断章のグリムXVII 白雪姫・下 (電撃文庫)

【断章のグリム 17.白雪姫・下】 甲田学人/三日月かける 電撃文庫

Amazon

「……白野君、やっぱり私、あなたが嫌いだわ」
甲田学人が描く悪夢の幻想新奇譚、ついに終幕!

「正直僕も、白野君をどれだけ追い詰めればいいのか、手探りなんだよ──」
 日々苦しみ続けていた蒼衣の過去の悪夢の真相、雪乃が抱える様々な想いや誇り、そして神狩屋から消えてしまった颯姫と夢見子……。謎が謎を呼び、混沌としていく神狩屋で、また一人『白雪姫』の悪夢に巻き込まれ、騎士たちが消えていく。だが全ては、蒼衣の過去より、始まるべくして始まっていた──。
 蒼衣と雪乃、そして最悪の悪夢の結末は──!?
 甲田学人が描く悪夢の幻想新奇譚、ついに最終幕!
雪乃さんの「殺すわよ」を聞くと安心してしまう自分はもう末期症状。

ついにライトノベル屈指のオカルトホラーもこれにて最終章。どうあがいても絶望、どうもがいても悪夢。そんな深淵の岸辺で起こるのは、当然のごとく無残にして冒涜的な鏖殺である。
そりゃもう、バタバタと人が死んでいく。いや、バタバタじゃないね、グシャグシャビチャブチャデロデロと皆が死んでいく。まともな死体など残りゃしない。人間としてこんな死に方だけはしたくない、という有様で死んでいく。リカさんは、まだあれマシな死に方だったんじゃないだろうか。
全部終わって愕然とさせられたのは、この程度の惨劇なら泡禍、じゃなくて「ロッジ」が起こした自己の規模としては「空前」ではない、という記述でしょう。これだけの出来事が、これまでにも儘あった事だという事実に、正直腰が抜けそうになりました。最悪じゃないのか。この世界では、こんな出来事ですら最悪でもないのか。
どんだけえげつない世界観なんだ、此処は。

映像化? 絶対無理です。実写だろうとアニメだろうと絶対無理。というか、見れない。無理、こんなの映像で見せられたらトラウマになる。特に、毒リンゴを食べさせられたあの人達の有様なんか、想像しただけでサブイボが立つ。気が遠くなりそうになったんだから。想像した事自体を心底後悔した。思い浮かべるんじゃなかったと絶望した。今回はもう全編に渡って脳内再生ですらR25レベルです。ぎゃあああああ。もうやだ、ぎゃーーーー!!

それでも、本気で全滅エンドの確率がかなり高いと覚悟していただけに、予想以上に、生き残ってくれたんじゃないでしょうか。あの子らが出てきた時にはもう勘弁してくれ、と泣きそうになったもんなあ。
だから、これはまあハッピーエンドの部類に入るんじゃないでしょうか。これをハッピーエンドといってしまうとハッピーエンドが発狂するかもしれませんが、白野くんの「普通」に対しての狂的な固執が、「普通」そのものが全損することで回避されたというのは、僥倖と言えば僥倖でしたし。彼の普通への固執は、そも葉耶の王国への呪いみたいなものでしたからね。ある意味、彼の普通に雪乃を取り込むということは、無自覚なまま雪乃を自分の悪夢の中に引きずり込むようなものでしたし。
尤も、雪乃さんと白野くん双方が自覚した上での承知の上とはいえ、結果として同じ事になったような気もしますが。あれって、解釈の仕方によっては心中エンドですもんね。決して遠くない未来に確実な破滅が約束されている白野くんが雪乃さんを招くのも、雪乃さんがそれに答えることも、二人共何を意味しているかわかっているはずですし。そも、風乃さんからしてすでにそのつもりらしき事が女王対談によって示されていましたし。
そう考えると、二人の最後のやり取りって、素っ気ないようで物凄く濃密なやり取りです。それこそ、生ける時も死せる時も共に在らん事を誓い合うような、共に滅ぶを約束したような。
だから多分、これは「ハッピーエンド」でいいんだと、そう思う。

全く以て、余人には到達し得ない、甲田学人という作家にしか描けえない、凄まじいまでの悪夢の世界でした。色々な意味でぶっちぎりでした。これ以上にグロテスクで恐ろしく、身の毛のよだつ凄まじいホラーは、ちょっと他に想像もつきません。唯一無二、と言い切って構わないでしょう。
この人が描ける新たなシリーズは、もう今から怖くて背筋が震えそうです。それでも、買っちゃうんだろうなあ、読んじゃうんだろうなあ。悪夢の底を覗いてみる誘惑にはきっと勝てないでしょうから。

シリーズ感想