六蓮国物語  皇宮の嘘つき公主 (角川ビーンズ文庫)

【六蓮国物語 皇宮の嘘つき公主】 清家未森/Izumi  角川ビーンズ文庫

Amazon

中華ファンタジーの新定番!!

敬愛する太子のそばにいるために、上官の季隆と偽装婚約の契約をかわした太子近衛武官・結蓮。今日も太子に仇なす妖怪退治に爆走中!ひょんなことから、公主華瑛の護衛につくけれど、彼女はわがままばかり。さらに、太子の兄将軍・崇怜が結蓮の婚約者だと名乗りでてきて、偽装婚約に早くも暗雲のきざし!? こまった結蓮のお悩み相談相手は、恩人・翠玉の御使い様(正体は季隆なのに!)で!! 絶好調中華皇宮ファンタジー第2弾!
とりあえず現状をまとめると。数年前、妖怪の襲撃から自分と公主を救ってくれた謎の道士を、翠玉の御使い様と結蓮は慕っているのだけれど、実はその御使い様は先日婚約者となり上官となった橘季隆だったりする。が、色々と事情があって結蓮にはその事実は伏せられていらっしゃる。お陰で折に触れ、結蓮から如何に翠玉の御使い様が素晴らしい人なのかを惚気けられて、照れるやら悶絶するやらだった季隆さんでしたが、この度結蓮さん、季隆の師匠が御使い様と知り合いだというので(当然だよ!!)、彼を通じて御使い様と文通を始めるのでした。
結蓮が悩み事相談を綴った手紙を託した伝書鳥が、飛び立ったと思ったら即座にその場に戻ってくるという身も蓋もない光景に爆笑してしまった。すぐ傍らにいる結蓮から、手紙を通じて本心を吐露される季隆はその率直さ、あけすけさに狼狽え焦り、でもニヤニヤと浮かれるばかり。まあ落ち着け。普通はこういう一方的な秘密を抱えた関係って、自分の正体を秘密にしている方が上から目線で偉そうに振る舞うような鼻につく態度をとりがちなんだけれど、この作品の場合むしろ正体を秘密にしている季隆の方が、知らないが故に次々と地雷を踏みそうになる結蓮に振り回されて、泡を食いながらおたついてくれるので、見ていて実に愉快なのである。
知らないって、フリーダムだよね!
加えて、結蓮は武骨者のくせに天然がかなりの度合いで入っているので、相手がどれだけ警戒していてもスルリと核心に踏み込み、季隆が顔を青くして冷や汗を流すのを横目に何も気づかずにスルーする、という精神をすり減らすような瀬戸際ギャロップを平然と反復していくので、ついつい疲弊していく季隆に「あんたも大変だねえ」と生暖かい視線を送ってしまうのです。まあ、季隆当人はもう結蓮ちゃんにベタぼれなので、そうやってハラハラドキドキさせられる事自体が楽しいようなので、まあ勝手にやってろよ、と半眼にもなってしまうのですけれど。
とはいえ、季隆からの一方的な関係、というわけでもないんですよね。一応二人の関係は偽装婚約という契約に基づいたものなのだけれど、結蓮もいつの間にか季隆との婚約関係はこのままで居たいなあ、と思うようになっているようで、崇怜からの求婚にも困り顔で、季隆が崇怜に何も言ってくれない事に不満を感じたり(実際は牽制しまくってたんですが)、自分が理由もなく季隆と今のままで居たいと思っている感情に困惑しながらも、婚約維持となったときに素直に喜んでいましたしね。二人で過ごす時間も居心地よく感じて、太子しか眼中になかった生き方にもどこか気持ちの余裕が出てきているようなのです。公然と慕っていると宣う御使い様への文にも、季隆との間柄をちょっと惚気るような文章を付け加えているあたり、あれで実は現段階で既にけっこうイイ感じになってきてるんじゃないでしょうか。
これ、もうあと少し噛み合うようになったら途端に甘々の関係になってしまうんじゃないだろうか。今のうちから歯磨きしておいた方がいいかもしれないw
崇怜さまは鬱陶しいだけの当て馬なので、早々にお役御免になってほしい所です。あれは好感持てんよ。
華瑛がどうやらレギュラー化しそうなのはちょっと意外な展開。立ち位置的に、結蓮の親友として大暴れするポディションか? 何気に結蓮の同世代の女性のキャラクターが皆無に等しかったので、この参戦はいいんじゃないでしょうか。結蓮の抱えている宿命を、同じ女性の立場から受け止めてくれる人がいると、その時が来た時に話しも膨らむでしょうし。

1巻感想