おおコウスケよ、えらべないとはなさけない! 2 (富士見ファンタジア文庫)

【おおコウスケよ、えらべないとはなさけない! 2】 竹岡葉月/奥村ひのき 富士見ファンタジア文庫

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「勝った方が、津賀昴介を自分のものにできる」6月、体育祭の季節。殿村クララが、2年前に消えた親友・天野井螢とそっくりな宮沢彗に、正々堂々と申し込んだのはそんなトンデモナイ勝負だった。勝手にネタにされて黙ってられない昴介だったけれど、この修羅場が予想もできない斜め上方向に発展!?そして昴介は、彗と螢をめぐる“たったひとつの真実”にたどり着く…。「…あまのい?天野井、なのか?」“究極の選択”ラブコメ。津賀昴介が選び取るのは、天野井螢と宮沢彗、はたしてどっちだっっ?―。
あれ? 随分と急いでたたんだ感のある展開で。これ、クララには涙を呑んで下がってもらうとしても、せめてあと一巻はあった方が良かったんじゃないだろうか。天野井螢と宮沢彗の二人にまつわる真相が明らかになったシーンでは、まさにここからがこの物語の本番だ! と高揚感を覚えただけに、そのあとなし崩しに収まる所に収まってしまったのはちと拍子抜けですらもあったわけで。
とりあえず、天野井螢と宮沢彗の秘密については、殿村クララが時期はずれの高校デビューを見せてくれた段階で、概ね予想がついたと言っていい。クララが意識的にあれほど自分のキャラクターを激変させることが適ったのですから、螢と彗が別人と考えるよりも同一人物と考えた方がまだ落ち着くというものです。
それでも、仮に同一人物としてもどういった形を真相に持ってくるのか、彼女が意図的にキャラを使い分けて真意を隠しているのか、それとも実は記憶喪失なのか、といった点については結論を導くだけの情報が足りなくて予想も定まりませんでしたし、さらに彗が昂介にブラフを掛けてきた時には、あれ?そもそも同一人物違うのか? と困惑させられました。特に、彗の一刺しはタイミングとしても最高の場面でしたからね。
実際の真相は、想像以上にヘヴィーでしたけれど。
でも、その重さ故か、なおさら螢と彗に逃げずに向き合う話になった時にはより歯ごたえのある重厚な物語になれた可能性が高かったんですよね。だからこそ、ここでなし崩しに終わってしまったのが残念に思うんですよ。まあ、その方向に進むのは相当に書く方もヘヴィな思いをすることになったんでしょうけれど。

螢と彗は違う人間である、別人だ。そう認識することによって。何より同一視したことで彗を傷つけてしまったことで、彗を螢の偽物ではない一人の魅力的な女の子と見るようになった昂介。それを見計らうようにして、戻ってきた螢。そして、代わりに消えてしまった彗。まるで時間を巻き戻して人物の配置を変えたように行われた、二人の少女の入れ替わり。前回と違い、その真実が明らかだっただけに、昂介のなかには再会の歓喜と、喪失への絶望が綯い交ぜになって渦巻いていたはず。ここからまさに、昂介にタイトルにあるような選択を迫るような展開が待っていたとしたら、相当に凄いことになっていたのになあ。惜しい。実に惜しい。ぶっちゃけ、そうなってたら、選べないからって情けないなんてとても言えたものではない事になっていたんだろうなあ。優柔不断で済むような話じゃなくなっていたでしょうし。
まあ、でもこのなし崩しの展開は、ハッピーエンドと言えばハッピーエンドで、イイっちゃ良いんですけどね。昂介だけが美味しすぎる結末で、このやろうと思わなくもないですがw
それにしても、クララがちゃんと舞台に上がらずに、舞台袖でバタバタと大騒ぎだけしてとっとと降りてしまったのも勿体なかった。誰も気づかないまま通り過ぎていってしまった感情は、無かったのと同じになってしまうんですかねえ。