クロス×レガリア  嵐の王、来たる (角川スニーカー文庫)

【クロス×レガリア 嵐の王、来たる】 三田誠/ゆーげん 角川スニーカー文庫

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人の氣を吸う「鬼仙」の少女ナタ。彼女を護ると決意した馳郎は、莫大な資産と権力の後継者となった。だが義妹のリコに言われて出席した白鳳六家との顔合わせの場で、第四家・空の家の次代当主である北斗がいきなり攻撃を仕掛けてきた。風を操る「おに」=異能者からリコを護るため、馳郎とナタがとる秘策とは?そして戦いの中で互いへの想いを意識し始めた2人の関係は…?さらにスケールアップ、興奮加速の第2巻。
なるほどなあ……いやね、第一巻を読んだ限りだと、まだ馳郎という主人公にどうしてわざわざ「ボディーガード」なる役割を担わせたのかよく分からなかったんですよね。正直言って、鬼仙や「おに」と呼ばれる異能者たちに比べると、馳郎って一段も二段も力落ちるじゃないですか。もちろん、弱者が強者をいてこますというのはカタルシスを得るに一番の展開ですけれども、それって結局どうしても最終局面での話になるじゃないですか。それがボディーガードという仕事だと、わりと冒頭から格上の敵の攻撃を凌いでいかないといけない展開を強いられるわけです。しかも、護衛対象が鬼仙やおにの関係者の場合、馳郎が守る相手の方が馳郎よりも強かったり、優秀だったりするケースが多発するわけですよ。それって、どうにもアンバランスじゃないですか。
そも、馳郎は無辜の一般市民というわけじゃなく、この度白翁という立ち位置に収まったわけですから、特殊な状況に置かれ、鬼仙やおにとトラブルになる理由付けなど探せば枚挙の暇もないですし、だいたい誰か大切な人を守る、という行為など、意志と決意の一つアレば行うに十分なもののはず。
なのに、なんで弱いのに、他に特別な地位を持っているのに、「守る」事を「仕事」としてこなそうとするのか。それも、千円なんて端金で。
その意味が、一巻を読んだ段階ではまだよくわかっていなかったんですよね。それが、この2巻を読み、新たな護衛対象との絡みを見て、ようやく理解できた気がします。何故、馳郎は「ボディーガード」でなけりゃならなかったのか。

一巻のナタも、そしてこの二巻で馳郎に守られる人も、自分の価値を極度に低く見ている、というよりも自分を諦めてしまっている人でした。そして、自分の価値を見失ったまま井戸の底のような暗闇から、ぼんやりと光の差し込む先を見上げているのです。何の価値もない自分と違う、眩しい光に憧れながら。
そして、彼女たちはその憧れのために、容易に自分を使い潰そうとするのです。価値のない自分を費やし尽くして。
そんな彼女たちだからこそ、「守られる」必要があったのです。
力や能力なら、間違いなく馳郎なんかよりも、ナタたちの方が上回っている。ただ、その身を守るなら、馳郎が守る必要なんて何処にもなかった。でも、たとえ弱かろうと、ナタたちには「守られる」必要があったんです。君たちは、誰かに守られてもいいんだよ、と言ってあげる必要があったんです。
無価値なんかじゃない、兵器だろうと関係ない、鬼仙でもおにでも関係ない、ただ一人の人間として、他の誰かに守ってもらってもいい存在なんだ、と伝える必要があったのです。
そのための、馳朗の「ボディーガード」なのでしょう。
つまるところ、彼の仕事の意味とは価値あるもの、大切なものを守るのではなく、守ることで価値を与えること、人としての尊厳を与える事だったんですな。それも、ただ与えるだけじゃない。一方的な強制じゃなく、仕事として依頼を受けるという形を保つことで、自分への諦めを自分の意志で覆すきっかけを与える、自分の心の奥底に眠らせていた、助けてほしいという思いを汲み上げる事が叶っている。
確かに、それは白翁という地位だけでは出来ないこと。ボディーガードという仕事をしてなきゃ無理だよなあ。

とはいえ、本当に弱いだけならボディーガードなんて成り立たないわけで。わりと前回は役立たず度の高かった馳朗だけれど、今回は頑張る頑張る。圧倒的なまでの強敵相手に、圧倒されながらもギリギリの瀬戸際で粘り、土俵際を割らせない。殆ど「カエアン」の機能のおかげとも言えますが、いやもうカエアン万能すぎ! とも思いますけれど、それでもうまいこと使いこなしてるんじゃないでしょうか。その粘り腰たるや、良かった良かった。
そして、此処ぞという場面での勝負強さ。能力が凄いとか、精神が強靭というのとはぜんぜん違う、発想に制限をつけない野放図さ、というべきか、あの馳朗の強味というのは。その上で、異様に徹底的な部分が際立ってるんだもんなあ。ラストのあれなんて、個人要塞(ワンマン・フォートレス)を通り越して、個人要塞都市の領域に達してませんか、あれ?w
ナタが今回、かなり力の行使に制限が付け加えられていた分、だいぶ馳朗は頑張ったんじゃないかと。ナタの強味とも言うべき、アンチ鬼仙戦能力が「おに」相手にはまったく意味が無いというのもあるんでしょうけれど、残りMPを計算しながら、みたいな戦い方だったもんなあ。それはそれで、より戦闘シーンでの戦術濃度が濃くなってテクニカルに面白くなるんですけれど。

先日、助手になったばかりのナタも、こうして見ると息がピッタリあったコンビネーションで。それ以上に、もう一緒にいる時の雰囲気が完全に夫婦レベルなんですがw ナタの気持ちはどうなんだろう、と穿ってたんですが、あのやり取りを見る限りは、もう本心は固まっちゃってるんだ。自分の立場などを鑑みて、押さえつけているようだけれど。三田さんは、わりとカップリングは鉄板で揺らさないので、リコはこのままだと自分で思っているとおりに気持ちは秘めたままになりそうだなあ。
その考えがあったせいか、てっきりリコには早めに別フラグが立てられているのかと思い込んで、全然その素性に疑いを持ちませんでしたよ。わずか二巻で妹キャラに相手できるのか、斬新だなー、と結構驚いてたのに!w
実は結構お似合いで、ニヤニヤできるカップルになるんじゃないかと思ってたのに!w
やられたw

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