女が生き方を踏み外し、今もなお原因である葉山を拒絶し続ける事になった問題を、八幡が酷いやり方とはいえ一つの筋道を見せたことに、彼女がどんな思いを抱いたのか。これまでも雪乃は何だかんだと八幡を認めていたと思うのだけれど、なんだろう、あれはその場での停滞を望んでいた彼女に、踏ん切りをつけるきっかけになったんだろうか。これまでも、結衣との交流を通じて徐々に凍っていたものを溶かして行っていたけれど、今回はさらに彼女の根源の部分を揺さぶる出来事だったかあなあ。
しかし、彼女の停滞を固定し続ける姉の存在がある以上、まだ決定的なものには成り得ないか。あの姉は……実に気持ち悪い。八幡に対する牽制は八幡がアレだから別にどうとも思わなかったけれど、結衣に要らん事を言い出したのには流石にイラっとさせられた。お前みたいなのが結衣に変なこと言ってんじゃねえよ。

しかし、なんでこの作品は、思わずニヤニヤしてしまうようなきゃっきゃうふふな糖分過多なラブコメイベントが、常に彩加相手なんだ? なんで二人で話し始めると空気がピンク色になってラブラブ時空に突入するんだ?
なんて甘酸っぱい……だが、

そ・い・つ・は・オ・ト・コ・だ!!

イラスト集の方では雪乃と結衣、どっちがお姉ちゃんになってもアリだなあ、なんてコメントしていた妹ちゃんも、本編の方で、これも彩ちゃんもアリかも!? とか言い出してるし。いいのか? 義姉がオトコでもいいのか!?
結衣さん、そろそろマジで焦らないとこのクズ男ってば本気で彩加に走るぞ。ってか、もう半分ハマってる、ハマってるから。
と、ここで件の事故車の正体が示されてきたというのは、どういう展開に入っていくことを示唆してるんだ? なんか、何が起こっているかサッパリわからない裏の事情が、知らない内に決定的な場面を迎えた気配がする。これ、次は修羅場か、もしかして。

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