ガンパレード・マーチ 2K 新大陸編 2 (電撃ゲーム文庫)

【ガンパレード・マーチ 2K 新大陸編 2】 榊涼介/きむらじゅんこ 電撃ゲーム文庫

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 アメリカでの軟禁状態から脱し、海兵隊とともにレイクサイドヒル市救出作戦に従事するはずの5121小隊だったが、難問が山積みしていた。アメリカ陸軍が小出しに出撃させた救出部隊は目的地に着く前に包囲され、その援軍も、二重遭難、三重遭難を繰り返していた。そして、負傷兵の救出、後送の任務に就いた5121小隊は幻獣共生派、そして陰謀をめぐらす 「目に見えぬ敵」 との心理戦に神経を消耗させていく。
 一方レイクサイドヒルで、PTSDを発症し精神的に不安定な浅井が、エンターポイント研究所の秘密をめぐる事件に巻き込まれていた……。
上層部の現状把握の失敗と固定観念への執着、さらにそこに組織防衛やらセクト争いが加わった結果、本来の実力を発揮できないまま国内有数の精鋭部隊が無駄に消耗していくという最悪のパターンへと突入していくアメリカ合衆国。とにかく見ている限り、政府も軍部も内向きの争いにばかりかまけていて、というよりも長年の本土の平穏と外界での怒涛の幻獣の侵攻というギャップが、アメリカという国を極端に内向きの体制に仕立ててしまったんだろうな、これは。日本も軍内の閥争いやら、クーデターにまで発展する内ゲバが相当に酷いことになっていたけれど、それでも国として「幻獣」という外敵と戦うシステムと意識がはっきり整っていた分、まだマシだわ。東京などの銃後の地域は平和ボケしているとかさんざん言われてたけれど、まだアメリカに比べたらマシでしたわ。
これは本当に酷い。実際に戦闘が起こり、幻獣に本土を侵略されてなお、自分たちが何と戦っているのか、という意識が非常に曖昧なんですよね。勿論、尋ねれば幻獣と戦っているんだ、と答えるんだろうけれど、その
「幻獣」という存在がどういうものなのか、わからないのはまだしも考えようという意識からして非常に乏しく、漠然とただ銃を握って命ぜられた通りに動いている、という雰囲気がひしひしと漂っているのだ。これじゃあダメだわ、ぼけているとしか言いようが無い。
必然的に、生死による無情の選別が行われていく。生き残ったものだけが、幻獣の恐ろしさを知り、自分たちが何と戦おうとしているのかを把握しようと必死になる。いや、なったものしか生き残れない、というべきか。
この点、一番幸運だったのが、5121小隊を救出して仮編入した海兵隊の部隊でしょう。勿論、5121小隊という歴戦の教導役を得たことが幸運なのですが、それ以上に指揮官のフェルナンディス旅団長がこの時期のコマンダーとしては稀有なくらい優秀な逸材だったことでしょう。何より瞠目させられたのが、5121小隊の有用性を正しく認識しながら、決して使い潰そうとしなかったこと。外国軍の、しかもVIP、曰くつき、といろいろと使いにくい点があったにしろ、5121正体を非常に「大事」に使ってるんですよね。日本での戦闘を見れば分かる通り、ほぼどの戦線でも5121小隊は必要だったとはいえ限界まで「酷使」されるのが常だったのを思えば、フェルナンディス中佐は小隊をびっくりするくらい「適性」に使ってるんです。決して、温存する余裕はなかったはずなんですよ。それなのに「余裕」を持たせることに躊躇しなかったという点で、この人は実にアメリカ軍人らしい最優秀の人材だったと思いました。尤も、そのフェルナンディス中佐がワプスじゃなく、主流派とは成り得ないメキシコ系というのが面白い所。ただ、ちゃんと参謀に東部人の出来物がついてこれまた的確にサポートし、そのサポートを指揮官もまたこれ以上無くうまく使いこなしている、という点で場末で燻らずに機さえ逃さなければメキメキと出世しそうなタイプでもあるんじゃないでしょうか。荒波さんとは全く違うタイプなんだけれど、アレと似た現場叩き上げにも関わらず視野が広くて手が長いタイプの、上に立つのが似合うタイプに見えるなあ、この人は。

一方で、浅井さんがどうやら5121小隊と相対する形での主人公格として動くことになるのか。孤立した街の指導層に絡むことで、民間人・警察側からのシーンを主導することになりそうだし、さらにエンターポイント研究所という裏の動きに接触したことによって、5121小隊とは違って裏側からアメリカの動きに一刺し加える戦力になりそうだ。

此処に来て、アメリカの政財界に深く食い込んだ形で、黒幕が登場。アメリカの歪みっぷりは孤立主義を貫き通してきた事を加味しても変な方向に進んでいる上に、妙な秘密結社が乱立していると思しき様子にはなんぞこれ?と首をかしげる有様だったのだけれど、なるほどここでも幻獣が絡んでたんだ。
それも、王族クラスが。
結局、今に至るまでカーミラ以上の強敵は登場していなかっただけに、果たしてこの連中はカーミラに匹敵する相手になるのか否か。ちょっとカーミラたちを下に見た言動を見る限り、図に乗ってて痛い目を見るパターンに入りそうな恐れもあるけれど、さすがに今までの連中に比べればまだ位階が高そうだし、うーん、大丈夫だろうか……。

シリーズ感想