スイート☆ライン〈4〉ユニット結成編 (電撃文庫)

【スイート☆ライン 4.ユニット結成編】 有沢まみず/如月水(RED FLAGSHIP) 電撃文庫

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ちょっと訳ありな女の子が加わり、新たなプロジェクトが始動!?

 アニメ業界注目の「シックスティーン」の声優オーディションに参加し、大役をもらった新島永遠、山川舞、トンガちゃん。いったん落ちた神楽坂はるかも追加のオーディションでリベンジをはかる。
 そんななか、なにやら訳ありな女の子・友坂千秋が加わり、アニメプロデューサーの正午の姉から、新たなプロジェクトが提案されるが……。
 無口で男性恐怖症の新人声優と、熱血高校生のスイートラブコメディ、第四弾
2月の出版の時にちゃんと購入はしていたんだけれども、運悪く魔窟の奥に沈んでしまい、さらに次々と新刊が降ってくる中でついつい発掘を後回しにしていたら、すでに5月も中旬に差し掛かってしまいました。久々に魔窟を整理していたら発見できたので、最新刊にして完結編が来月に刊行を控えていることもあり、これ幸いと手にとった次第である。
さても前巻が出たのが二年前。結構間、空いてたんですよね。その間に、イラストレーターの人、絵の印象かわってないですか、これ? なんかカラーにしても挿絵にしても、ものすごく可愛くなってる気がするんですが。線のタッチが明快かつまろやかになったというか。前巻までそんなに絵のイメージ残ってなかったんですけれど、今回はどの挿絵も思わず何秒か固まって凝視してしまうほど良かったです。この巻では、はるかや千秋がもうやたらと可愛くて、押し押しなんですけれど、これ挿絵の方もかなり強力にその印象を後押しするブースターになってますよ。
と、いきなりイラストの話になってしまいましたが、語るべき中身はというと、前回までがエントリーで今回がスタートラインに並ぼうかという始動編、というべきか。
いや、改めて繰り返しになる気がしますが、この主人公の正午くんって……マジ凄いっすね。この子、本当にまだ高校生なんですか? 安定感というか、色々と話してみての安心感が桁違いすぎるんですけれど。これはもう年齢の問題じゃないですよね。いい年をした大人だって、こんなにどっしりとした安定感ありませんよ。
正直、ここまで「この人に任せれば大丈夫」という絶大な安心感を与えてくれる主人公見た事無いですよ。それもこれ、ついつい依存してしまうのではなく、自主性を重んじ、精神的にも自立させ一人で立てるようにしてくれる。厚かましくなく、押し付けがましくなく、聞けばちゃんとした答えを見せてくれるけれど、そこに手取り足取り引っ張っていってくれるんじゃなくて、常に、その人の意見や主体性を尊重した上で、ポンと背中を押してくれるんですよね。
振り返れば、そこに居てくれる。ちゃんと見守ってくれている。もし間違えたらちゃんと教えてくれる。いや、たとえ間違えていても、それが自分の選んだ道なら、迷わず応援してくれる。そんな安心感が、勇気をくれる。顔を上げ、前を向いて、余計なことに足を取られず、しっかりと踏み出していける力になる。
皆が挙って、正午のもとに集まってくるのも当然ですよ。自然すぎるくらいに当然。自分の不安を打ち明けて、胸の内をぶちまけて、話を聞いてもらおうとするのも当たり前。
誰だって、この子になら全部話してしまいたくなりますよ。
それでいて、上から目線でも一歩退いた形でもなく、親身に、対等に、気のおけない優しい位置に居続けてくれるのですよ。
惚れるわー。男女問わず、これは惚れる。
とはいえ、この段階でまさかはるかがこれだけ捲ってくるのは予想外でしたけれど。正午によって、これまでずっと自分を縛ってきた鬱屈を振り払う事が出来たはるか。少なくとも、自分を客観的に見つめた上で前向きにはなれたわけです。その前向きさ、勇気がまさか恋愛の方にも作用してくるとは。直球ですよ、直球。ちょいと助走をつけてからでしたけれど、自分の気持を偽らずに真っ向から表に出して、そして告白まで突っ走ったはるかの、そりゃもう可愛いこと可愛いこと。いやあ、はるかってここまで魅力的な子でしたっけ? と思わず目を疑うくらいの変貌でした。自分を変に繕う事をしなくなっただけで、ここまで見違えるとは。唖然呆然の領域ですよ。メインは永遠で間違い無いと思うんですが、この勢いなら正午と結ばれるのがはるかであっても全然おかしくない雰囲気でした。実際、ここで結果を求めずに三年保留にしたのも良かったんじゃないでしょうか。声優として一番大事な時期ですし、仕事と恋愛を中途半端に天秤させるのは良くないですから、ここで決着させずに保留して一方に打ち込むのは精神的にも異常な上下をせずに済みますし。ってか、三年間正午さんも誰とも付き合わないで、というのを約束させたのが最高でしたけどね。上手いなあ、はるかは。
まあ正午の反応も満更ではなかったですし、このままなら三年後、はるかと結ばれてもなんらおかしくない……のですけれど〜〜、前巻でもそうだったんですけれど、正午の女性の好みドストライクなのって、やっぱり千秋なんですよね。本格的に作中のレギュラークラスに入ってきて、正午と接触する機会も増えた千秋なのですけれど、これはるかに告白されてなくて、普通にこのまま接していたら、そのうち正午の方から告白してたんじゃないか、というくらいに千秋への反応がふわふわしてるんですよ。もう、好意が恋に化学変化する直前、みたいな。
その意味では、はるかの告白は絶妙のタイミングだったのかもしれないし、答えを求めず据え置きにしたのもナイスな判断だったと言えましょう。

仕事の方も、皆それぞれに前向きなヤル気を得る事ができ、姉貴の提示したユニット結成にも弾みがついた。これから、どーんとみんなが弾けるんだ、と期待に胸を膨らませるところなのに、ラストで紡がれるのは不穏な気配。
次でもう完結なのに、そんな先行きを不安に陥れるような終わり方をされるとハッピーエンドで終われるのかまで恐れるようになっちゃうじゃないですか。正直、来月の最終巻が読むの怖いです。今回わりと順調だった分、余計に。

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