も女会の不適切な日常1 (ファミ通文庫)

【も女会の不適切(アイ・ド・ラ)な日常 1】 海冬レイジ/赤坂アカ ファミ通文庫

Amazon

部活名:「もっと学園生活を豊かにする善男善女の会 部」目的:青春を謳歌すること! メンバー:(1)ちだね先輩。僕の愛しの青春☆ヴァカ。(2)繭【まゆ】。化学実験厨でちだね先輩の寵愛を独占。僕嫉妬。(3)ユーリ。僕の従妹で義妹【いもうと】。暴力女。(4)雛子【ひなこ】。エア参加。ガチ百合。(5)僕、花輪廻【はなわめぐる】。女子扱いされるけどお願いヤメテ。そんなも女会はモテないし無軌道だけど、それなりに平穏だと思ってた。あの少女に出会うまで、僕らの日常が本当は不適切だったなんて、知らなかったから――。


どっぎゃあああああああん!!??

なんじゃこりゃあ!? いやもう、なんじゃこりゃあ、としか言いようがない。なんじゃこりゃあ!!??



これは事前にどんな話なのかを把握せずに読み始めたら、度肝を抜かれるどころじゃ済まないですよ。普通に読んでてこの展開を予測できる人がいるのか?
ちょっと緩めの普通のラブコメ風味の日常ものだと思っていたので、表紙を飾るアイがいつまで経っても登場しないことに首を傾げながらも、海冬さんもこういう方向で行くんだ、なんてぬるま湯に浸かった気分でぼんやりと思ってたら……いきなりのデッドエンドですよ。
いや、この時点では。リンネが不慮の事故で死んでしまい、迷い込んだ四次元空間でアイと出会い、時間を遡って三次元にアプローチすることで現実を改変していくという展開になった時点では、おおっこれは面白い流れだ、と俄然に身を乗り出しはしたものの、この手のループものは今時は決して珍しいスタイルではありませんから、それほど驚かされるというほどではなかったんですよね。
度肝を抜かれたのは、その改変すべき現実が既にリンネが最初に死んだ時点で崩壊……いや、潰乱していたことが明らかになった瞬間からでした。
この瞬間は、本当に唖然愕然となりましたよ。いや、その愕然は一瞬で終わることなく、次々と、次々と息をつく暇もなく滅多打ちにする勢いで襲いかかってきたのです。
完全にホラーですよ、これ。
「え? なにこれ? 何が起こってるの?」と、ぽかんと放心したまま襟首を掴まれて引きずり回された気分です。
あとで、最初の「も女会」のメンバーのキャラクター紹介を読みなおして笑ってしまいました。びっくりするくらい真っ正直に書いてやがるw しかし、これをそのままの意味で受け取る人はそうはいないですよ。人間、そこまでピュアにはなれない!
アイの正体についても、ホラー展開の末に明かされた時にはそう来たか、と納得するしか無かった。アイとリンネの関係ってたとえば【文学少女】シリーズや【断章のグリム】シリーズ、或いは【Dクラッカーズ】の主人公と幼馴染の関係と同じく、たった二人きりの世界に閉じ籠ろうとして破綻した人間関係なんですよね。結果として、片方は日常に立ち戻り、もう一人は切り捨てられ不都合な存在として抹消されてしまう、という残酷な結末を経て現在へと至り、消された存在は再び相手にとっての唯一無二にならんとして、相手が今居る日常(せかい)を侵食し穢し汚辱に塗りつぶそうとする悪魔となり果ててしまう。
そうして世界を壊して二人きりの完全な閉塞に戻ろうとする悪魔をどうやって調伏するかというと、悪魔を人に戻して自分を媒介にして日常に引き戻すしかないわけだけれど、どうやらこの作品の場合アイを悪魔に追いやった件にはどうやら第三者の明確な悪意が介在しているようなので、その黒幕を暴き出し決着を付けるしかないわけだ。何気にこれもミステリー入ってるんだよなあ。さすがは富士見ミステリー文庫の出身者、というべきか。
じゃあ誰がその黒幕なのか、についてはまだ何とも言えない段階である。これが本当にミステリーならば既に登場した人物の中で疑いを絞っていかないといけなくなっちゃいますもんね。いや、「も女会」の中に真の黒幕が居る、という展開はそれはそれで非常に面白い試みなんですが、流石にその展開は難しそうだもんなあ。

ともあれ、ここまで本気で仰天させられた作品は久々でした。あの体験だけでも、読み応え充分だったと思います。続編は早々に予定されているようですし、実質的な本番となる次回以降も素直に期待したいですね。インパクトは充分、あとは、どれだけこの狂気の渦を安定して定着させるか。主人公が良い意味でアイへの執着をこじらせてくれれば、主人公からヒロインまで総員揃ってヤンデレ・パレードへようこそ♪ みたいな感じになりそうですし。怖っ!