俺の妹がこんなに可愛いわけがない 10 (電撃文庫 ふ 8-15)

【俺の妹がこんなに可愛いわけがない 10】 伏見つかさ/かんざきひろ 電撃文庫

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 あのバカがしばらく一人暮らしをすることになった。受験勉強に集中するためってのと、あとひとつ、お母さんが最近あたしと京介の仲がよすぎることを変に疑ってるらしい……。あたしと京介がそんな関係に──なんて、あるわけないじゃん!
 で、まあ、責任の一端は、ちょっとだけあたしに……あるみたいだし、あいつもどうせコンビニのお弁当とかばっか食べそうだし、仕方ないから、あたしが面倒見てあげようかと思ったんだけど……。
 ちょっとあんたたち、なに勝手に京介の家で引越し祝いパーティ開こうとしてんの!? 発案者の地味子はいいとして、黒いのに沙織に、あやせに……加奈子まで! ていうか、あんたたち知り合いだったの!? えっ? 地味子と仲直り? そんなのあとあと! あーもー、ひなちゃんは言うこと聞かないし! こんなんじゃ京介が勉強に集中できないじゃん!
………………おお。

って、放心してたんじゃ話も進みませんがな。相変わらず、最後の引きがメチャメチャ凶悪だな、これ!!
表紙は桐乃と京介の新婚生活になっちゃってますが、実際はどうかというと……

あやせーーー!!!!!



ついに伝家の包丁を抜いてきやがった。うわー、マジですか、これ。最近のあやせの態度って凄くあからさまだったので、逆にその内心を穿って見ていたんですけれど、京介の知り合いの女性陣が一同に集った上に、黒猫などの京介との親密な接し方、積極的なアプローチを前にしてのあやせの焦りっぷり、動揺の仕方を見せられると、ああやっぱりこの娘普通に京介のこと好きになってたんだ、とは納得できたんですが。
まさか、その位置から踏み込んでくるのは予想してなかった。彼女は結局、建前とはいえ京介とは直接関わりのない桐乃を介しただけの部外者のままで居ると思ってましたから。建前にしがみつくと思ってたんだけどなあ。
それが、黒猫との直接対決、ガチ修羅場を経て自分と京介の何の拠り所もない関係を思い知った上で、桐乃からの思わぬ依頼を受けて、あのストーカー事件を経たことが、あやせに決意を促してしまったのか。
何気に、その前に黒猫と二人きりで何らかの協定を結んだっぽいところが、作者の強かさを伺わせる。この人、状況と人間関係を動かすときには、ちゃんと事前に関係者に根回ししてるんですよね。前回の黒猫と付き合う事になった時に、黒猫がちゃんと桐乃と事前協議をしていたように、今回も黒猫と本音トークをぶちまけた上で、何らかの共通認識を結んだっぽい描写がしっかりと描かれているのだ。
大きく状況を動かしながらも、本当の意味で現状をぶち壊し、これまでの一切を白紙にしてしまうような無謀には打って出ないんですよね。純粋にこのへんのセーフティーの挟み方は凄いと思う。まあ、下手をするとどう動いても元の木阿弥、みたいに見えてしまってどんなにダイナミックに動いてもどうで元に戻るなら意味無いじゃん、と見られてしまう可能性もあるんだけれど、今のところは上手く処理しているみたいだし。少なくとも、マンネリを繰り返しているハーレムものの退屈さに比べれば、飽きさせない揺さぶりを耐えず仕掛けてきて巻数二桁に達してなおまるで目を離せない事になってますしねえ。それに、人間関係も停滞することなく常に進展し続けてますし。

さあしかし、桐乃はこれ、大誤算だったんじゃないか。彼女が果たして、どこまであやせが京介なんか大嫌い、という発言を信じていたかわからないけれど。信じてたんだろうか。というか、京介がどれだけあやせ好きなのか知らなかったんだっけ、この娘。マニアを通り越して信者だぞ、この兄貴。そんな相手が通い妻してきてくれて、勉強が手につくと思ったんだろうかw

それにしても、今回はじめてヒロインズが一同に勢揃いしたんですね。なんか変な横のつながりが生まれていたのは承知していましたけれど、桐乃のリアルの友達とオタク友達がこうして仲良くわいわいやることになるなんて、感慨深い話です。昔は、顔を合わせることも難しそうな雰囲気だったのにねえ。
しかし、一番激烈に反応したのがあやせと黒猫だったとは。
いやあ、あのガチ修羅場は笑いました。あれ、黒猫の本音なんでしょうか。本音なんだろうなあ。やっぱりこの女、兄妹両方ゲットを狙ってたのか!? にしても、ぶっちゃけ過ぎだろう。伏字になってないよ。ってか、アニメではピー音でも入れるつもりなのか。
どうやら、あとになって二人の間には何らかの密約が結ばれたようですけれど、意が通じあった、というのはやっぱりそういう事なの? ふたりとも何だかんだと桐乃命、だもんなあ。
それはそれとして、加奈子が思いの外積極的にアプローチしてきたのは意外だった。あれ、わりと本気ですよね。沙織の方もなんかキャラが壊れて、調整役を完全に放棄しちゃってるし。そして、ヒロイン全員に対して黒幕として君臨しはじめた真奈美の存在感がえらいことに。ついに、桐乃との和解フラグも建ててしまいましたし、あやせと加奈子のみならず、黒猫まで手なづけてしまったとなっては……。
あんた、一体何になるつもりなんだ?w

あやせのラストの告白は、あくまで好きと伝えただけで、黒猫のように付き合う話になるかは今のところ怪しいですが(何しろ作中で京介は黒猫に桐乃とちゃんとしないと誰とも付き合わない、と宣言してますしね)、そうとしても大きな一石を投じたのは確かな話。ぶっちゃけ、あやせが一番積極的になりそうだもんなあ。今までは自分に対しても本心を誤魔化して建前を盾にして振舞ってきたのが、一気に解放されてしまうんですから。反動ですよ、反動。
イカン、これ楽しすぎるよ!! やっぱりこの引きは凶悪過ぎる。早く次巻出してもらわないと、色々と我慢できんがな!!

伏見つかさ作品感想