黒鋼の魔紋修復士1 (ファミ通文庫)

【黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グラフィコス) 1】 嬉野秋彦/ミユキルリア ファミ通文庫

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純潔乙女に刻まれた"魔紋"の力、見せてあげる――!

"神聖同盟【リガ・サントゥレアール】"に12人しかいない、憧れの"神巫【ドミナス】"に任命された少女ヴァレリア。しかしその美しい肌に刻まれた"魔紋【ヒエラティカ】"を委ねる紋章官【ヒエラ・グラフィコス】は、よりにもよって男、かつ超性格の悪い少年ディミタールだった。純潔の肌を男にさらす乙女心と、各々の立場から対立してしまうふたりだが、そんな彼らに初仕事となる任務が与えられる。それが"贖いの主"たる神、レドゥントラを巡る壮絶な争いへ続くとも知らず……。妖艶な"紋章魔法【ヒエラ・マレフィカ】"が世界を彩るファンタジーアクション
気が強くて気位が高くてプライドの塊みたいな女の子が、正論で言葉攻めにされて悔しいっ、でも言い返せないっ! と涙目でへこまされるドS仕様のお話です……いやいや。でも、概ね間違ってないぞw 天才だろうと偉かろうが現場を知らない新人は勝手がわからず右往左往するばかりで、現実が伴わない判断は経験者であり先達であり指導役であるパートナーにバッサリ切り捨てられ、こき下ろされ、叱られ呆れられ見下げられ、と可愛いは正義、という真理は一切通じない、ある意味当たり前の光景が繰り広げられる。
まあ、ヒロインにここまで甘い顔を見せない主人公を描くのは、この嬉野さんくらいだよなあ。
でも、散々その現実を伴わない言動をこき下ろされてしまうヴァレリアですけれど、決して彼女が無能でも我儘でもないんですよね。単に世間知らずでやや無鉄砲であるだけで、とにかく経験が伴っていないだけで当人に悪意があるわけでもない。これまで神巫【ドミナス】になるためにひたすら頑張ってきた、という箱入りな身の上なのですから、現場について何も知らない、というのは当たり前なのです。言うなれば、今回の任務はそうした世間知らず、経験不足を補うための経験値を得るための新人研修の色合いが濃いものだったといえるのでしょう。このヴァレリアって娘、ディミタールに悪し様に罵られても、その内容が正論ならば内心で呪詛をまき散らしてても、無意味な反発を表に出して抵抗したりはしないんですよね。ちゃんと納得はするんです。プライドも身分も高いだろうに、その点は非常に偉かったと思います。ディーの言いようってホントに腹立つ言い方するし、カチンと来る態度なんですよね。それを大方こらえただけでも、充分偉いと思う。
それでも自身の性格心情を裏切る判断は蹴飛ばすあたり、結果として状況を悪化させてしまったとはいえ、自分の中に譲らない一線を持っている、というのは大事な事なんじゃないでしょうか。
一方で、護衛対象であり身分も上の神巫【ドミナス】に対して、辛辣過ぎるくらいの接し方をしているディーですけれど、彼は彼で非常にプロ意識が高く、彼は一貫して彼女の身を守り、神巫【ドミナス】としての立場を守れるように、任務も無事達成できるように、と立ちまわってるんですよね。その為ならば、自分の身を犠牲にする事を一切鑑みていないくらいに。もっとも、最初はヴァレリアという少女個人には一切関心がなく、あくまで神巫【ドミナス】という肩書きに対するプロ意識だったようですけれど。むしろ、ヴァレリア個人に感情移入することなくあそこまで仕事に徹せられるというところが、凄いプロらしいといえるんでしょうが。
それでも、ヴァレリアにしてもディーにしても、一緒に行動しているうちに、それぞれが自分の立ち場や役割に対して非常に高い意識を以て、献身的なほどに向き合い熟そうとしているのだと認め合うようになっていきます。まあ、感情としては気に食わない、大ッキライ、ムカツク、死ね、むしろ殺す、というくらいに仲の悪さは折り紙つきと言っていいほどに、むしろ最初より高まっていたような気もしないでもないですけどw
認め合うことと、好きになることってまた違う話なんですよねw
ここから、二人に恋愛感情が芽生えるとか、まるで想像できんな!! あり得んよな!! あり得んだけに、見たくはなるんですけどね。想像できないだけに、そうなっていく時の過程がまた面白そうなんですよねえ。
まあ現段階ではやっぱり無いよなあ、というレベルの断絶が二人の間には横たわっているのですけれど。いやあ、無いよなあ。