それがるうるの支配魔術  Game4:ロックドルーム・ゴッデス (角川スニーカー文庫)

【それがるうるの支配魔術 Game4:ロックドルーム・ゴッデス】 土屋つかさ/さくらねこ 角川スニーカー文庫

Amazon

夏休みに入り、欧文研のメンバーは合宿と称してタマキの田舎に遊びに行くことに。そこで彼らを出迎えたのは、妙な色気と雰囲気を持つインナミさん。なんと彼女は天候を操る“神様”として村で崇められていたのだ。しかも村祭りの儀式で、タマキさんはインナミさんと二人きりで一晩を共にすることになってしまう。さらに、激怒するるうるたちを尻目に始まった儀式で不可思議な盗難事件まで発生し―!?欧文研は夏合宿も非常識だらけ。
あれ? これって「るうる」? と困惑してしまったほどガラッと雰囲気を変えての第四弾。というのも、舞台がいつもの学校からタマキの田舎に移り、そこには当然のような顔をして「神様」であるインナミさんがふわふわと存在していたのでした。
田舎で「神様」というとすぐに「ゆのはな」とかを思い出してしまうのだが、わりとエロゲーでは定番ネタですよね。意外とライトノベルの方だと少ない気もするが。一迅社から出ていた【ある夏のお見合いと、あるいは空を泳ぐアネモイと。】なんかがそれに該当するんでしょうけど、あの作者もシナリオライターでしたし。
とは言え、この「るうる」の世界観には「魔術」は存在しても「神様」なんて存在はいないはず。明らかにインナミさんの存在はイレギュラーなんですよね。でも、彼女の天真爛漫であでやかで、無垢と狡猾が合わさったような人の心の奥底まで見通すような佇まいは、どこか人智を超えた存在で、それ以上に神として奉られ、親しまれ、愛されている彼女の人柄は、そんな違和感を吹き飛ばすような明るい存在感を示しているのでした。
とても、自然なのです。インナミさんがニコニコと笑いながら村の人達と笑顔をかわして闊歩している姿が。その交流にまやかしや裏の思惑など存在していない事は明らかで、決して村人たちが騙され悪いことが起こっているようなことはありません。インナミさまは、ただ村を見守り、穏やかに村人たちを安んじているだけなのでした。
そんな彼女に疑念や粗探しを迫るというのはどうにも無粋な話でしかありません。

そこに嘘があるとして、誰が困っているのでしょう。誰が苦しむことがあるのでしょう。


多分、言乃は殆ど最初の方から事の真相には気づいていたんでしょうね。彼女の見識からすれば、状況は常識を疑うようなことではあっても、仮定と推論と状況証拠を並べていけば、自ずと答えは出ていたはず。なのに、彼女は最後に至るまで、そのことについて口にする事はありませんでした。嘘をついた方も、嘘を突かれた方も、嘘に気づいて黙っていた方にしても、みんながそこに大きな優しさを込めていて、それが無性に切なくなる。
あとがきにおける、作者による「嘘」についてのお話は、今回の話のみならず、この「魔術」という世界を騙す嘘と、それを打ち破る力を持った主人公たちが織りなす「それがるうるの支配魔術」という物語の根幹に寄り添うのに、とてもタメになる論だったように思います。あのあとがきを見たことで、この作品に対する知見そのものが大きく啓けたような気さえするほどに。

その魔術は誰がための魔術なのか。誰のためにつかれた嘘なのか。何を以て、それを嘘と見なすのか。真実と嘘と、どちらが正しく、どちらが優しいものなのか。
タマキの正体が、るうるの記憶にある「マル」と同一人物だという事実が明らかになった今、るうるの兄が引き起こした事件の謎、兄の失踪と彼の周辺に居た人間たちの今に至るまでの怪しい動向は、とてつもなく大きな真実を覆い隠すための幕を想起させ、その重厚さに戦きすらいだいてしまいます。果たして、その幕を引き開け、裏側に存在する「嘘」の正体を見てしまうことが、正しいことなのか。
でも、タマキは約束したんですよね、インナミさんと。すべてを明らかにするまで、進むのだと。その上で、きっと彼に……嘘を打ち破る力を持ったタマキに、その力を行使するかの選択する権利が与えられるのでしょう。
幸いにして、彼にとっての真理は欺瞞を認めないことでも正義を執行することでもなく、とてもシンプルに一人の少女を助けることです。その原則に基づく限り、彼の「嘘」への見解とスタンスは信頼に値するのでは、と今の彼なら信じ期待する事が可能です。
これから、物語は加速していくようですが、インナミさんとの再会と別れを通じて、確固たる自分の拠り所を見出したタマキならば、なんとかなるでしょう。碓氷や、言乃も居るわけですしね。特に、言乃は今回わりと控えめに徹していたので、さらなる活躍を期待したいなあ。色々な方面でw

1巻 2巻 3巻