ひきこもりの彼女は神なのです。5 (HJ文庫)

【ひきこもりの彼女は神なのです。5】 すえばしけん/みえはる HJ文庫

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夏休みになり、天人の妹・奏が寮に遊びにきた。明るく礼儀正しい奏はすぐに寮の面々と打ち解け、天人は安堵するがそれも束の間。何と天人はミツカズと名乗る霊に取り憑かれ、その現世の未練を断ち切るため密かに町を案内するハメに。それでもプール、買い物と楽しい休暇を過ごす天人。だがそんな中、亜夜花は奏に「ある違和感」を感じるが……!?
あれ? この表紙の少女って千那さんだったのか。彼女についてはこれまでの挿絵なんかでもそうだったんだけれど、もっとお姉さんなイメージが濃かったので、ちょっと幼い感じのお下げ髪の彼女が千那さんというのは結構意外でした。そうかー、千那さんって万那さんの姉というよりも兄を溺愛する妹というポディションなんだよなあ。特に今回は。
この巻では、天人の妹も登場するんだけれど、この作品ってシスコン多いですよね。天人然り、リョウタさん然り、柚原一二三然り。亜夜花の兄ちゃんたちもあいつらシスコンだったしなあ。あれか、カミサマって連中はみんなそうか。シスコンとブラコンの巣窟か!! 実際神話ってそんなばっかりだから始末が悪いw
とまあ、兄と妹の関係に焦点を当てたみたいな話の展開をしているけれど、実は今回の話って梨玖が前回亜夜花に叩きつけた挑戦状に、如何に立ち向かうかの答えを得るための話であったようにも見える。つまるところ、天人の絶対的信奉者として振舞おうとする梨玖に、同じ天人を愛する立場でありながらどう否を突きつけるか。神としてではなく、一人の女として。天人と対等の一人格として正々堂々と梨玖に宣戦布告するための立ち位置と根拠を、亜夜花は今回の事件を通じて見出すことができたのである。
実際、亜夜花は前回にも増して今回は頑張った。体力ないのに一生懸命外に出て、天人のみならず周りの人たちとコミュニケーションを深めることで自分の知見を深め、視野を広げようとしていましたし。
冥界の女王ともあろう神様が、健気もいいところである。ただ外に出るだけじゃなく、天人の目をきにしてお洒落に気を使ったり、一挙手一投足に一喜一憂したりと、可愛いなあもう。これは、コウタも同じくで、このちびっこも心は完全に乙女なんですよねえ。そっけない態度の裏で、自分天人のこと好きすぎるだろうw ちゃんと女の子の格好をしたコウタの可愛いこと可愛いこと。リョウタさんは自分の大事な妹分が天人に夢中なのをどう思ってるんでしょうね。あの大悪魔がお兄ちゃんは許しません状態になったら、半天使としても男としても太刀打ちできんぞw
閑話休題。
何度も体力不足で倒れそうになりながら、亜夜花が見出したのは神として天人を導くのではなく、ましてや彼をヒーローとして崇めるのでもなく、彼に力が足りなければ助け、彼が間違えればそれを指摘してあげるという対等の立場からの関係でありました。
ニュートラルハウスの雰囲気を一変させ、亜夜花たち神々の意識を変え、多くの迷える神や人間の蒙を啓くきっかけをもたらす活躍を見せてきた天人ですが、彼もまた只の人。間違うこともあれば、気付かない事もたくさんある。妹のことだって、気にかけているつもりでついつい疎かにしていた結果、致命的な事になりかけた。でもそうした躓きや失敗は、これまで彼がしてきてくれたように、誰かが横から後ろから、それは違うよ、気づいてあげて、と声をかけてあげればそれで済む話なんですね。決して、一から十まで助けてあげなくても、本人に気づかせてあげればいい。その気づかせてあげる、というのもまた大変なんですけれどね。声を届かせるためには、声を発する本人がちゃんと自分一人で立ってないと大きな声を出せない。それでいて世界と繋がっていないと、説得力を持たせられない。自分一人の世界に引きこもってちゃダメなわけです。天人くんは一度自分一人で何でも解決しようというスタイルで失敗して自分の内に閉じこもりかけて、このニュートラルハウスで過ごすようになって引きこもりから脱した。亜夜花やコウタもまた、そんな天人を通じて外と繋がろうと努力するようになったからこそ、今回天人の失敗に気づき、その指摘もまたちゃんと天人に声が届いたのでしょう。
そうした観点からすると、梨玖はまだ天人一人に拘って引きこもっている状態なのかもしれません。不思議で面白い話です。神である亜夜花が信仰を否定し人と対等に繋がることを欲したのに対して、梨玖は神にそうするように絶対的な信仰を以て天人とつながろうとしているのですから。
死という存在の終わりを得た神々は、もはや人と変わらぬ有限の存在と成り果てました。そんな神と、人間がどうつながっていけばいいのか。リョウタさんや一二三さんは、その最良の答えを天人に期待してるんだろうなあ。一二三さんのキャラクターは、予想外もいいところでしたけどw ありゃあ、盲愛の千那さんはともかく、万那さんが微妙な反応だったのも納得ですわ。あれは、胸張って最愛の兄です、とは表立っては言いがたいよなあw

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