メグとセロンVII 婚約者は突然に (電撃文庫)

【メグとセロン 7.婚約者は突然に】 時雨沢恵一/黒星紅白 電撃文庫


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メグとセロンが「大変なこと」に──。
超注目の『メグセロ』シリーズ完結編!


 メグの元に、ラプトアからの短期留学生だった“新人君”の出した手紙が届く。手紙の内容について一人思い悩むメグ。思い切ってリリアに相談してみることに──「むむ? メグ宛のラブレター?」「似てるけど……、ちょっと違う」「見ていいの?」「うん。でも、絶対誰にも言わないでね」──相談の結果、手紙の内容について、セロンに確認してみることに決める。そして、例年にない大雪が降る中、新学期が始まり、部室へと集まる新聞部のいつものメンバー。手紙の内容を相談するメグ。しかしそれが、新聞部を巻き込んでの「大変なこと」に発展してしまい──! 『アリソン』『リリトレ』から続くシリーズ『メグセロ』がついに完結。ラストを飾る黒星紅白書き下ろしのカラー&モノクロイラストもお見逃しなく!
はい、大変なことになりましたーー。
いやあ、最終巻にも至って今更言うことではないかもしれませんが……メグミカって面白い子ですよね。いや、弟たちの奇抜さを見てみると、この一家特有の妙味なのかもしれない。この一家の人達って、スー・ベーイルの言葉とロクシュ語で喋っている時と、思考パターンや性格切り替わってやしないだろうか。単に自国語と外国語の違いというにはダッシュ力が違いすぎてるんだが(笑
ジェニーの仕掛けで留学生がメグミカに残した爆弾は、そりゃもうとんでもないタイミングで炸裂してしまう。これまでだらだらと告白を引き伸ばしてしまっていたセロンの自業自得と言えばそれまでなのだけれど、図らずも告白前に盛大に機先を制された上で止めを刺されるハメに陥ってしまう。いや、そこまで丹念に告白できないように捻り潰さないでも、とメグミカさんの余りに容赦のない仰りように、セロンに同情してしまう。挽回しようにも、タイミング悪しくメグミカもセロンも部活に顔を出せない状況に陥ってしまうため、自然と顔を合わせる機会を失ってしまい、セロンは凹みメグミカはもやもやを濃霧警報を発令するほどに貯めこむ事になってしまったのでした。
ただ、あとになってみるとこのメグミカがもやもやを貯めこむ時間は結構重要だったんですよね。この爆弾が炸裂する前に、メグがセロンに対して果たしてどれだけの好意を持っていたのか。決して悪い気持ちはなかったでしょうし、これまでの様々な事件に対してのセロンの対応や、普段の姿勢などから好感度は間違いなく高かったでしょうけれど、ハッキリとそれが異性に対する好感に繋がっていたかは微妙なんですよね。あくまで友達の延長線上、という可能性も高かった。男性として魅力を感じていた部分もあったかもしれませんけれど、少なくともそれがハッキリと自他に認識できるものではなかったはず。セロンについては、みんなメグが好きというのはあからさまなくらいに把握されてましたけれど、メグの気持ちについては誰も言及してませんでしたしね。
そんな彼女に、男性としてのセロンを強く意識させるのに、このモヤモヤ期間はやっぱり重要だったんじゃないかと。自分のことを好きらしいのに何も言ってこないセロン。そのハッキリしない態度に腹も立つんだけれど、冷静になって考えてみるとハッキリさせる云々をデキないような発言をしてしまったのも自分なわけで、むやみに相手ばかりを攻めるわけにもいかず、でもやっぱり何も言ってこないセロンにはムカムカさせられるわけで。そんな二進も三進もいかない状態で熟成されていたモヤモヤが、揮発油に火花が飛んだみたく炎上してしまったのが、件の事件だったわけですな。たとえ、どんな形だろうと炎上してしまえばそれは熱であり炎である。
火がついちゃたのであります。一度火が付いちゃったら、もう言い訳できません。メグの弟はあれ、人物だよなあ。あの年で世の真理を体得しちゃってるんじゃないのか。図抜けた女の子との仲良くなり方といい。でもあいつ、本命相手には絶対苦労するよな。見事に失敗しまくるタイプと見た。
古風なのか何なのか、終わってみれば終わってみたらで、結果を見るとやっぱり大変なことに。ちょっと待て。ここまで告白するかしないかでシリーズ冒頭から引っ張った上で、この巻では揉めに揉めまくっていたのに、終わってみたら三段くらい途中すっ飛ばしてないか? と惑乱するほどの着地地点に到達してしまっていた罠。セロンの置いてけぼりっぷりには吹いてしまった。普段から先を見通すことには定評のある青年なだけに、あの茫然自失っぷりにはやっぱり同情してしまう。まあ、不幸なんて何処にもない最高の結末なんですから、同情の余地なんか何処にもないんですけどね。
個人的には着地地点が自明だったメグとセロンよりも、ラリーの相棒が誰なのかが気になる顛末ではありました。やっぱり最後までナタリアとのコンビは息もぴったりだったんですけれど、結局最後まで色恋沙汰を想起させるような雰囲気は皆無のままだったんですよね。その点、ジェニー部長の方がさり気なくアピールしていたような……うむむ、気になる気になる。
リリアとトレイズの方も、トレイズがダンスパーティーにちゃんと顔を出してくれてたのは良かったのだけれど、此方も進展しているのかしていないのかハッキリしませんでしたし、リリアのお父さんの問題もどういう打ち明け話になっているのか定かではなく、と気になる所がたくさん残ってしまっていたので、あとがきに「オールスターで話し書きます」という文言には手を叩いて小躍り。
いやあよかった。ちゃんとみんな書いてくれるんだ。特にリリアは色々と決着させてほしい所が多々在ったので、一安心。出ると決まっているのならいつまでだって待てますよ。さすがに五年十年は辛いですけど。

時雨沢恵一作品感想